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ロスト 明るく元気な笑顔の絶えない女の子、だった。 かつての笑顔は消え、心を閉ざした彼女を変えたのは、今も昔も変わらぬただ一つの希望の星。 温かく、凍った心を溶かす不思議な男の人。 秀と共に歩いてきた道には春が訪れ、鮮やかな花々を咲かせていった。 諦めていた幸せを、少しずつ紡いでいく。 「しゅーくんがいるから、息が出来るの」 「私達の幸せの証、なず。あお。ありがとう」 「私はちゃんとお母さんなのかな」 ────────────────────── 警察官が夢だったの。 スポーツに勉強に、凄く頑張ったし、正しく、みんなを守る、警察官になろうと思ったの。 全てを失ってしまったあの日に、全てを諦めた。 親戚にたまい回しにされる日々。 私を疎む目。 誰も助けてくれない、誰も助けてくれない。 死にたい。死にたくない。 1人で生きていけるようになりたい。 早く、1人になりたい。 もう生きたくない。 でも……………………、、 早くこの家を出て、1人で生きる為に生きた。 警察官なんて、夢見てる場合じゃなかった。 あんなにキラキラしてた過去も、夢だったんじゃないかと、霞んでいって、思い出さないように蓋をした。思い出すと辛いから。幸せを思い出すと涙がこぼれるから。彼との記憶に鍵をかけるの。 こんな私、知られたくなかったんだ。 …なのに。 なのに、出会ってしまった。 すれ違ってすぐに気付いた、私はこう思ったの。 「どうか私に気付かないで」 「こんな変わってしまった私を見つけないで」 秀くんは変わっていなかった。 今も昔も、優しくて、キラキラしてた。 彼は大人しくて自信なさげで、悲しそうな人だったけど、どんどん輝くの。 優しくて、本当は誰よりも強い人だった。 何も曇らず、強く優しい瞳は変わらず、もっともっと素敵な人になってた。 小さな芽は、嵐の日も雪の日も、どんな日も耐えてすくすくと成長し、立派な木となり大木となろうとしていた。 眩しくて、眩しくて、泣きそうだった。 逃げ出したくなったのに、私は弱いから。 秀くんに甘えて、手を取ってしまった。 ねえ、私もう笑えないの、あの時の私じゃないの、そんなキラキラした目で見ないで…。 でも、ずっと側にいて欲しい、その気持ちに板挟みにされ、苦しかった。 彼は、私の夢を叶えてくれた。 みんなを守る警察官になった、きっと誰よりも素敵な警察官になるだろう。 凄い人なんだ、私の旦那さんは。 彼のおかげで少し笑えるようになった。 最高の殺し文句でプロポーズもしてくれた。 私のあげた、押し花を持っててくれた。 最高の、私の旦那さん。 子宝にも恵まれた。 きらきら、きらきら、私達の軌跡。 枯れたと思ってた私の人生にまた春が来て、どんどん芽吹いていくの。 私の宝物。私達の宝物。 なずなも葵もすくすく育っていく。 私は上手くお母さんになれているだろうか…。 秀くんに似て、優しい子に育ってるな。 なずなは体が弱いから、心配だ。強い体に産んであげられなくて、ごめんね。 私が不出来だから。 葵は少し女の子が苦手みたい。 大丈夫だよって事を上手く伝えてあげられない。 もしかして、私のせいだろうか…。 2人を守らないと、守らないと。 秀くんの為にも。 「私の生きている理由だから」 「愛してるわ」 ────────────────────── お守りをそっと握りしめて生きていく。 今日も、明日も、みんなと一緒に。 「あなたがいるから、」

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