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クトゥルフ PC作成ツール
ユダ(Judas)
ID:4374939
MD:7086fc7c96df7e017f45539ac90b69e9
ユダ(Judas)
タグ:
黎明期(ф)
SфRA-駒
SфRA-現代
秘匿出身(ф)
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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幸運
知識
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SAN
現在SAN値
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(不定領域:
)
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簡易表示
通常表示
技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
表示
初期値の技能を隠す
複数回成長モード
非表示
簡易表示
通常表示
<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
非表示
簡易表示
通常表示
<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
非表示
簡易表示
通常表示
<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
非表示
簡易表示
通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
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簡易表示
通常表示
<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
%
%
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簡易表示
通常表示
所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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簡易表示
通常表示
パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
■確認用項目 ・簡易紹介 ・探索者創造について ・各裏付けについて(表) ・後遺症 ・呪文 ・所持AF ・所持、あるいは読んだ魔導書 ・通過シナリオ ■蛇足項目 ・バックグラウンド 人物像(表) 簡易経歴 ・人間関係 ・その他記録 ・遭遇神性や怪物 ※ふんわりワンクッション ■蛇足別途資料 ・人物像(裏) ・各裏付けについて(裏) ・『故い人』たち ・追憶 ・走り書き『無意識』 ===== 以下、確認用 ======================================================= ■簡易紹介 にんげんが、だいすきな才能にあふれたまほうつかい! 何度も何度も何度でも、できそこないの恋をしてこどもの姿のまま、大人になる。 ────ほら、今日も星がきれい。 ■探索者創造について 設定年齢:EDU+6=?歳(現在) 職業ベース:魔法使い(『ergo』) 職業pt:[EDU*20]pt 職業技能:オカルト、操縦(箒)、薬学、動物言語、図書館、生物学 +その他興味のある技能(芸術・制作がオススメ) →製作(映し身)、目星 特記:なし 特徴表①:おおらか(5-5) 嫌なことをすぐに忘れられる。 精神科クリニックや療養所などでの正気度ptの回復が+1増加する。 特徴表②:異性が苦手(4-3D) どうしても異性と上手く話ができない。異性に対する〈言いくるめ〉〈説得〉〈信用〉に、それぞれ-10%。 不利な特徴のポイント[1d6×10] 1d6 Cthulhu : (1D6) → 3 興味ポイント+30P 興味技能参照:エンターテイナー(『クトゥルフ神話TRPG』p.48) 技能:言いくるめ、回避、聞き耳、芸術、信用、心理学、変装 →芸術(さぷら~~~いず!) └内容変更:言いくるめ→目星、変装・信用→医学 +個人的あるいはその時代の特色的な技能としてさらに1つの技能 →天文学 └初期値取得:心理学 ※某卓のハウスルールより、ステータスの振り直しについて「一括の場合は無制限」とのことで、ステータスのいずれかが18になるまで振り直している。 ※某卓のハウスルールより、ステータスの振り直しについて「数値の入れ替えは同じダイスならば可」とのことで、 CON18、DEX12 → CON12 DEX18 と、なるよう入れ替えている。 ※某卓のハウスルールより、特徴表について「振り直しは原則3回まで、その内2つまで所持可」とのことで、 珍しい技能(2-7)、異性が苦手(4-3D)、おおらか(5-5)と出たうち、異性が苦手(4-3D)とおおらか(5-5)を特徴表として付与した。 ※某シナリオの要素により、DEXに+2(上限突破可)されている。 ※某シナリオの都合により、加齢ルールが適用されていない。 ※『クトゥルフ神話TRPG』「魔術師たちはどうやってそんな事ができたか(p.113)」記載にある、 「SAN10↔POW1」のルールを適用している。SAN20消費の上で、POWに「+2」加算し、POW16としている。(作成時点:SAN50) ■各裏付けについて(表) ステータス ・魔法に頼りきりで鍛えることもない。やや非力。(STR) ・人間の間に稀に生まれる『魔法使い』のひとり。両親のDNAを引き継ぎつつも新個体として生まれてきたため、無性別である。(CON) ・来る者拒まず、去るもの追わずのスタンスを貫いている。切り替えが早く、良くない記憶には蓋をする傾向にある。精神はすり減っている。(POW) ・トンデモ器用! 特に繊細な魔法の扱いに長けている。(DEX) ・ユダ本来の姿は年齢は10代半ば程度。どちらつかずの中性的な容姿をしている。(APP) ・ユダ本来の姿は年齢は10代半ば程度。小柄。(SIZ) ・あまり察しが良い方ではないが、経歴から様々な物事を推測して考える。(INT) ・生まれてこの方学校に通ったり教師につく人間がいなかった為、殆どが独学。また忘却も混ざっている為、博識ではない。(EDU) ・来る者拒まず、去るもの追わずのスタンスを貫いている。何をされても怒らない、いつもヘラヘラと笑っている。(特徴表①(おおらか)) ・無性であるが故に出生の家では生まれたことそのものを無かったことにされた身。 劣等感と同時に、嫌悪を抱いている為、生殖の目を向けられると冷ややかな目を向けるか、話を聞かなかったことにする。(特徴表②(異性が苦手)) 職業技能 ・ほとんど独学の為、本を読むのは苦ではない。とはいえ、特別得意でもない。(図書館) ・人の洞察力に長けている。これまでの経歴で身に付いた。(目星) ・とびきり大切であると感じることを『恋』と呼び、『恋』を与えてくれた人を『恋人』と呼んでいる。 『恋人』の姿を借りて普段は過ごしている。(製作(映し身)) ・スピード魔。箒に乗せてあげることはできないだろう。(操縦(箒)) ・食用の鶏だったはずが、シルヴィ(最後の恋人)に可愛がられているのを傍で眺めているうちに、動物と会話を交わせる事に気づいた。(動物言語) ・バルトロに保護されるまで、ユダ本人以外の魔法使いに出会ったことが無かったため独学と偏見の知識で偏りがある。(オカルト) ・生物学的な知識というよりは、経験則から基づく偏見・知識。(生物学) ・薬草を探したり、作ったりするのに身に付いた知識だが偏りがある。同毒療法(ホメオパシー)に用いる。(薬学) 興味技能 ・『もう、逃げてしまおうよ』(回避) ・ほどよく人の話は聞き、ほどよく人の話を聞き流す。(聞き耳) ・おおよその怪我は魔法で治してしまう。結構得意。(医学) ・もはやドッキリサプライズのようなもの。サーカス団員として過ごしていた時に身に付いた。(芸術(さぷら~~~いず!)) ・星の綺麗な夜は特別な日なので、星に関してやや関心がある。(天文学) ■後遺症 【後遺症の肩書き】…… 内容 ■呪文 《呪文》基本?サプリ? pt.? 記載 ■所持AF ・名称 内容 ■所持、あるいは読んだ魔導書> 『魔導書の名称』本?サプリ? pt.? ?訳 ■通過シナリオ ・西暦/月/日 シナリオ名(SAN変動) ・2022/06/28 ergo(50→22→40) ===== 以下、蛇足事項 ====================================================== ■バックグラウンド にんげんが、だいすきな才能にあふれたまほうつかい! 何度も何度も何度でも、できそこないの恋をしてこどもの姿のまま、大人になる。 今まで好きになってきた人たちを見送って、その人たちを忘れないように自分自身に名前をつけてみた。 細かい過去のことを忘れたフリをしている。自分がどんな顔だったのかも。