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（さくら　ちえ） 良家に生まれた一人娘。……ということになっている。 幼いころから幽霊が自分の傍におり、言葉こそ交わせないものの友達のように接していた。 おかげで他に友人は全然できなかったが、幽霊の彼女と駆け回るのは楽しかった。 幽霊ちゃんも自分も、母の仕事に憧れた。母こそが一番すごい存在で、一流の仕事をしているんだ、と。 それを継ぐためにあらゆる努力をした。才能がないのはわかっていたが、幽霊ちゃんも応援してくれたし、まるで一緒に努力するように傍に居てくれた。 まだ認めてもらえないが、いつがは同じことを。 そんな日々もあっけなく終わる。よくある話で、交通事故にあってしまった。 何年も先で目覚めた時には、肺は全摘され体の一部には麻痺が残った。 そして、幽霊ちゃんはそこに居なかった。 リハビリを続け何とか体をちゃんと動かせて手先の感覚も戻った。それでもどうしても力が入らないし、体力なんて戻る気配すらない。 そこに追い打ちをかけるように母は言った。 『この仕事は最後には体力がモノを言う。力だって最低限はいる。最も大切な技術ももう身につかないだろう』 『だから、家は継がなくていい』 それから少しして、彼女は家を出た。絶対に諦めたくなかったから。 それから、あの子を探したかった。 まるで現実から逃げるようだった。

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