タグ： 拝啓、よだかの星へ。

「あぁ、あの、ごめんなさい。私、その、なんにも知らなくって……」 日向 陽菜歩(ひゅうが ひなほ) 　RH-A型。春生まれ。生まれつきの全盲であり、色や景色を点字本からの知識でしか知らない世間知らずの成人女性22歳。仕事は議事録などの文字起こしライターである。音声読み上げ機能のついたパソコンを仕事道具に病床でひたすら仕事に打ち込んでいた。 　まるでそれに縋るように。 性格:内気で引っ込み思案、人見知り。対人能力が著しく低い。また自己評価もあまり高い方ではなく、自分を卑下するような発言が多い。しかし目が見えないということに関しては一切後ろ向きな考えを持っておらず、「誰も悪くない」という思いを根底に抱いている。 　人から世話をされることに少し引け目を感じており、自分に出来そうなことがあれば積極的に進言する(口調はまったく積極的ではない)。面倒見が良い性格であり、慣れた相手や親しい人には年上ぶった仕草を見せることも。 境遇:少し裕福な家の次女。生まれつき盲目であり体も弱かったため、ずっと家の中で暮らしていた。元々喘息で学校なども休みがちだったが、高校生の頃に肺がんが発覚。いつもの喘息だと思っていたせいで発見が遅れた。 　治療に専念するために高校を二年休学し完治させるも、三ヶ月後に再発。その後脳に転移していることが判明し、通信制の高校に転校して病院で周回遅れの高校生活を送ることに。20歳の時に高校を卒業し、以降は障害者就業支援ボランティアにより紹介された今の文字起こし仕事に従事している。 家族:大好き。とても大切に思っているが故に、とても申し訳なく思っている。 　困窮しているわけではなかった家計が、己の治療費で圧迫され苦しくなっていくのをずっと見ていた。大好きな姉が専門学校へ行く夢を諦め就職したことも、弟が受けるはずだった両親の関心を全て己が横取りしたということも、知っている。そうしてそのふたりが、自分を愛してくれていることだって、ちゃんと分かっていた。 　両親が喧嘩しているのを見たことがある。父の「どうしてうちのこだけが」という言葉。母の「私が丈夫に産んでやれなかったから」という嘆き。ごめんねと狸寝入りの髪を梳く、母の押し殺した声が、耳から離れない。 「誰も悪くないんです。私の体が弱いのも、私の目が見えないのも、誰のせいでもありません。それでももし、誰かひとりが責を負うべきなのだとしたら、それはきっと私です。こんな体で生まれてしまった私が、きっと一番悪いんですよ」 　これ以上誰にも迷惑をかけないように早く死んでしまいたいのに、大好きな家族が生かすことを望むから終わりすらも願えない雁字搦めの存在。 　──あぁ、でも。どうせなら、最後に。 　あなたに、会いたい、なぁ。

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