タグ： キツネかわいい

『最近出てきたあの子役の子！かわいすぎない？！』 『あの笑顔チョ〜癒される〜☺️💓』 　みんなが笑ってくれる。 『あんなに小さいのに演技力半端ない！』 『見かけるたびに満開の笑顔で感心しちゃう。』 　みんなが喜んでくれる。 『今日のドラマ旬くんいっぱい出てて良かった〜(^○^)』 『撮影お疲れ様です〜。長いセリフだったのによく頑張ったね。』 　みんなが応援してくれる。 　だから、僕は頑張った。 『ねぇ最近のあの子役、なんか態度でかくな〜い？』 『周りが甘やかしてるからだろ』 　みんなの目に付くように。 『いつもいつも貼り付けたような笑顔で気持ち悪い...』 『大袈裟な感じで演技臭い。』 　みんなが喜んでくれるように。 『計算高くて怖い。まだ小さいのによくやるわ。』 『成長して可愛くなくなった。』 　みんなが望んでいるように。 　だから、頑張ったのに。 　練習も沢山して、セリフも沢山覚えて、スタイルも気をつけて、みんなの望んでいる"旬くん"で居続けたのに。 　あぁ、ダメだ。可愛くなくっちゃ。 ───顔が変わっていく。 　セリフが、出ないっ！ ───声が変わっていく。 　分かってる。みんなが思っていること。僕に望んでいること。みんなの心の声が聞こえる。 　落ちぶれる僕への落胆、未だ僕を期待し続ける両親の重圧、粘着にSNSに書き込まれる悪意、それが苦しかった。 　そんなときに出会ったんだ。 　僕の知名度にも稼いだお金にも人を魅了した笑顔にも関心を向けてこないこの人達に。 　一人ずつそれぞれのことでいっぱいいっぱいで、僕に向けられてない感情が心地よかった。 【HO6】 君は生徒会長役員。 君はとある道の神童だった。 けれど、ある日からその才能は発揮できなくなった。 周りの落胆が、重圧が、悪意が、苦しい。ここにいるときだけ、その呪いからすくわれる。 〈心理学〉99

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