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職業：大学教授(2010)ベース 一族郎党幼少から名門校に入学し、エスカレーター式にエリート街道を歩んでいる華の一族に生まれた三男。三人の兄弟と両親を持つ六人家族。 弟でさえ恙なく合格を決めた小学校受験に唯一失敗したイレギュラー。以来両親や他の親族から”良い人生”のレールに引き戻すべく将来設計から日々の生活サイクルにまで込み入った束縛を受ける。 中学、高校と他の家族同様に指定された学校の受験を強制されるものの悉く落ち、両親による学習への圧は病的なものへと加速していく。 人間的な生活よりも勉強を優先することが当然とされ、半ば軟禁紛いの状態で監視の目の下一日20時間以上勉強させられる日々が続いた。 精神的負荷による髪の脱色や吐血、衰弱が見られても休息を許されることは一切なく、終ぞ大学受験に失敗してなお「浪人してでも入らなければ人生が終わる」と解放されることはなかった。 どうしたって自分ではその理想に届くことはないのだと分かりきっていて、その上で理想に向かってひたすら走らされる生き地獄に耐えられなくなったのは、三回目の不合格を受けた時だった。 大量の殺虫剤と練炭と縄と、死ぬための道具を思いつく限り取り揃えて、冷たいカメラが見守る自室で死のうと考えた。誰も何も手が届かなかったのだと知らしめるには、それが一番だと思ったのだ。 けれど、そうして帰路につく途中で誘拐された。 死ねなかった。 唐突に与えられたのは、暗い密室と一人の人間。 そこには機械より精密な時間管理も、勉強による拘束もない。 他人の存在なんて些末なものだった。今までずっと、四六時中カメラによる両親の監視下に置かれて生きてきたのだ。 つまりこれは、何にも縛られることなく自室で羽根を広げているようなものなんじゃないだろうか。 生まれて初めて与えられた自由は眩しかった。余計なものを見せない暗闇だからこそ、それは殊更輝かしかった。 まるで、自分は生きていていいのだと言われたような心地だった。それほどまでに、今までの自分は「生きていなかった」のだと実感した。 幸いにも相手は自分を知らない人間だ。だったらいっそ、自分の殻を縁取った空っぽの何かを殺してしまおう。 この場所で、全く別の誰かとして成り代わってしまえばいい。 ……かくして、現状の異常さを気にも留めないような、底抜けに明るい「能天気」がここに生まれた。 ■泣き虫について 上記の通り他人の存在に特別意識を向けていたわけではなかったものの、酷い怪我を負っていたことから気にかけてはいた。 けれど七年もの時間を共に過ごす中で、「そうあるべき」とされてきた像を全て捨てた現在の姿を晒しても、失望や軽蔑の目を向けることなく傍にいてくれる(そもそも物理的に離れられないのだが)泣き虫に決して少なくはない情を抱いている。 嫌われたくはないし、自分がそうされたくないからという理由で、泣き虫自身のことにはあまり踏み込まない。ただ傍にいてくれるだけでいい。 現状がいつまで続くのかは分からないが、もし自分が解放される時がくるのだとしたら、きっと自分は社会に身を投じることなどできない。だからその時はせめて泣き虫だけでも外に出して、頭の傷をきちんと治療して、それを見届けてから死にたい、というのが当面の願い。 その実一番の願いは、このままずっと泣き虫と一緒にこの密室で過ごすことである。 ■蛇足 泣き虫との質疑応答例 何してる人なの？→お家の手伝いをしてるよ(家の名前に泥を塗らないためにも身を粉にして勉強している) 料理とかするの？→しないよ(軟禁されていたため) 大事な人とかいる？→家族は大事だよ(人生を掌握されているため)

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