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「人間の“本心”って何だろうか？」 あの日いつもの公園で、どちらからともなくそんな質問を投げかけた。 子どもたちの無邪気な笑い声が響く公園。 彼らはきっと今を「全力で」楽しんでいるのだろう。 傍にいるのは子どもたちの保護者。 旦那の愚痴を溢しながら、〇〇さんの家はいいわねなんて話をしている。彼らは果たして、自分を一切偽ることなく会話をしているだろうか。 物心がついた頃から、人は「自分の心を偽る」術を知らず知らずのうちに身につけている。意図的であってもそうでなくとも、社会の中での自分の役割を認識し「演じて」いるのだ。 「感情が脳だけで処理されていれば、世の中もっと平穏で生きやすいと思うんだ。理性と理性だけで会話をするのであれば、会話は社会的な規範に沿い、適切な妥協点を持って収束する。だけどそうじゃないだろう？世の中には理性的な思考だけでは説明できないことが山のようにある。僕はね、“心”の在処を知りたいんだ。」シンは言った。 「姿形はなくとも、伝えたいと思った気持ちそのものを“本心”と呼ぶんじゃないかしら。見えないからこそ、大きさも色も人それぞれによって違うとアタシは考えるわ。 人間はまず声から忘れる生き物でしょう？　耳で聞くだけじゃ長く残らなかったりするものよ。でもね、文字にしたら目に見える形として一生遺る。同じ「伝える」といった行為でも、手段ひとつでこんなにも違いが出るなんて、面白い話じゃない？ 本心を知ったら、受取人は喜ぶのか、怒るのか、はたまた涙を流すのか。アタシはね、人間の本心が現れる瞬間に興味があるの。“心”の込められた言葉って、嘘偽りのない本当の意味を持つのよ。それが気持ちを伝えられるラストチャンスだとしたら、尚更ね」ココロは言った。 「人間の“本心”」を知りたい。2人の利害は一致した。 ターゲットに遺書を書かせるのは100歩譲って良いとして、それをわざわざ届けるとまで言い出したのはココロだ。まあ、それが彼女の研究なのであれば、それを否定するのはナンセンスだろう。彼らもせっかく「死ぬ気で」それを書いてくれるのだ。その想いに応えなければ、不義理になる。もっとも、自分の研究に必要なのは脳と心臓で、それを奪ってしまえば自然と命は失われてしまうのだが。 僕は嘘つきだ。だから人間の“本心”の在処が知りたい。 ほかでもない、彼女の“本心”を。 彼女は死ぬ直前の人間が書く遺書にこそ人間の“本心”があらわれると言ったが、果たしてそうだろうか。僕の“本心”を知ったら、彼女は喜ぶのか、怒るのか、はたまた涙を流すのか。 僕の探究心の根源はすべて彼女だ。 全く、人間とは厄介な生き物だ。 本名：雨沢 臣 (アメサワ オミ) FFF9FF ■遺書 ココロへ 残念ながらこれは死ぬ直前に認(したた)めたものではないが、君はこういうのが好きだろうから。折角だし遺しておくよ。 君は年下でちびのくせに一丁前に態度がでかくて、後先考えずに行動するしいつの間にか居なくなってることも多いし、その割にデカい鎌を振り回したいとか言い出すし危なっかしくて。腐れ縁とはいえ、いつまで僕はお守りをすればいいんだろうね、全く。 あー、でもこれは遺書なのか。そうだった。 今これを読まれているということは、何か一大事が起こったんだろうな。 君のお守りから解放されていればいいんだけど。 でもそれはそれで寂しい気がする。 多分これは、所謂恋愛感情というやつなんだと思うよ。 今、君はどういう顔をしているんだろう。 君の阿呆みたいな表情が見られるのなら、遺書っていうのも悪くないものなのかもしれないな。 愛してるよ。 シン

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