でも、覚えてなくたっていいんだ。感情こそが、自分の証明になるのだから。 大事にするという感情を、「恋」と呼んでみる。 ほら、今日も星がきれい。 44Gt44GI44CB44GE44Gk44Gr44Gq44Gj44Gf44KJ5aSn5Lq644Gr44Gq44KM44KL44Gu77yf ◆人物像(表) 一人称:ぼく ……その他容姿に合わせて変動する 二人称:あなた、きみ ……その他容姿に合わせて変動する 呪文:「テアートル・ヌース(théâtre nous)」「ア・シアンス(a scient)」 明るく朗らか話方をするのは、現在の基本となる容姿をシルヴィから借りているのが一番大きいだろう。 好奇心旺盛だが、来るもの拒まず去るもの追わずの精神を基本は貫いている。 明るさで印象に残りにくいが、自己肯定感が低い。記憶の保持に苦手の傾向が見えるようだが、その実は……? 「わたし! 最近ここに来た魔法使いだよ~~~!! シルヴィって呼んでね!」 「え? 昨日は『ユダ』って名乗ってた? おぼえてないな~~~~! じゃあ、『ユダ』でもいいよ!!!!!」 「魔法ってすごい! わたしはね、たま~~~に『奇跡』って呼んでるよ! にんげんにできないことをするんだ! わたしたちは『奇跡』の星の子だよ!」 44Gh44KD44KT44Go6Kaa44GI44Gm44KL44KI44CC 「わたしは、魔法使いに生まれてよかったって思ってるよ!! がんばろうね! みんな!!」 ◆簡易経歴 (生後-10年?) 某国の名門貴族として生まれるも、無性である為に地下牢にて遺棄。だが、魔法使いであったために独りで10年程生きながらえる。 ジェーン・ドゥと名乗る屋敷の奴隷と遭遇。無名である事から『魔法使い』であると露呈する。 ジェーン・ドゥに都合よく利用され、生まれ育った屋敷と、家族らがユダの魔法によって燃やされる。 残された分家の者らにジェーン・ドゥは取り押さえられ、ユダの前で首を切り落とされ殺害。 (-30年?) 生まれた地から離れ、ジェーン・ドゥとして容姿と名前を借りて東部の国へ逃げ込む。 ウターリド率いるサーカス団と遭遇。団員として受け入れて貰う。 団員らが貴族に買われ、ユダの前でウターリドが首を切り裂かれ、頭部以外の身体を虎の餌食とされる。 (-???年) ウターリドとして流浪の度を数十年続ける。 夜の砂漠でブジーアと名乗る少年と出会い、共に旅をする。 ブジーアは某国の王族であった事が発覚。 ブジーアが誘拐されたことから、救助に赴くも満身創痍で判別のつかない状態でブジーアをユダが剣を用いて一刀両断。 ブジーアを装い、ウターリドを死んだ者として偽装し、ブジーアを国外へ逃がした友人らと共に革命を起こし、その後ディーノの元から逃亡。 (-???年) ディーノの元から逃亡し、誘拐事件で騒がれている霧の都へたどり着く。郊外の森で狩猟用の罠に掛かり、アンドレイと名乗る老人に保護される。病弱の孫息子がいた。 結果的に世間を騒がせている誘拐犯は、アンドレイの仕業だった。自警団であるアレクセイと秘密裏に関係を持っていたユダが暴いた時に初めて露呈する。 同物同治(調子の悪い臓器を、ほかの健康な臓器を持った動物から頂くことで良くなるという考え方)を信じて行った結果であり、孫息子は実は胎児で、生まれる前に亡くなっていた。 アンドレイを守るために移動魔法を自警団の前で使ってしまうも、アンドレイが庇い、アンドレイが邪悪な魔法使いであると糾弾され、アレクセイが射撃命令を出したのを機に銃殺され、故人となる。 初めて名前も姿も借りずに霧の都を出て、旅に出る。 (-???年) 無名の存在として数百年の旅路を過ごした後、ユダ自身が思い入れのある場所を巡る旅へ。 霧の都が花の都になっておたり、亡国に慰霊神殿が立っていたり、サーカスの姿が消えフリーマーケットで賑やかになっていた。 (-???年) 最後に、ジェーン・ドゥに騙されて燃やしてしまった生家でシルヴィと名乗る少女と出会う。 彼女の家に伝わる言い伝えからユダが生まれ育った家の、分家派生であることが発覚。 シルヴィは魔法使いになることを望んでいた。ユダは人間になることを望んでいた。腕を切っては互いの命を舐めて過ごしていた。 シルヴィが家の者に見つかるのと、「星降る夜」に人々が連れ去られるのが同時期に起こる。 ユダが魔法使いである事が露呈し、シルヴィがユダを庇い、自身が石となりユダの力になれることを願ってユダの前で自害。 シルヴィの遺体を食らいきった後に、バルトロに保護される。 (-現在) バルトロの作った世界の端っこの館で過ごす。 ■人間関係 ・母親(故人)……。 ・父親(故人)……。 ・兄弟ら(故人)……。 恋人たち ・Jane Doe(故人)ジェーン・ドウ。 初めて好きになった人。名前に意味なんてなかった。ユダの生家の奴隷。 ユダを利用し、ユダの生家を燃やし、ユダの前で首を切り落とされて死んだ。 ・عُطَارِد صَقْر عَبْد الرَّؤُوفِ(故人)ウターリド・サクル・アブド・アッ=ラウーフ。 東部の国でサーカスを運営する要役。ユダに処世術を教えてくれた。 最期は多額の借金を抱えていることが仲間たちに暴かれ、ユダの前で喉を切られたうえで虎の餌となって死んだ。 ・Bugia(故人)ブジーア。本当の名前は、ディアナ・エレオノーラ・マンチーニ。 某国の王族の娘だが、男装して一時ユダと旅をしていた。 最期はユダと、ブジーア自身の恋人を守るためにユダに斬られて死んだ。 ・Андрей Суворинов Ази́мов(故人)アンドレイ・スヴォリノフ・アシモフ。 霧の都の郊外にある森に棲む老人。医者。狩用の罠に引っかかったユダを助け、ユダに医術と薬売りを任せていた。 最期は、 ・Slyvie Angélique Fournier(故人)シルヴィ。アンジェリク・フゥファニィ。 何世代も遠い孫娘。ユダの生家の遠い遠い分家。今の姿は彼女のものだ。 魔法使いになる事を望んでおり、ユダと初邂逅に本質を見抜き、それ以降血を舐め合い、立場の逆転を望んでいた。 最期は“星降る夜”に魔法使いとの関係性を咎められ、ユダの前で自害した。「ユダ」という名前を与えてくれたのも彼女。 ・Kikeriki(鶏・生存)鶏のキッケ。餌用だったが、シルヴィが「キッケリキー!」と面白がって名前をつけた。 魔法使いたち ・バルトロ(公開NPC)P>N P:好奇心、尊敬、感服、友情、幸福感、★信頼、好意 N:脅威、不安、劣等感 バルトロくん! 初めて出会った魔法使い! お家かしてくれてるんだ~~! ・エルゼ(公開NPC)P>N P:好奇心、憧憬、尊敬、★慈愛、友情、庇護、幸福感、信頼、好意、懐旧 N:悔悟、不安、劣等感 エルゼちゃん! お隣の魔女さん! ティーパーティーわたしも大好き! ・Noah(CMqYwjktgZF0JMjr1poBj PL:あいりん)P>N P:好奇心、尊敬、感服、友情、★信頼、好意 N:脅威、劣等感 ノアくん! ・Las(4538604 PL:きゅう助)P>N P:好奇心、尊敬、友情、★幸福感、信頼、好意 N:脅威、劣等感 ラスくん! ・Spēcvla(4534987 PL:かえる)P>N P:好奇心、慈愛、純愛、友情、同情、★庇護、信頼、親近感、好意、尽力 N:悔悟、疎外感、憐憫 スペークラくん! ■その他記録 ・2022/06/-- ergo通過前 呪文の意味①「テアートル・ヌース(théâtre nous)」 意訳:理性ある探求は至高である! 語源:テオリア(理性を持って探求している時が人間の幸せだという考え方。意味:観照・観想。語源:ギリシア語で劇場;theatron(テアトロン)) →フランス語で劇場;théâtre(テアートル)+古代ギリシア語で理性;nous(ヌース) 呪文の意味②「ア・シアンス(a scient)」 意訳:無意識はわかってる 語源:ア・プリオリ(経験に依存せず認識している知識) +フランス語で無意識;Inconscient(アンコンシアンス)造語 名前の意味 最初の恋の人──Jane Doe ‐Jane Doe(ジェーン・ドウ) :英語俗称「名無しの権兵衛」 第2の恋の人──عُطَارِد صَقْر عَبْد الرَّؤُوفِ(‘uṭārid ṣaqr ‘abdu-r-ra’ūf) ‐عُطَارِد(ウターリド) :アラビア語男性名。名前。「水星」 ‐صَقْر(サクル) :アラビア語男性名。父姓。「鷹」 ‐عَبْد الرَّؤُوفِ(アブド・アッ=ラウーフ) :アラビア語男性名。祖父姓。「慈悲厚き者アッラーのしもべ」「慈悲深き者アッラーのしもべ」 第3の恋の人──Diana Eleonora Mancini(Bugia) ‐Diana(ディアナ) :イタリア語女性名「神聖な女性」「神々しい女性」「素敵な女性」「素晴らしい女性」 ‐Eleonora(エレオノーラ) :古いフランス語が由来のイタリア語女性名「明るい光」「輝く光」 ‐Mancini(マンチーニ) :イタリア発祥の貴族の家系 ‐Bugia(ブジーア) :イタリア語「嘘」 ‐Dino(ディーノ) :イタリア語「小さな剣」「小さい刀」 第4の恋の人──Андрей Суворинов Ази́мов(Andrey Suvorinov ) ‐Андрей(アンドレイ) :勇ましいの意。