タグ： オラール探偵事務所 ファルジア 学生

歳の離れた兄とフランスからやってきた小学生。一見して少年と見間違うような服装だが、れっきとした女の子であることを公言している……そんな、元気などこにでもいる少女である。 ……というのは表の顔。 本名はアルマ・ファルジア。実年齢21歳、数ヶ月前に自殺したはずの人物である。 年下の子供や女性には甘いが、それ以外には口が悪くなりがち（たとえ女性であっても例外はあるが）。また、自分の感情を素直に認めることはできないものの、その代わり他者の感情の揺れには敏感である。 物心がついたときには孤児院で生活していた。幼少期の彼女は元気だがときに無鉄砲、悪戯好きな困った少女だった。 孤児院のほかの子供たちの「姉」という自認が強くあった。反面、その自認がほかの子供たちとズレている自覚、あるいは勘違いが明確にあったため、姉としてみんなを引っ張るリーダー的な立場でありつつ、自己肯定感はその頃から非常に低かったようである。 それでも彼女は、楽しく「家族」と過ごせることがなによりも幸せだった。ひょんなことから裏社会に飛び込む羽目になる、そのときまでは。 孤児院の子供たちを人質に取られ、齢15にして裏へ転じた少女は、殺人、麻薬の売買、窃盗や詐欺まがいのことまでなんでもやった。恐怖や孤独感、人を殺す罪悪感に心をすり減らしながら、いつしかビターズという男性を名乗り、演じて自分を殺した。 そうして、21にまでなったある日、ビターズは組織に捨てられる。不要と言われ孤児院ごと人質は解放されたとき、少女にはなにも残っていなかった。他で生きていけるほどの教養も、家族も、帰るべき場所も迎えてくれる人も、もうなにもない。故に彼女は、絶望の末に自らのこめかみに拳銃を突きつけた。 ーー次に目が覚めたとき、アルマ・ファルジアは子供だった。子供の姿で、本当に子供のように泣いて、助けを求め、いつのまにかやってきた暖かい腕の中に収まっていた。 現在、彼女はオラール探偵事務所のマスコット……もとい、末の妹として生きている。恥を忍んで小学生を演じて、探偵の妹を名乗り……。 愉快な神の気紛れによって寿命を伸ばされた彼女は、それでもそれなりに、エマ・オラールとしての人生を楽しんでいる……かもしれない。

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