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不誠実な男が一人、その国には存在した。貧乏ではないがさほど豊かではない家に産まれたその男は口減らしのために軍学校に入れさせられた。男には愛国心などなかったが、記憶力だけはあったため誰よりも博識な生徒であった。 卒業後は田舎で隠居暮しを企むも、国が許すはずがなく。男は参謀の道を進むしかなかった。何かと理由を付けて数年で辞めるつもりだった。しかし、男は戦争の喜びを知ってしまった。 多くの人が男に感謝するようになったのだ。お前のおかげだ、ありがとう、と。男は頼られる喜びを知った。知ってしまった。もっと褒められたい。愛に飢えていた男は無邪気に、他人からの評価を求めた。求め続けた結果、何百何千万人もの人間が男の作戦で死んだ。男のせいで多くの人間が無惨にも戦場で亡くなった。しかし、そんなの男の前では些細なことにすぎなかった。 知らない誰かの命よりも、男は自分の快楽と欲求を優先した。 一時は英雄と祀られた男。男の人生最大の幸福は続くことはなく。B国が宣戦布告をしてきたのだ。軍事国家と名高いB国と渡り合うのは不可能に近い。なんとか戦闘を避けてきたが野蛮人に待てが出来るはずもなく、国際戦時法に反し侵攻してくる。どれだけ良い作戦を、最善な作戦を立案するも国力差が埋まるわけではない。国を救った英雄は、無能と呼ばれるようになった。元々シングルタスク型な男には、あらゆる作戦を同時に作れないのだ。疲労による作戦の穴も増える。英雄に頼りきり、他の脳みそが腐った軍では戦争など無理な話で。C国は真っ先に白旗を上げた。 今日、男は無能として、戦犯として断頭台の前に立つことになる。だが悔いはないだろう。自分の人生がそれなりにいいものであったと感じているから。一つだけ、あえて言うのなら。次はもっと長く、戦争をしたい。

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