使徒アンデレに由来 ‐Суворинов(スヴォリノフ) :суро́вый (峻厳な・陰気な)の方言? ‐Ази́мов(アシモフ) : зима́ (冬)からつくられたあだ名? Алексей(アレクセイ) :ギリシャ語由来「護る」の意 第5の恋の人──Slyvie Angélique Fournier ‐Slyvie(シルヴィ) :フランス語女性名。ファースト・ネーム。「森からの」 ‐Angélique(アンジェリク) :フランス語女性名。セカンド・ネーム。「神の使者」 ‐Fournier(フゥファニィ) :フランス語姓。ファミリー・ネーム。「パン屋」 探索者モチーフ:最後の晩餐 『ユダ(Judas)』:(ヘブライ語意)ヤハウェに感謝する イスカリオテのユダ──────────裏切り、金銭、愛情、利用、自害 忘却の聖人ユダ・タダイ────────存在の忘却、二面性、おおらか 疑い深いトマス(ユダ・ディディモ)──鏡映し(映し身)、懐疑 最後の晩餐──────────────裏切り、食人、愛 恋人達への感情モチーフ:人間の5つの基本感情(46種類)( https://swingroot.com/emotion-type/ ) ■遭遇神性や怪物 ※ふんわりワンクッション ・名前 ===== 以下、蛇足別途資料 ==================================================== 「ねぇ、例えば無意識が意識になったとして、意識は無意識にはならない。 でも無意識も意識のうちのひとつで、意識がそこにないってだけ。何を言ってるんだって? 簡単な事だよ。 僕が僕自身を認めたとして、僕は僕であるとは限らない。けれど、僕は僕のうちひとつで、普段僕は気にしないようにしてるってだけ。 僕のことが知りたくてこんなに深いところまで来たんだって言うんなら、先に忠告しておくけど、 君が僕を見つけたとして、君は僕の想像をするだけで、それはきっと僕じゃない。 本物の僕はどこにもいないよ。本物を望まれなかったんだから当然だよね。だから、『魔法』なんて不確かな『奇跡』が確かにここにあるんだよ。 いいかい。この先君が知ったとしても、見たとしても、感じたとしても、なんの役に立たない。 無意識という名の『蛇足』にしかならない。それでも君は僕のことを知りたいの?」 「……」 「なら、改めて自己紹介しよう。僕は『無意識(ア・シアンス)』だ。言っとくけど、僕は僕だよ。さっきの事と矛盾してるって? 馬鹿だなあ、」 「不確かなものが確かに存在してるから、僕はどうしようもなく『魔法使い』なんだよ」 ■人物像(裏) 一人称:僕 二人称:あなた、君 無性を持って生まれてしまった為捨てられ、生まれてこの方誰からも魔法を教わらずにも拘わらず、器用にも生きながらえてきた。 身体の成長時点(10代半ば)程度で精神状態も止まっているのか、幼さが残る。 幼少〜数百年程度の頃までは人に対して甘かったが、3人目の『恋人』が亡くなってからはやや粗悪な態度が目立つようになる。 生まれてきたことを認めなかった! 『魔法使い』というだけで迫害した! 「恋」を与えてくれた大切な人間たちを奪っていった! 人間に対して強い恨みがあるが、同時に『恋人』たちの事が後ろ髪を引き、愛憎に近しい感情をもちあわせている。 大事にするという感情を、「恋」と呼んでみる。 憎くて憎くて仕方ない感情を、「愛」と呼んでみる。 ほら、今日も星がきれい。 みんな持っていってしまえよ。 無意識は囁く。魔法使いになんて生まれたくなかった、と。 ■各裏付けについて(裏) ・幼少はあまり強い魔法は扱えず、数百年生きていくうちに魔力は強靭さを増し、その代わり精神的に摩耗していった。 二面性がある。二重人格ではない。「無意識」が記憶を遠ざけている為、切り替えが早いように見える。(POW) ・生後直ぐから魔法が使えた典型的な才ある魔法使い(ア・プリオリ)。使えなければ今頃死んでいただろう。(DEX) ・殆ど素の姿を人前に晒すことは無い。素の姿があまり好きではない。(APP) ・ウターリド(第2の恋の人)の元で処世術を覚え、疑われても否定も肯定もしない事や、 アンドレイ(第4の恋の人)の事件の時に駆け引きをしていたりなど、そこそこ聡明。 物事を自分で判断できるが、恋人の容姿を借りている時はその人の代わりとして生きている為、不器用にも見える。(INT) ・(EDU) ・二面性がある。二重人格ではない。「無意識」が記憶を遠ざけている為、切り替えが早いように見える。(特徴表①(おおらか)) ・ブジーア(第3の恋の人)の友人、ディーノに恋慕を向けられた事が最大の切っ掛け。無性に対してはコンプレックスがあった。(特徴表②(異性が苦手)) ・(図書館) ・生まれた頃より魔法が扱え、その代わり誰も教育する者はいなかった。魔法で姿を隠しては生家の者の生活を観察し、学んでいた。 洞察力に長け、よく人の事を見ている。(目星) ・これまで5人の恋の人の姿を借りて過ごしている。精度は高く、変身魔法が得意。人間以外の生物を真似ることすらある。(製作(映し身)) ・最初に安定して扱えるようになったマカロンの次に、安定して扱えるようになった箒。 自前の箒を持つようになったのはバルトロに拾われてから。(操縦(箒)) ・アンドレイ(第4の恋の人)として生きていた内に拾った食用鶏を代を経て共に居させたが、 シルヴィ(最後の恋の人)に本質を見抜かれて以降、動物と会話が通じることがある事が発覚した。テオリア。(動物言語) ・『魔法使い』に関しては曖昧な知識でしかなかった為、バルトロの元に来てから『魔法使い』の事や、『魔法』の事を本格的に知っていった。(オカルト) ・アンドレイ(第4の恋の人)に教わっていた。薬を売っていたのも、勉強の過程である。((生物学) ・アンドレイ(第4の恋の人)に教わっていた。薬を売っていたのも、勉強の過程である。((薬学) ・今までずっと逃げてきた。これからも逃げ続けるつもりなのだろうか。(回避) ・アンドレイ(第4の恋の人)に教わっていた。薬を売っていたのも、勉強の過程である。(医学) ・ウターリド(第2の恋の人)のサーカスで『マジシャン』として芸を披露していた時に身に付いた。 魔法を用いてマジックのように見せかけたり、魔法を用いずとも相手を喜ばせるために役に立つかもしれない。(芸術(さぷら~~~いず!)) ・シルヴィ(最後の恋の人)は星が好きだった。死後は星になるのだと、夜は草原で転がり星座をなぞった。(天文学) ■『故い人』たち 5YOV44Gr44CM5oGL44CN44KS5LiO44GI44Gm44GP44KM44Gf44CB5oSa44GL44Gq44CO5Lq66ZaT44CP44Gf44Gh44CC 五大感情──────喜び・嫌気・悲しみ・恐れ・怒り 喜び(感覚的快楽)────── 嫌気()────── 悲しみ()───── 恐れ()──── 怒り(恨み)────J【ANGER/Bitterness】 ◇最初の故い人──Jane Doe(ジェーン・ドウ)【ANGER/Bitterness】 「私の復讐を手伝ってくれてありがとう!」 髪の色:赤 瞳の色:紫 一人称:私 二人称:あなた、おまえ ユダの生まれ育った家の奴隷。好き勝手扱う家に対して強い恨みがあり、噂の『魔法使い』を探していたところ、ユダに出会った。 ユダを都合よく利用した一方で、ユダの事は本当に可愛がっていた。最期は分家の者らに捕らえられ、首を切り落とされ故人となる。 名前に意味がなかったのは、財産としてすらの価値もない奴隷だったから。 ◇第2の故い人──عُطَارِد صَقْر عَبْد الرَّؤُوفِ(ウターリド・サクル・アブド・アッ=ラウーフ) 「僕はただ、ひとりになりたくないだけなんだ。ほんの少しの奇跡を分けて貰えないか」 髪の色:黒 瞳の色:ヘーゼル 一人称:僕 二人称:あなた、君 東部へ逃げてきた先、出会ったサーカスを運営する要役・責任者。ユダに処世術を教えてくれた。 ユダの魔法を見てすぐ、魔法使いなのではないかと懐疑を抱き、同時にジェーン・ドゥとしての容姿に一目惚れした。末期癌の罹患者である。 昔盗人として働いており、その時盗んだ財宝が30年越しに話題にあがり、仲間たちが貴族に買われ、殺害と財宝の在処を聞き出せば報酬を与えると吹聴される。 事を穏便に済ませるためユダに助けを乞うも、否定され、自白を考えるが、自白の前に仲間たちに暴かれ、ユダの前で喉を切られたうえで虎の餌となって死んだ。 ◇第3の故い人──Bugia(ブジーア)或いは、Diana Eleonora Mancini(ディアナ・エレオノーラ・マンチーニ)【Fear/trepidation】 「俺は、都合よく扱われるのは嫌だった。もう少し、人間らしく生きたい。象徴であるには、あまりにも身体が暖かすぎた」 髪の色:白 瞳の色:エメラルド・グリーン 一人称:俺 二人称:おまえ、君 ウターリドとしてのユダが旅をしていた先で出会った某国の王族の皇女。男装して一時ユダと共に旅をしていた。 国を出る時、友人であるディーノに逃がしてもらうも、その事が気にかかり、国に戻るべきか旅を続けるかの選択をユダに委ねた。 国に戻ってすぐディーノに匿って貰うも、状況が殆ど拉致のようであった為に、勘違いしたユダが軍事基地に乗り込み、 ディーノと一騎打ちとなった時に互いを守るために間に割って入り、故人となる。 精神のすり減っていたユダの取った行動により、「死んだのはウターリドで、ブジーアは生きている」事として革命を起こし、後にディーノの元から逃亡。 ◇第4の故い人──Андрей Суворинов Ази́мов(アンドレイ・スヴォリノフ・アシモフ) 「」 髪の色:白 瞳の色:水色 一人称:儂 二人称:おまえさん ディーノの元から逃亡し、その道中で保護してくれた老人。霧がかった町では殺人事件で騒がれていた。病弱の孫息子がいた。 世間を騒がせている殺人鬼は、アンドレイの仕業だった。警察に秘密裏に関係を持っていたユダが暴いた時に初めて露呈する。 息子の悪い臓器の部分を食わせれば治るという迷信を信じて行った結果であり、魔法使いなのではないかと警察らに警戒され、 一人の警察が誤発砲したのを機に銃殺され、故人となる。孫息子の方は養護施設に預けられるも、その後病死。 ◇最後の故い人──Slyvie Angélique Fournier(シルヴィ・アンジェリク・フゥファニィ) 髪の色:フローラル・イエロー() 瞳の色:ゴールド(FFD700) 一人称:わたし 二人称:あなた、きみ 出会った。シルヴィは家出をしていた。シルヴィの家に伝わる言い伝えを聞き、シルヴィが遠い血縁の子孫であることが発覚。 シルヴィは魔法使いになることを望んでいて、ユダは人間になりたかった。 お互いがお互いの望み通りに慣れるよう、腕を切って互いの命を舐めて生活をしていた。 しかし、シルヴィはいつしか家に引き戻されてしまう。同時期に『星降る夜』の事件も起きてしまい、シルヴィは魔法使いに対して強い危機感を感じて、 ユダを連れて向日葵畑の中に立ち聳える大樹の下で、石になる事を願って首を吊り、故人となる。魔法使いにはなれなかった。 ■追憶 ?歳 [シナリオ名] ■走書『無意識』 僕は、名門貴族の家系で生まれた『公子』になるはずの存在だったけれど、この頃、世界には人間の間に稀に生まれる奇跡の存在がいた。『魔法使い』の事だね。僕は生まれつき雌雄どちらにも分類の出来ない、所謂「無性」だったんだ。僕の両親は僕の姿を見て驚きふためき、僕が産まれた事を無かった事にするため地下牢に捨ておいた。誰も殺さなくていい。誰も面倒を見に行かなくていい。使われなくかった地下牢は、家にとって「忘却」と「空白の時間」を齎し、僕の存在を家の誰もが忘れることにした。けれど、僕は魔法が使えたから辛うじて生きていた。それこそ、10年ぐらいなのかな? この頃から身体も成長することをやめてしまって、僕の魔法は不安定ながら自由を極め始めていた。僕は魔法がある程度使えるようになっていた頃から度々地下牢から飛び出しては家族の様子を見に行ってた。何を食べてどう暮らしているのか。どう話しているのか。身の振るい方とか。そうして僕は家族に関わることなく、人間のように暮らす作法を覚えて行った。僕はこの頃から自覚していた。僕の存在は誰も望んでいないんだと。僕は家族の事をずっと見ていたけれど、関わることは何だか怖くて、やめた。人との関わり方が分からなかったのもあっただろうけどね。でも、ある日。その日は星が綺麗な夜だったのを覚えてる。僕はついに家の者に姿を見られてしまう。紅い、しなやかな髪が焔みたいだった女性。ジェーン・ドゥと名乗った。彼女の名前に意味は無い。つまり、彼女の名前は生まれて与えられた名前じゃなかった。僕は名前を問われた。けれど答えられなかった。彼女はそれで『僕』の存在を認識したらしい。僕のことを探していたんだ。産まれることなくして死んだ、そういう扱いにした『公子』がいると。そして、夜な夜な家に不幸を持ち込む『魔法使い』が潜んでいると。彼女は、大層喜んで僕の事を可愛がってくれた。僕はこんな風に扱いを受けたことは無かった。家族を見守っている時に、家族の恋文を見たことがあった。精一杯相手の事を褒め称えて、自分の愛情を伝える行為。彼女の好意はそれに似ていた。だから僕は彼女は僕に「恋」を与えてくれているのだと思ってとても嬉しくなった。初めて関わった人間は名前に意味の無い、「恋」を与えてくれた人間だった! 僕は嬉しくて嬉しくて、彼女の言うことならなんでも聞こうと思った。よく燃える物質を作って欲しいと言うから色んな本を開いて試行錯誤しながら作ったし、一斉に家の扉の鍵を締めてほしいと言われたから魔力が尽きないようにマカロンを沢山用意した。炎の色は青がいいだなんて言うから僕は理由も聞かずにひとり育てた魔法を用いて彼女の為にと、────いつの間にか家が燃えていた。彼女は僕を利用していた。僕は理由を聞かなかった。見守っていた家族は、僕が殺してしまった。ジェーン・ドゥは僕の家が嫌いだった。人として扱って貰えず、あらゆる欲望の矛先として都合よく扱われていたから。奴隷だったから。だから僕の家を、家族を殺したかった。でも、大きな家には兄弟がいて、小さな家には血の繋がりがあることもある。ジェーン・ドゥはは分家の者によって罪を咎められ、僕のことなんてお構い無しにジェーン・ドゥを取り押さえた。ジェーン・ドゥは大層嬉しそうに大声で笑って、剣が振り下ろされたにも関わらず、笑って、僕に向かって、また笑って、「私の復讐を手伝ってくれてありがとう!」と言って死んだ。彼女の首がボールのように僕の足元に転がってきて、同時に、分家の者たちが僕に不審な視線を向けた。僕は恐ろしくなって、逃げだした。海を渡って、この土地から出来るだけ離れよう。そして、僕自身の存在なんて消してしまおう。僕を利用したとはいえ、僕に笑顔を向けて感謝をしてくれた愛しい、愛しいジェーン・ドゥ。君が生きていたかった人生って、どんな人生なの? 僕は、彼女の意味の無い名前と美しいの姿を借りることにした。 東部まで行けば僕を探しに来ることは無いだろう。そう思った矢先、僕の前には移動式サーカスが現れた。初めて見たサーカスの中身は、華やかで賑やかな異世界だった。縄一本で宙を歩くひと、猛獣を器用に指示し炎の輪の中に潜らせるひと、まるでみんな『魔法使い』のようだった。僕が目を輝かせながらその世界を見ていると、サーカスの関係者に声をかけられる。見るならお金を払わなくてはいけないのだと。流石にお金を持ち合わせていなかった僕。言い訳をいくらしようもつまみ出そうとする関係者に向かって僕は「私にもすごいことが出来るので、ここで働かせて下さい!」と言った。そして冷や汗をかいた。僕は、罪から逃れるために、『魔法使い』である事を隠すためにこの場所に逃げてきたのに、まるで魔法が使えることを積極的にアピールしているみたいだったじゃないか。いや、もしかしたらこのサーカスにいる人たちは本当に魔法使いなのかもしれないし、それなら今の言い方で引っ掛かることも無いのかも? 様子を窺っていると、関係者の背後には背の高い男の人が立っていた。浅黒い肌に明るい笑顔が印象的だ。曰く、彼はこのサーカスの要役・責任者なのだとか。「ちょうど人手が足りなかったから、団員が増えるのは嬉しいよ。でも、君には何が出来るのかな?」と言われて、僕はマカロンを出して見せた。生まれてすぐ、いつの間にか使えるようになっていた魔法だ。彼は酷く驚いた顔をしてたけど、快く僕を受け入れてくれた。彼の名前はウターリド。フルネームはもっと長い。ちゃんと覚えているけれど、ここで書くのはよしておく。水星の意味があるんだって。ウターリドは僕に最高の環境を与えてくれた。食事の作法も乱れていたからと言って矯正してくれたし、なにより僕のことを詮索してこない! 僕は凄く居心地が良かった。思えば、僕がどんな姿であっても僕らしく居られたのはウターリドのお陰だったのかもしれない。サーカスにおいて僕に与えられたポジションは、『マジシャン』だ。何も無いところから突然物が現れたり、物が変わってたり見せてお披露目する。流石に団員も魔法使いではなくて、トンデモ器用な人間たちで、見世物をする対象もただの人間だった。どうなってるんだ? すごーい! とみんな僕を囃し立てたけれど、タネも仕掛けもすべて魔法である事を隠していた僕は、なんだかくすぐったい気持ちになっていた。ここでの生活は意外と短かった。20年ほどいたかな? ある夜、ウターリドは僕を呼び出した。そしてウターリドはなんだかやつれた表情で僕に言った。「多額の借金を抱えていて、もうサーカスを運営するのも厳しい。仲間にはこのことを伝えられずに20年も経ってしまったし、僕はもう癌で死ぬしかない。だから、僕が死んでしまったあと、君に渡したい物があるんだ」僕は突然のことに何も言えずにいた。それを肯定と見なしたのかウターリドは次々に、まるで縋るように言葉をこぼしていく。「僕は昔、悪事をして生きていて、多くのものを盗んでいた。獲物の中には貴族の家もあって、僕は多くの金銀財宝を貴族が旅行している間に自分の家の地下に控えた。ほとぼりが冷めたら金に変えて裕福な暮らしをするつもりだった。けど、貴族は僕のことをずっと探してる。最近になって記事にも載るようになってた。『30年前に失われた一家伝来の宝物』だって。確かに僕は悪いことをした。けれど今になって掘り返さなくてもいいじゃないか! 今の僕は風前の灯。気が立ってるのかもしれない。僕は怖くて怖くて、君に助けて欲しいなと思った」「僕はもう気づいているんだ。……君は、『魔法使い』なんだろう? 僕の病気を直してくれないか。そして、僕の家の地下にある金銀財宝をしれっと何処かに移動させることは出来ないか? なんなら、金銀財宝をコピーして、複製品を返してあげて、本物の方を換金出来たならこのサーカスは救われるはずなんだよ! ……なんて。僕はただ、ひとりになりたくないだけなんだ。