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智晴には金が必要だった。罹患率の極めて低い奇病を患った、大切な娘のため。 実家の力があればそんな心配は本来必要ないが、家を飛び出してからは絶縁状態だ。頼れるわけがない。かといって、路頭に迷う前に慌てて就職したタクシー会社の給料では、到底賄いきれない。 妻も必死に働いてくれているが、苦労をかけ続けていることが心苦しい。それに、このままではお互いに疲れきって共倒れだ。そんなこと、あってはいけない。俺が家族を守るのだ。 そんなとき、娘を診てくれている病院から、治験の話を聞いた。これだ。治験だが、死んだり後遺症が残ったりするようなことはないだろう。俺が体を張ることで、まとまった金が貰えるのならば−−。 そんなこんなで治験に参加することとなった、智晴。 無事に生きて帰れるか、全ては女神の気分次第だ。 【経歴】 大手警備会社社長子息。幼い頃から厳格な父に扱かれて育てられた。 嫌々やらされていた空手だが、父のしごきもあって実力はなかなかのもの。拳銃やショットガンは、将来必要になるかもしれないからと、ラスベガスで父親に教えられてよく撃っていた。 思春期を迎えてから、徐々に父親に対して反抗心が芽生え始める。空手は続けたが、大学は行きたい場所を受験した。そこで出会った現在の妻。卒業と同時に結婚をするつもりだったが、父親は大反対。「我慢の限界だ！こんな家出ていく！」と啖呵を切って、妻と駆け落ち同然で家を飛び出した。

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