タグ： PL：K 無限解体

私を造った誰かは、この腕に極細の鋼糸射出/巻取機構を仕込み、糸を繰る八つ足の捕食者に擬え「やくも」と名付けた。 糸は今まで、幾度も私を助けてくれたけど。糸を吐き出し振るうたび、この腕には鋭い痛みが走る。 機構から生じる摩擦熱で皮膚が焦げる匂いが鼻をつき、筋繊維と脂肪と仮初の神経が沸騰して泡立ち、射出の反動で骨が軋む音が聞こえる。 多分、これはわざとだ。本当はもっとスムーズに使える筈の装置を、敢えて半分壊してから、私に移植したのだ。 あの陰湿な誰かは、私が顔を歪めながら、今日を生き延びるために明日の自分を殺していく様を、嬉々として眺めているのだろう。 それでも、諦めない。いつか戦わなくても済む日々を手に入れるために、私は今日も壊れかけの舞台で踊る。

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