ほんの少しの奇跡を分けて貰えないか」僕は何も言うことが出来なくて、ただ首を横に振るばかりだった。その様子を見て、ウターリドは諦めたように笑って、「ごめんね」と言った。「君を引き入れたのは『魔法使い』だとわかったから。そして、君に一目惚れしたから。でも、もういいよ。僕も大人げなかった。素直にこの事はみんなに言おうと思う、その後でこのサーカスは畳もう」諦めたように笑うウターリドは、なんだか素敵だと思った。僕はサーカスメンバーの中でも割と新入り寄りだけれど、ウターリドは僕を選んで秘密を告白してくれた! この人に一等大事にされていたのだとわかると、ジェーン・ドゥに優しくされた時のように嬉しさが込み上げるのがわかった。けれど、僕はあくまでも『魔法使い』である事を隠している。例え、バレて居たとしても、認めてあげなければそれは事実じゃないことをこの20年でウターリドから学んでいる。僕は彼の思いを受け止めるだけに留まった。しかし数日後、ウターリドの努力は虚しく仲間たちの方から借金のことが明るみに出た。更には罹患者であるということすらも。仲間たちの叱責がテント内に永遠と響き渡っていた。「昔、貴族の家に忍び込んで財宝を盗んだって聞いてる。俺たちはな、貴族に買われたんだ! お前を殺してお前が隠した財宝を貴族に渡せば、借金はおろか遊ぶ金もくれるんだって! だからお前は財宝の在処を吐いてここで殺されてくれ」なんて残酷で小さな世界なんだろう。そう思ったのはきっとウターリドも同じだと思う。ウターリドは肯定も否定もしない。無反応が一番の部外者になれるから。それを僕は知ってる。だから、僕も何も言わなかった。仲間たちは、はやく! はやく! と、ウターリドを急かす。ついにはウターリドを、ジェーン・ドゥの時のように押さえ込んで、ナイフを向けて脅し始めた。いよいよ命の危機を感じたのか、ウターリドはひどくか細い声で「財宝の在処はジェーン・ドゥが知ってる」と言った。僕は一瞬何が起きたのかわからなかった。目の前が真っ白になるってきっとこの時のことを言うんだ。仲間たちは僕のことを見る、僕はいつも通り笑みを浮かべることすら出来なかった。ナイフの切っ先が無意識的に僕の方へ向けられていた。あれが刺さったらきっと痛いだろうな、そう思ったら無意識はナイフを弾き飛ばしてしまう。仲間たちは目を丸くしていた。僕だってそうだ。ああ、まずい。ステージじゃないのに魔法を使ってしまった。僕は慌てて言い訳をする。「今のはマジックだよ。ごめんね、あまりに堅苦しい空気だったから。息がしやすいようにと思って」下手くそな笑い声が静まり返ったテントの中に響いた。ああ、繕えない。仲間たちは次に僕のことを責め始めた。ありもしない事を言われ、僕は否定し続けた。すると、あまりに必死に否定するものだから仲間たちの方が下手に出た。「なら、いつものマジックでウターリドに在処を言わせてみろよ」そんな、ひとの意思をねじ曲げるような真似、僕には出来ない! やりたくないよ! 僕はついに懇願する。告白する。「確かに私は在処を知っています。でも、ウターリドを殺さないであげてください」それから、約束を取りつけるために僕の方から在処を口に出した。ウターリドの意思をねじ曲げずとも、裏切るようで気が引けたけど、「恋」をくれる人がまた死んでしまうぐらいならと思った。けれど、仲間たちの意思はさらに僕を裏切る。はね飛ばされた筈のナイフは、別の仲間の手によってウターリドの首を引き裂いていた。仲間は言う、「言っただろ、在処を聞いて殺したら報酬が貰えるんだ。在処だけ聞いたら俺たちが怪しまれる。無実なのに。そんなのはごめんだ。だから、悪いな。お前のおかげで俺たちはフリークスから人間になれるんだ」その後、ウターリドの遺体はバラバラにされて、首以外の部分は虎の餌になった。証拠が残ればそれで良いみたいに。縋るように伸ばされた手が妙に記憶づいて、僕はまたこの場所を離れることにした。もう少し慎重になるべきだったな。大人にならないと。本当の僕が小さな体のままだから、心も成長しないのかな? ウターリドはあまり声を荒げなかった。思う感情は沢山あっただろうに。でも彼は、立派な大人だった。あなたはもっと楽に息がしたかっただけなんだろうな。賑やかで、誰もが笑顔になれて、苦労も苦痛も悩みもない人生が送りたかったんだろうな。でもこれは、僕がきっとそう思うだけで、僕はあなたのことを何も分かってあげられない。僕を信じてくれた愛しい、愛しいウターリド。あなたになれば分かるのかな? あなたがもっと息をしやすくなるように、代わりに生きてみようかな? ねえ、代わりの世界でもウターリド、あなたは幸せになれるかな? 僕は彼の美しい名前と風が吹く前の容姿を借りて旅に出ることにした。 旅に出て数十年、僕は代わり映えのしない毎日を送っていた。東西南北様々な場所をウターリドとして渡り歩いて、様々な人と交流を交わしては、誰かから「恋」を与えられる前に去っていく、流浪旅。別に「恋」を与えられるのが怖いわけじゃない。与えられる側としても、慎重になるべきだと思った。僕は今のところ、「恋」を与えてくれた人達に仇しか与えてない。いつも不幸にしていた。その事がきっと無意識は気になっている。そんなある日、またしても星の綺麗な夜だ。冷え込む砂漠の上を走っていたら襤褸布を身に纏う人が倒れているのが目に入った。こんな所で倒れてるなんて! 死んでしまう! そう瞬時に思った僕は慌てて駆け寄った。案の定脱水症状を起こしているみたいだった。その場で小さなテントを開いて僕はその人を助けることにした。澄んだエメラルド・グリーンの海みたいな目の色が印象的だった。その人は僕を訝しむでもなく名前を名乗ってくれた。ブジーアと言うらしい。この時、僕はその名前の意味を知らなかった。ブジーアも、僕と同じように各国へ渡りあるく旅をしていたらしく、その道中で倒れてしまったらしい。にしては、軽装備だなあという印象を僕は受けたけど、言及するのはやめにした。砂漠の夜は異常な程に寒くて、日中は異常な程に暑い。歩けるようになったなら、夜のうちに移動する方が楽なのかも? と、僕が提案すると、ブジーアは「一緒に旅をしてくれないか」と寧ろ提案してきた。突然のことに僕は驚く。その意図を尋ねるけれど、彼は真意を伝えるは無いようだった。とても慎重派のように見えて、僕は少し興味があった。この人の傍で学んでいく上で、僕も大人らしく成れないだろうか、と。それに、まだ僕は人と強い関わりを持つことを望んでいた。ブジーアとの旅はまるで相棒のいる冒険家みたいな旅だった! 景色だけを見るために山を昇ったり、噂の真相を確かめるために洞窟に潜ったり、隣町へ行くためにわざと迂回ルートを通って森の中も探検した。ブジーアは最初こそ堅い印象を受けたけど、数年も経てば肩の力を抜いて哄笑してくれるには、僕に気を許してくれていた。でも、僕に「恋」を与えてくれるひとはいつも、「変化」も持っている事を僕は気づいている。彼と共に車を走らせていたある日、僕たちの前にはきっちりとした服装を身に纏う男たちが現れた。「皇女殿下、国にお戻りください。国は混乱に蝕まれ、貴女の存在が必要です」男がそう言うと、僕は一瞬何を言ったのかよく分からなくてブジーアを見た。ブジーアも僕を見ていた。真剣な表情が僕を射抜く見たいで、呆気に取られていると、ブジーアは突然、いつもみたいに哄笑して、「ウターリド! 逃げよう! 俺たちが生きたいところに!」と言って、ブジーアの方から車のハンドルを握り、男たちをなんの躊躇いもなく撥ね飛ばした。僕はブジーアが女の子だったのにも驚いていたし、高い地位の人間であることにも驚いていた。けれど、あれ死んでないかな……と、男たちが何より心配だった。それから、いくらか車を走らせていると、「ウターリド。君は俺のことを何も聞かないんだな」とブジーアの方から口を開いた。「俺は皇女だ。神の御前、国の象徴として生まれてきた王族の娘だ。お前、何も気にならないのか? 俺の事」視線は前を向いていたけど、僕に向かって強い言及の意思が見て取れた。「……気になるけど、隠していたことなんだろう? それなら僕は君を無理に言及したりなんてしないさ。君の意思なのだから」ブジーアは真面目だった。「俺の国は、国の指揮権を担う貴族らが軍事に力を与え、軍事資金を王族・貴族が出していることにより、内戦・戦争が彼方此方で勃発し混乱が支配している状況だ。特に何も事情を把握出来ていない王族と、切っ掛けとなった貴族は国を守るために資金を続けるし、軍事も国を守るために武力行使を続け、平民を巻き込んでいく。俺はそんな国から辛うじて逃げてきたのだ」ふと、走らせていた車を停めた。それからブジーアは顔は少し俯いて、独り言のように「大切な友人に、逃げさせてもらったのだ。ウターリドとの旅は楽しかったが、時折思い出す。先のように、国の者が俺を引き戻しに来たのも、平民らを圧倒させるためか、王の個人的な意向によるものだろう。俺は、都合よく扱われるのは嫌だった。もう少し、人間らしく生きたい。象徴であるには、あまりにも身体が暖かすぎた」ブジーアは僕の方を見た。「本当は気付かないフリで済めば君もきっと俺の隣にいてくれるのだろうが、君に僅かな可能性という希望を仄めかして、知っていることを言ってもいいだろうか」僕は返事をせずにいると、ウターリドの時のように勝手に話を進めたりはしなかった。彼は、いや、彼女? は、僕の意思を尊重してくれている。やはり、この人もまた、僕に「恋」を与えてくれる人だった! 僕は肯定を告げる。