タグ： 咲亜d

1/14 死にとり憑かれた生ける亡者 孤児院で生きていたけど賊にみんな殺された。自分は偶然その場に居なくて、帰った頃にはみんな死んでいた。生きるために院を出ようと院内を粗捜ししてると、友達から書かれた自分宛の手紙を一通見つける。手紙の内容は普遍的なものだし、書きかけで特別でもなんでもない。でもその友達からの手紙に酷く心惹かれて、今でも大切に机の引き出しに仕舞っている。 もしこの手紙が最期の手紙だと知っていたら、もしそのまま賊が院に来なかったとしたら、こいつはどんな内容の手紙にしたんだろう。 そう考える内に、手紙。こと遺書に対して興味が湧くようになった。 院から出て来てふらふら歩いてたところで偶然街に辿り着いたが、金も何もないので宿に泊まることができず空腹で道端に倒れていたところをトントンさんに拾われる。 拾われた恩返しのつもりで、遺書屋を営んでいたトントンさんの仕事を手伝うようになり、今では相棒として共に仕事をしている。 トントンさんに相棒として、拾ってくれた恩人としてとても懐いており、憧れを少し恋心と勘違いしている。今のところどちらが正しい自分の気持ちなのか本人もよく分かっていない。 都倉 桃さんへ アナタがこの手紙を読んでるってことは、僕死んだんですね。なんて、書いといてなんやけどベタだなぁ。今まで見てきた遺書の中に、どんだけこんな書き出しがあったよ。やっぱり遺書ってこう言う事が書きたくなるんですね。 嗚呼そうだ、トントンさん。ありがとうございました。オレが死んだ原因がトントンさんなのか他の誰かなのか分からないけど、今この瞬間にやっとオレの遺書は完成しました。 オレは生きてる間に遺書を完成させたかったけど、遺書が何を持って完成になるのか結局分かりませんでした。だから多分、オレが死んだことで完成するんだと思います。 そうだ、オレの部屋は多分それなりに片付けてるんで、処理するのは簡単だと思います。もし仮に何か持って行きたい物があるなら、好きに持って行ってください。多分気に入る物なんてないと思うけど。 あと、もしオレのループタイが残ってたらトントンさんが持っててください、 遺品にも興味あったんです。遺品を持つことがどんな感じなのか、死んだら教えてくださいね。 近部 公彦 マーカサイトのブローチ 左胸に、自分の心臓の、一番近くに。 俺に覆い被さって散々好き勝手してた男が、何かに突き飛ばされて吹っ飛んだ。 何か、叫ばれて肩を掴まれる。 もうイヤだ。何もかも怖い、はやく助けてほしい。 必死に抵抗しても、ただでさえ力のない俺じゃ簡単に抑え込まれて、誰かに力強く抱きしめられた、誰だお前。怖い、 「助けて、桃さん」 喉が引き攣ったみたいになって、気持ち悪くなって、ずっとうわ言みたいに桃さんに助けを求めてるけど、桃さんは来てくれない。 俺、捨てられるんかな。役立たずやもんな 「捨てんといてください」 全部言い終わるかどうかで鈍い音がして、意識が落ちる。 嗚呼、首を打たれたんだろうな もう、目覚めないのかな

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