タグ： もりなり りん

自分には何が出来なくて、反対に何が出来るのか。何を持っていて、何を失ってきたのか。幼い頃から常に自分を客観視することで踏み外すことなく、誰もか羨む人生を歩んできた。周りは体良く向上心があると言ってくれるが、彼はそれに対して不気味な愛想笑いを返すだけだ。彼からすれば当たり前のことを繰り返してきたにすぎない。努力を本当の意味で理解したことなど一度もない。しかし正直に言ったところで周りは「天才」だと適当な渾名をつけてしまう。自分を凡人だと呼んだところで現実は何も変わりやしないのに。そういった人間を憐れだと思っている。だから、救ってあげよう。当時高校生だった彼が医者をめざしたのは、それこそ向上心だったのかもしれない。自分が一体何者になれるのか。努力というものをしてみればカミサマにでもなれるのか。 暇つぶしにすぎない空想は彼の好奇心を刺激してしまった。彼は医学部への進学を決め、無事に国立大学に合格。その後、自分に合った職として精神科医を選んだ。現在は研究医として現場に出ている。 祖父とは離れて暮らしている。祖父には感謝しているものの、両親の死についての悲しみを共有できないなどのすれ違いに耐えきれなかったことが理由だ。彼は、本当はカミサマになって祖父を救いたかったのかもしれない。

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