僕はブジーアがなんて言うのか薄々気づいていた。「君は、『魔法使い』なんだろう。俺は、本物の『魔法使い』を見たことがなかったが、普通の人間らと、雰囲気が違うというか、根の根を探られることを本能的に怖がっているように見えて、そう思った」僕は怖がってるつもりはなかった。だから、初めて伝えられて意外性を自覚する。そうか、僕は怖かったんだ。『魔法使い』として認識されて、その後の扱いに。生まれ育ったあの家のように。経験則から繰り返すことを恐れていた。「なあ、ウターリド。君がもし無理だと思うなら、俺が友人を忘れるぐらい楽しい旅を続けよう。君がもし、可能だと思うのなら、友人を助けに俺と共に国へ一緒に戻ってくれないか」本当は、無理だと言ってブジーアと旅を続けたかった。けれど、ブジーアの友人の事を思うと、僕は揺れる。ブジーアにも、「恋」を与えてくれる人がいたなら、その人のために尽くしたいはずだ。その人のことを大事に思うはずだ。与えた友人も、きっとブジーアのことが心配なはずだ。僕の魔法は人を救えるほど強くないだろう。けれど、生まれてこの方、独りで生きてこられたぐらいには、僕は魔法を器用に扱えていた。ブジーアの為に、ブジーアの友人の為に、ブジーアの国のためになれるとしたら、僕の恐怖も克服できないだろうか? 僕は、しばらく迷ったのちに「国へ戻ろう」と言った。揺れていたのはブジーアも一緒だ。戻ったら、ブジーアは自由に生きられないかもしれない。命を落としてしまうかもしれない。けれど、僕に選択を委ねるぐらいには僕のことも、友人の事も大切だったのだ。僕らは、お互いに暫く真剣な表情で見つめあった後、突然くすくすと笑いあって身を寄せあった。「どうにかなるだろうか」「どうにかして見せよう。僕は、『魔法使い』だからね」待遇の恐怖よりも、隣の存在がなにより大切だと思えていた。それから国に戻ってすぐ、混乱の最中と言うのが想像よりも劣悪であることを知った。不衛生で、治安も良くない。遠くでは発砲音や泣き叫ぶ声がずっと聞こえている。そんな中で、ブジーアは僕の手を引いて、友人の家へと向かっていった。ブジーアの友人はそこにはいなかったけれど、ブジーアの友人の姉妹たちがいた。見たところ、男の子はいなかった。「ディーノはどこ?」ブジーアがそう訪ねると、姉妹たちはブジーアに縋るように泣きついて「男手だからって、連れてかれちゃったの!」と言っていた。ブジーアは姉妹たちとそれから何かを話して、慌ただしく僕の手を引いて友人の家を出た。それから軍事基地の方へと進む道中で、ふと後頭部に強い衝撃を感じて、目の前が霞み始めた。慌てたブジーアの表情を初めて女の子みたいだな、って思って、それから僕の意識は途切れた。目を覚ましたら、僕は頭から少し血を流していた。ウターリドとしての姿は解けてなかったから、そこだけは安心した。けれど、傍らにブジーアの姿がないことから、すぐに王族・貴族側に連れてかれてしまったと気づいた。平民らに連れられてしまったらもう少しあたりは騒がしくなるだろうと思ったからだ。喪失感が僕を一瞬襲ったけど、すぐに振り払って僕はブジーアを助けに行くことにした。ブジーアが向かおうとしていた先、軍事基地に僕はいくつかマカロンを携えて、それから器用に魔法を使いながら乗り込んでいく。けれど、僕ひとりで敵うはずも無く、すぐ僕は満身創痍になった。途中、僕は兵士のサーベルを拾ったけど、2人の『恋人』達が目の前で無惨に殺されていくところを見た所為か、僕は抵抗としてひとを斬る事にあまり驚かなかった。殺してしまうのは流石に遠慮した。人間の命は短くて、都合よくないから気をつけないといけない。こんな所で『魔法使い』に奪われてはだめだ。僕はなんだか意識が朦朧としてきていた。なんだか、『魔法使い』と『人間』が綯い交ぜになっていくような……。いくつか潜り込んだ軍事基地の中で、ブジーアはいた。手足と口を拘束されて、牢屋の中にいた。国の象徴であるお姫様だというのに、どうしてこんなに酷いことが出来るんだろう! 僕は慌てて解錠しようとするけど、目の前には軍服を着こなした男が立っていた。鋭い眼光が印象的で、僕を射抜くみたいに視線を向けられている。その手には、サーベルもあった。ああ、ここで死ぬのかな? でも、その前にブジーアだけは……、僕もサーベルを握り直して、ほとんど受け身になりながら魔法を用いて戦うふりをしていた。ブジーアの牢の鍵を開けたんだ。牢屋の扉が開かれると、男は酷くあわてた素振りを見せて、僕の方へ走って、大きくサーベルを振りかぶっていた。僕も、ブジーアさえ助かればよかったから、もう何が何だか分からなくなって、この一撃、当たれば僕は死んでしまうし、上手く与えてしまえば人間の命を奪ってしまうのにも拘わらず、僕も精一杯サーベルを振りかぶって、肉と骨を断ち斬る感覚がして、──目の前には血だらけになったブジーアがいた。僕はなんだかこの時だけ心が死んだみたいになって、驚くことも、慌てることも、怒ることもなかった。ただ、唖然と、呆然とブジーアのことを見ていた。ブジーアは微かに笑っていた。ブジーアの肩口から腹までの大きな切り傷が彼女に致命傷を与えたのだと物語っていたけれど、魔力も肉体も限界の僕にはその判断が出来ない。魔法を使えば助かるかもしれない。なのに、僕は、僕のことだけで精一杯だった。男がブジーアを愛おしげに抱きしめて、ブジーアとは別の名前で、ブジーアの事を呼んでいた。「ディアナ! ディアナ!」その様子を見て、僕はこの人がブジーアを国の外へ逃がしてくれた友人、ディーノなんだと気づいた。もしかしたら、僕はとんでもない勘違いをしてたのかもしれない。もう少し慎重になろう、そう思ったはずなのに……数百年生きても、僕は僕のままだった。それから、大きく施設が揺れだして、僕とディーノは崩落に飲まれて、──ふと気づけば、僕はブジーア、基いディアナとして平民の前に立っていた。ああ、どうしてこうしたんだっけ? もう、何がなんだか分からない。静かに混乱してはいたけれど、それよりも大きな責任を僕は今、感じている。瓦礫の山の上に僕は立っていて、背後にはディーノがいる。ディーノは真剣な眼差しの奥に歓喜の色も見えていた。目の前には、多くの数の平民たち。お粗末なものだけど、みんな武装している。意識を向けていると、平民たちは僕に期待の声を向けていた。「革命を! 革命を!」視界の端で、ディーノがサーベルを掲げたから、僕もサーベルを掲げてみた。平民たちは嬉しそうだった。だから、何もわかってない僕も嬉しかった。同時に僕は思い出す。僕は、ブジーアを殺してしまったことや、ブジーアの友人であるディーノに強い勘違いをしていたことに強い罪悪感を感じていた。ディーノは、ブジーアを守るために僕みたいな見慣れない不審者から引き離して、ほとんど誰も立ち入らない地下牢で隠して護ろうとしてた。僕はそれを王族・貴族に拉致されたのだと勘違いして、わけも分からずディーノに斬り掛かろうとして、ブジーアを殺害した。ブジーアは、なんであの時少しだけ笑ってたんだろう? なにか言おうとしてたのかもしれない。けれど、僕はブジーアの声を聞くことはおろか、僕自身の事だけで精一杯だった。やり直せるなら……、やり直したように見せかけてでもやり直したい。これ以上魔法を使ったら命の危機に障ることは本能的にわかった。それでも、僕は、『恋人』だったウターリドを殺したことにして、ブジーアとして、ディアナとして勇ましい名前と尊い身体を借りて、友人ディーノと共にこの国を救うことにした。それが、ブジーアから迫られた選択の結末だったし、僕にはこれぐらいしか罪滅ぼしが思いつかなかった。巻き込んでしまったウターリドには申し訳ないけど、ブジーアと関わってきた僕は、名前も存在も望まれず、認められなかった僕じゃなくて、僕が借りていたウターリドなんだから、仕方ないよね。僕はもう少し、僕自身のことを考えないようになりたい。もう少し周りを見て歩きたい。僕の身体も暖かいよ。象徴と言うには、あまりにも嫌われた存在かもしれないけれど、仕方ないんだ。ディーノは国の革命派だった。ディアナは国の象徴のひとりだった。だから僕達は国に革命を齎した。平民はほとんど死んじゃったけど、王族・貴族は皆殺しにした。微かに残った平民たちと、ディアナの友人だったディーノを連れて、僕達はこの土地から離れることにした。望まれなかったから認められなかった。認められなかったから反発しあった。それは僕も、この国の人たちも同じだ。新しく住む場所を探して、もう少し隣の人に優しくなれるようになろう。もう、血は見なくても良いようになろう。幸せになろう。新たに一歩歩き出そうとした時、そのさらに先にはディーノがいた。ディーノは、僕のことを真っ直ぐ見つめて、手を差し出してきた。差し出された手は、友好の印だ。僕は深く考えずにその手をとる。それに、僕の知っているディアナならそうしたはずだからだ。ディーノは、「どちらもは選べないんだよ」と言った。僕はなぜそんなことを言われたのか一瞬わからなかった。「ディアナは強欲の女王だ。魔法使いも人間も共存は出来ない。それなのに、どちらも選んだ。君がその名前を姿を借りるのなら、成すべきことは分かるよな」朗らかに笑うくせに、目は据わっていて、なんだか怖かった。僕は流れのままにきっと上手く誤魔化せたんだろう思ってたけど、どうやらディーノは、ちゃんと覚えているみたいだった。ディアナをウターリドとしての僕が殺したこと、本物のディアナは存在しないこと、全部。それでも、ディーノは魔法使いが化けたディアナに「恋」を与えていた。