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【HO4：庭師（ガードナー）】 彼は不運だった。親は居ない、孤児院の院長はクソ野郎。体が大きい彼は「食うしか能がない」と言われて金がかかるからと食事を抜かれた。 生きるためには食うしかない。食うには金がいる。金を手に入れるには… 彼が人を騙して金を手に入れようと考えるのは至極当然だった。 善人を騙し、悪人を騙し、金を手に入れて生きる。罪悪感など感じず生存競争ととらえて生きていた。 しかし、悪人の中にとんでもない悪がいた。 マフィアと貴族の裏金を騙して手に入れてしまった彼は、四六時中命を狙われることになった。 そんな噂が流れて、恨みを買った悪人からも追われることになり命からがら街から逃げた。 遠く離れた街にやってきた頃には、彼はボロボロでホームレス。裕福そうな人間がゴロゴロいる穴場だが、身なりを整える金もない。 物心つく頃から騙し続けた彼は道端に落ちたゴミになった。 「あぁ…このクソッタレな人生も終わりか」 「もう人を騙すのも疲れた」 そうしてここで野垂れ死のうと思っていた時、一台の馬車が眼の前に停まる。 身なりを整えた男が降りてくると、彼の前に立った。 「浮浪者かい？随分とボロボロじゃないか…ほら、これをお食べ。」 柔和な笑顔を浮かべた貴族が差し出したのは一つのパンだった。男のように無償で食べ物を施す人間を見たことがなかった。 彼にとって初めて見る「幸運」。それは尊いものにみえた。一切れのパンでさえ、汚してはいけない物のように見えた。 「…俺は、それを食べれない」 「なぜ？死んでしまうよ？」 彼は神に懺悔するように自分がしてきた事を包み隠さず話した。話しているうちに、胸に溜まっていたドス黒い感情が外に出ていく感覚を感じた。 「…俺は、もう死んだほうがいい。」 「そうか……ならば、うちに来なさい。」 「は？」 「不運な男はここで死んだ。今、私の前にいるのは罪を認めることができる幸運な男だ。幸運ならば死んではいけない。生きていくにはまずパンを食べ、紅茶を飲むべきだ。さ、行こう。」 そうして彼は男に拾われ、男の元で生きるために庭師として働き始める。 土いじりが思いのほか楽しく、一日中庭にいることも多い。汚れた自分の手でも美しく咲く花が愛おしくてたまらない。そんな花を主人とその奥様とご子息に見てもらい、喜んでもらえることが何よりの誇りになった。 日々の中で気がついた事で、男の元に来る客は小悪党がそれなりに多いことを執事長に話したら、彼が最初に対応して人を量る仕事もするようになった。 自分の仕事を増やしてしまったことに肩を落とす。しかし昔取った杵柄が腐らないのも幸運なことと思って、今日も彼は花を愛でる。 ジョージは主人にもらった新しい名前。昔の名前はローラン。 好きなもの︰肉 嫌いなもの︰ウサギ 「見てくれはいいが、オデの庭を荒らすのは我慢ならねぇ。見つけたらコックに突き出して夕食にしてもらうべ。」 ほんのり訛ってる理由︰街に公演にきた劇団で、披露された演目に登場する庭師が訛っていたから。庭師とは訛るものと刷り込まれている。客の前ではちゃんと喋る。

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