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「思考実験をしよう。仮に、私に並ぶ才覚を持った人間がいれば、その人間が私を愉しませてくれれば、私はもう少しまともに生きただろう。 　しかし、そんな人間は存在しない。少なくとも、今までの私の半生には存在しなかった。ゆえに私は悪となり、無聊を慰めるしかなかったのさ。 　うん？ 『これから現れたらどうする』、だって？ はは、今更、今になって？ 　……潰すとも。この私に破滅をもたらすような才覚を持つ人間がいるならば、私と同じ運命を背負わせてやると、私は君に誓おう」 「ねーマーティくん、本当に私の息子になっちゃわない？　あと数年で遺産がっぽり入るよ？　だめ？」 イギリス人の母とフランス人の父を持ち、とある大学で数学と化学の教鞭を執る教授。明瞭で含蓄と冗談に富んだ講義は学生からの人気も高い。 才能にも環境にも恵まれた、ロマンスグレーの英国紳士。……その皮をかぶった、犯罪卿。退屈凌ぎで他者の人生を弄び、そこに良心の呵責はない。 こんな天才を作っておいて並び立てる人間を一人も寄越さなかった世界と神が悪い、と飄々と嘯いている。 知識と人心掌握が物を言う物事は大体すぐに理解してしまうため、運試しの類や、新作、新発売、といったものに目がない。 相棒のことは、自分と同類ではないと思っているが、『理解出来ない』ということを理解してくれている得難い存在だと思っている。 20歳離れている彼のことを可愛がっており、ふざけて義息子と呼ぶし、養父と呼ばせたがる。本気ではないが遺産相続自体はやぶさかではない。 若い頃に一度結婚していたが、死別。妻は凡人だったものの、どんなささやかな事にも心を動かし学ぶ姿勢を崩さない、穏やかなひとだった。 義両親とは折り合いが悪く、妻の死に際して一人娘の親権を奪われ、面会謝絶の憂き目に遭っている。 実際のところ、奪い返す策など片手間で思いつくのだが、「私は良い男ではあるが、良い父親ではないからね」とのこと。 ▽記載されている呪文 《ヨグ=ソトースの招来/退散》《支配》 《旧き印》《復活》《萎縮》

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