僕はディーノの手を取っていたけれど、ディーノの手を離したい気持ちになって一歩下がろうとすると、ディーノは僕の手を引いて乱暴に口付けた。瞬間、僕には全身に嫌悪がざわめく。そして予感がささやいてきた。どうして、ディアナは本当の名前を僕に伝えなかったのか。どうして、ディアナは男性のように振舞って僕の隣にいたのか。どうして、ディアナはディーノの事を「友人」としか言わなかったのか。どうして、僕に委ねた選択の中に「友人のことを忘れるぐらい楽しい旅を」なんてあったのか。その真意が、全て口付けの中にあった気がして僕は、吐き気すら感じてしまう。ねえ、ディアナ。君が嘘をついてまで人間らしく生きていたかったのは、「性」に囚われたくなかったからだったの? 僕は、ディーノから逃げた。残された平民たちの未来を背負っていたのに、あのままディーノといたらディアナ汚されてしまいそうで、「成すべきこと」の意味を理解したくなくて、僕は逃げた。あれから、僕はディアナが、ブジーアとして振舞って相応の容姿をとって過ごしていた。髪もさっぱり短くしてみたし、少し筋肉も付けてみた。でも男らしくない。どちらつかずで、……でもどちらかというと勇ましいそんな感じがブジーアの本当の姿みたいで僕はこの姿を気に入っていた。今度は嘘をつかなくても良いようにと、ディアナ本来の名前で過ごしてみたけれど、この旅路のどこかでディーノが現れるんじゃないかと常に僕は怯えていた。見つかったら、僕を捕まえるんだろうか。捕まったら、どうなってしまうんだろうか。好奇心が無かったわけじゃないけれど、今の僕には恐怖と嫌悪ばかりが頭の中を支配していた。数十年の流浪の旅路の果てで、僕は霧の都へたどり着いた。この都は日中でもほとんど陽が出てこなくて、よく雨が降る。そんな中で、僕は自警団の人に声をかけられた。注意と言うよりは、ほとんど怒声みたいな声を突然かけられたものだったから、僕は思わず一歩後ずさる。一瞬ディーノに見つかってしまったのかと思ったけれど、そんなことは無かった。曰く、ここのところ、夜な夜な子どもが誘拐される事が多発していて、警備を強めているのだという。この土地の服装でない流浪の僕がいて、もしかしたら犯人かもしれない、と僕に声をかけたのだと。自警団の人は2人組で、うち大声を出した方の警察が申し訳なさそうに頭を下げてきた。「俺は妹が誘拐されて、貴方が真犯人ならと疑ってしまった。かと言って、すぐ信頼に値する訳でもない。それは分かってくれ。ここの所、この都は霧で静まり返っているのに物騒だ。犠牲になるのはいつも子どもだが、気をつけるに越したことはないだろう」誠実そうだけどなんだか関わりにくい人だなと思った。彼は、アレクセイと名乗った。この都が物騒で人が寄って来ないのなら、やっぱり僕が逃げてきたのはここで合ってたらしい! ディーノも流石にこんな所まで追いかけて来ないだろうし、僕はしばらくここに滞在することにした。ある日、僕は付近の森の中を散歩していると、罠に引っかかってしまった。動物を狩るための罠だ。足を怪我して動けずにいる僕。僕自身もこの時気づいていなかった。僕はあの時からまるで人間のように自分自身を錯覚している。時折思い出しては魔法を使ったりしたけれど、ディアナの姿を借りるようになってからはほとんど魔法の存在すら忘れていた。相当僕は都合よく出来てるらしい。刃が食い込み、このまま死ぬのかな等と考えていると、そこへ老人がやってきた。白い髪と髭が頭部を殆ど覆っていて、まるでサンタクロースみたいだな、と思った。彼は、アンドレイと名乗った。勇ましい、とか。神聖な人物の名前が由来になってるんだって。森の中へ不用心に踏み入れた僕を訝しむこと無く、アンドレイは罠を外して手当までしてくれた! アンドレイは医者をしていて、病弱でほとんど寝たきりの孫息子がいるらしい。寝ているから、と、僕は会うことすら叶わなかったけれど、アンドレイが孫息子を心配する様子を見ていて、僕はこの人から「恋」を与えられたら幸せなんだろうなと思った。それから僕はアンドレイの元で過ごしては、次第に助手じみたことをさせて貰えるようになっていった。そのお陰で医術への知識も伸びしろを見せ始めて、僕は都に出ては薬を売って、時折処置もするようになった。誰かに「先生」と呼んでもらえるのはとても嬉しかったし、誰かにためになる事がなにより幸せだった。アンドレイは数年経っても姿の見せない孫息子に「恋」を与え続けている。僕はその対象が自分自身じゃないことが新鮮だったけれど、僕はそんなアンドレイの事が好きだった。ある日、僕は久しくあの自警団の2人に声をかけられた。「森に最近出入りしているだろう。アンドレイという老人を知っているか?」なにか訝しげに聞くものだから、僕は素直に答えるよりも前に「どうして?」と、逆に尋ねた。「元よりただ『怪しい』からというだけで被疑者のひとりではあったんだか、最近君が森に出入りをしていて、都で薬を売っているのを見たという人がいたから」と、アレクセイは素直に答えてくれた。僕は、アンドレイが被疑者だと言うのも信じたくなかったし、少し嫌だった。けれど、アレクセイは誠実派だ。嘘をついているかもしれないけれど、その声色は悪意が無くて、落ち着いて判断をしようとしているように見えて、嘘をつくのも隠し事をするのも失礼なんじゃないかと思った。「俺は、アンドレイを知ってる。彼の手伝いをして都に薬を売って、今は医者になるために勉強してるだけです。それ以上のことは何も知りません」それが全てではないけれど、なるべく僕は嘘をつかないようにした。アレクセイは何か考えるような素振りを見せたあと、そうか、とため息を吐いた。「俺に、なにか手伝えることはありますか?」僕はアレクセイの様子を見てつい、そう言ってしまう。ディアナなら、きっとそうすると思ったからだ。「それなら、アンドレイの動向を見守っててくれないか。夜な夜な出歩いて無いかとか、不審なことをしていないか、とか。君なら距離が近いだろうし訝しまれる事も少ないだろう。だが、もし彼に勘づかれて詰め寄られたとしても俺達のことは彼に伝えないこと。そして、君自身になにか危険が訪れたなら、俺達を頼ること。俺は、君が誠実な人だと信じている」もしかして、この都で僕に「恋」を与えてくれるのはアレクセイだったかもしれない? 僕はそんな事ばかり気になって、自警団のスパイとして、僕を救ってくれた恩人に、仇を持ってかもしれないことはあまり気にしてなかった。あれだけディアナとの旅路で、「恋」を与えられて「不幸」を与えていた事を気にかけていた僕が? 僕は、都合がいい。よく出来ていると思う。薄情かもしれない。それから僕はアンドレイの動向をもう少し細かく見たり、僕自身が都で売っている薬についてももう少し深く調べたりしてみた。アンドレイは普段、薬を作っているか、僕に医術を教えてくれているか、孫息子に付きっきりのことが多い。それ以外は眠っているか、食事を摂っているだけだった。一方で、僕が都で売っていた薬は、基本的には滋養強壮剤のようで、それ以外は解熱鎮痛剤・抗炎症剤・降圧剤・昇圧剤などで不審なものはなかった。僕は薬を売っていた人達の名前を名簿にメモして、その人たちの症状を書き留めたらアンドレイに伝えて、薬を変えたり継続したりと、行っていた。でも、もしアンドレイがこの名簿を見てなにかの基準で子どもたちを襲っていたら、アンドレイが犯人である確率が格段に上がる。僕の身に何かがあった訳じゃないけれど、僕はアレクセイに頼ることにした。アレクセイに名簿を見てもらうと、被害者になった子どもたちの名前が名簿の中にあった。それはひとりやふたりではなく、ここ最近起きた事件の被害者の分は全員。傾向としては、虚弱気味だった子ども達が滋養強壮剤で元気になってきたところ、被害者として誘拐されているみたいだった。でも、どうして元気な子どもを攫うんだろう? 弱っていたところを攫った方が良いんじゃないか、僕はそう思った。アレクセイからは「もう少し動向を見てあげて欲しい。危険だと思ったらすぐやめて、俺たちを頼って欲しい」そう、言われた。その日の夜、僕は疲れ果ててあまり夕飯を食べることも出来ず眠りについてしまった。夕食を用意してくれたアンドレイには申し訳なかったけれど、僕は慣れない捜査に精神的に疲労が溜まっていた。相手にバレないように詮索をするのは初めてだったし、僕は隠し事が下手だった。でも、その日ありつかなかった夕食が僕に機会を与えてきた。僕はその夜、アンドレイが家から出ていく音で目を覚ました。こんな夜更けにどこへ行くんだろう? とてつもない眠気で純粋な疑問しか最初は上がらなかったけれど、それから直ぐにアレクセイから与えられた役目を思い出して、僕は寝巻きにローブだけ羽織ってアンドレイの後をついて行くことにした。アンドレイはなんだかいつもよりも着込んでいて、傍から見たら顔も見えなくてなんだか不審だった。アンドレイは都の方まで歩いていくと、ある家の前で止まった。それは、僕が薬を届けていた家のひとつだ。低血圧でチアノーゼに悩まされてた女の子がいる。アンドレイは窓辺に近づいていくと、窓をノックして子どもを呼び出した。子どもは最初眠そうな顔をしていたけれど、アンドレイから何か囁かれると嬉しそうな顔をして、玄関の扉を開けた。それから、アンドレイと手を繋いで、寂れた都の中を歩いてついて行く。僕はアンドレイの後を追った。袋小路になっている路地裏の中に入ると、子どもが不安そうな声を漏らしていた。僕はアンドレイが子供になにかするんじゃないかと慌てて追って、声をかけた。「何をしてるんです、アンドレイ!」アンドレイは僕の顔を見て「どうして」と、呟いていた気がしたけれど、僕の大きな声を聞いて都の人が何人か目を覚ましてしまった。アンドレイの手には使い古された肉切り包丁があって、子どもを押し飛ばしたかと思えば僕の事なんか構うことなく路地裏から飛び出した。僕はそれがただごとだとは思えなくて、その行動がアンドレイを苦しめることになると知らず更に大きな声でアレクセイの名前を呼んで、アンドレイの後を追った。静まり返った都では僕の声がよく響く。アレクセイはこんな夜でも警備を続けていた。アレクセイは仲間の自警団に声をかけるとすぐ僕と合流した。アンドレイは相当慌てていたのか、また別の袋小路の中へと迷い込んでしまい、僕と、アレクセイに逃げ道を塞がれてしまった。アレクセイが強い一言をアンドレイに向ける。「アンドレイ・スヴォリノフ・アシモフ! 貴様には誘拐の容疑がかけられている! 子ども達を何処へやった!」アンドレイは、今まで見たこともないぐらい情けない声で、僕の方を見て「だからあまり夕食を食べなかったのか」と尋ねてきた。アレクセイは自分の問いかけに腹を立てて、拳銃をアンドレイの方へ向けていたけれど、僕は尋ねられた意味を理解してしまって、アンドレイへの罪悪感で苛まれていた。子どもたちを攫う日には、僕の夕食に強い睡眠薬が混ぜられていたのだ。僕が夜に目を覚ましたらバレてしまうから。邪魔だっただろうに、それでも僕を追い出さなかったのは、理由があったとしたら? 僕は、アンドレイの事が好きだった。僕は、「恋」を与えられるならアレクセイじゃなくて、アンドレイがいいと思ってた。僕は期待していた。アンドレイにとって、僕が「恋」を与えるに値する人間になれたらと。僕はアレクセイの事なんて忘れて、アンドレイの方へ寄っていった。彼の手には肉切り包丁が握られていたけれど、そのことも気にせず僕は、彼を抱きしめた。「アンドレイ、アンドレイ。ごめんなさい、ごめんなさい。お願い、話して。姿を見せない孫息子の事を、誘拐された子どもたちの行方を」願うように僕はそれから、アンドレイの両手を取った。アンドレイの濁った目からは、透明な涙が垂れていた。「事実を知ったら、君は家から出て行ってしまうだろう」アンドレイはそう言うと、取られていた手を逆に握り返してきた。「君は、私が大事に育てた息子によく似ている。嫁に先立たれ、子どもを連れてきた愚かなバカ息子によく似ている」「けれど、お前の息子は……」そこで、破裂音のようなものが聞こえたかと思えば、アンドレイは苦しみ出した。見れば、アンドレイのお腹には血が滲んでいた。僕は慌てて、アレクセイを見た。アレクセイの持つ拳銃からは煙が出ていて、僕はそれでアンドレイは撃たれたのだと気付いた。アンドレイが、まるで助けて欲しいと言わんばかりに僕の腕を掴んでいる。僕は、ウターリドのことを一瞬思い出した。無意識は、アンドレイと僕を連れてアンドレイの家へと飛ばした。アレクセイの前で、魔法を使ってしまった。アンドレイは家に着くとぐったりしていて辛そうにしていた。弾を取り出さなくちゃいけないけれど、僕は切開までの観血的処置をした事がなかった。けれど、彼は高齢だ。体力もあまりない。やらなきゃアンドレイの命に関わる。だから僕は、意を決してやることにした。医療器具がどこにあるのか分からなくて、彼方此方を見て回ったけれど、ひとつだけ見ていない部屋があった。それは、病気の孫息子がいる部屋だ。いつもはアンドレイが面倒を見に入って、僕は顔を見る事さえ叶わなかった部屋。ただ少し、医療器具があるかどうか確認するだけだからと、僕はその部屋の扉に手を掛ける。けれど、無意識はきっとそこには真実があるから見ちゃいけないと分かっていた。扉の先には、ベッドがひとつと、赤子を可愛がるような玩具がいくつも転がっていた。生活感は無く、ただの遊戯室だと言えばしっくりくるような、そんな部屋だ。その部屋の中央、ベッドの上に孫息子はいた。赤黒い内蔵のクッションの上には、贈り物のクッキーを丁寧に来るんだかのようなガーゼの上で、小さく鎮座して、息をしていなかった──胎児の遺体。臍の緒がほとんど残っていて、出産すらしていなかったのでは、と思った。視界の端には、子どもたちの皮が折りたたまれ、積まれている。流石にこんな事、想定していなくて僕は硬直する。アンドレイが可愛がっていた、「恋」を与えていた病弱な孫息子は、生まれる前に亡くなった胎児の遺体だったのだから。僕が真実を目の当たりにして硬直していると、その気配に気付いたのが後ろから、アンドレイは僕の肩に手を掛けて、「孫息子には、会わせられないんだと言っただろうに」と言った。「ディアナ、君は女性だが、やはりバカ息子によく似ている。聡明な所も、妙な事に狂いがちなところも」「……アンドレイ、あなたはどうして子どもたちを殺していたんです」僕は驚いていたけれど言及は出来た。アンドレイは諦めたように目を伏せ、口元にほんの少しの笑みを浮かべた。「同物同治というのを知っているかな。東洋に伝わる言葉でね、例えば、肝臓が悪ければ、健康な肝臓を持った動物から頂いて治すというもので、私は信じていたんだよ」僕は静かに息を飲む。「バカ息子が連れてきた時には孫息子は亡くなっていてね、君と同じように医術を教えていたが、どうしようもない事実を前に狂ってしまって、奇跡を信じることにしていたようだ。雨の日、突然訪れたかと思えば、助けて欲しい、助けて欲しいと、私の元へ縋ってきた。滑落事故で母親は既に絶命していて、赤子だけでもと、取り出すような愚か者だ。私はどうすればいいのか分からなかった。供養の為にと貸した部屋がここだが、翌日埋葬しようと私が言うと、バカ息子は首を吊って死んでいた」僕は何も言うことか出来ない。「私も狂えたのならまだ幸せだったのかもしれない。けれど、君を助けて家に招いた時、本当は君に真実を暴いて欲しかったのかもしれない。君は賢く、聡明だ。だからこそ、あの時魔法を使ったのは愚かだ。自警団は被疑者である私を魔法使いだと疑うだろう。君はその流れに任せて逃げるんだ。この、都を蔓延る霧が手の届かないところまでずっと遠くへ」アンドレイがそういうのと同時に、家の玄関が乱暴に開かれる音がして、そのまま僕は何も出来ずに立ち尽くした。アンドレイは外へ引きずり出される。「サバトに使う為に子どもたちを殺したのだろう! 魔法使いめ! 道理で人道外れた医術を嗜んでいると思っていたのだ! 森の中に住んでいたのも悪魔と会話をするためだろう! 魔法使いめ! 魔法使いめ! 魔法使いめ! ────射殺しろ!!!」乱暴に吐き出される言葉の数々、射殺と聞いて、僕はようやく外に引きずり出されたアンドレイの姿を見た。そして、対面するようにアレクセイと、アレクセイ率いる自警団の人たちの姿が見える。アレクセイは怒りで顔が真っ赤になっていて、それが夜の森の暗がりでも、月明かりでよく見えた。霧がかっていた都は、少しづつ晴れて、逆に人々の心に逃げていく。アレクセイが誰よりも先に引き金を引いて、それから追い打ちをかけるように他の人たちも引き金を引く。アンドレイの最期の表情は、僕に肩に手をかけて口元だけで微笑む諦めたよう表情だった。僕は、真実を暴いてしまったけれど、事実は人々に勘違いされてしまった。アンドレイは、僕が魔法使いであると糾弾されない為に、「恋」を与えてくれた。ようやく、僕の方を見てくれた。嬉しかったのに、悲しかった。なのに、僕は涙が出なかった。いつだってそうだ。悲しくて泣いたことはまだない。僕は、薄情だ。アレクセイが、僕の姿を見て感謝の言葉を掛けてくる。けれど、彼のことはどうでもよかった。優しい彼だけど、アレクセイが「恋」を与えていたのは、アレクセイ自身だと思った。「アレクセイ、君はアンドレイが死んでしまって、殺してしまって、どう思う?」「そりゃ、嬉しいよ。人間でないものを排除できたし、アンドレイの手に掛けられた子どもたちに報いることが出来た。両親らの悲しみも少しは和らぐはずだ。俺だって嬉しいよ。妹もきっと喜んでいると思う。俺は正しいことをした」ほら、君はそうやって爽やかにわらうけれど、与えている「恋」の対象は自分自身じゃないか。アレクセイが今まで見た事ないぐらいやさしく朗らかな笑みで、僕の両手を包み込んでくる。それから、僕はアレクセイがなんて言っているのかわからなかった。何か、何かを僕に求めていた気がするけれど、僕はアレクセイを拒絶した。アレクセイは、悲しそうな顔をしたけれど、納得してくれたみたいで良かった。朝日が登ったら、アンドレイの言った通りこの都からずっと遠いところに行こう。今度は、どんな旅をしようかな。アンドレイの姿を借りて過ごすには、この事件は大きそうだし……、ああ、でも、それならディアナの姿を借りていることだって問題か。なら、特に気にするでもないのかな。でも、僕は初めて「恋」を与えてくれた人に対して、姿を借りることへの抵抗を感じた。アンドレイ、あなたがもし、あなたの行動で孫息子が生き返ったとして、あなたはそれで幸せになれたの? あなたが、僕の代わりに魔法使いとして死んだとして、あなたはそれで満足だったの? 僕は、数百年ぶりに変身魔法を解くことにした。アンドレイ、あなたは天国で息子さんと、孫息子と幸せに暮らして、奪っていった命に謝るべきだ。それまでは、あなたの姿を借りるつもりは無い。
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