タグ： 海枯れHO１

オペラ一家の三女。 父は元オペラ歌手であり現在はオペラ劇作家。 母は現役のオペラ歌手。 長女はオペラ劇監督。 次女は母と共にオペラ歌手。 弟はオペラ歌手と劇衣装デザイナー。 そんな家庭に生まれた渚も当然オペラに関わる仕事を望まれていた。 だが、渚にはオペラに関することに才能がまったくなかった。 なにより、音感と感受性がなかったことにより、オペラに関することは何をしても悲惨な結果となった。 その事に両親は落胆し、長女は渚の事を居ないものとし、次女は気に掛けてはくれるが味方にはならず、弟は渚の事を見下している。 才能がない事がわかるまでは、優しく仲の良い家族であったため、余計に家族の自身への態度が段々と変化していくのが悲しかった。 そのため、幼い頃は明るく活発であった渚だが、中学を卒業の頃には淡白で人を寄せつけない性格となっていた。 家族は世間体を気にして、他人の目がある場所では仲が良く渚の好きなように生きていく事を応援する暖かい家族を演じている。 そして、渚の才能の無さを露呈させないため、高校と大学はオペラが少しでも関わりある場所を避けさせられた。 家族との関係が拗れていくなか、人の顔色を伺う癖が出来てしまい心理学が無意識に多少ある。 精神分析は不安定な状態になる自分を自分でどうにか出来ないかと、色々試すうちに自身で自分を落ち着かせることなど出来ないと分かり、さらに落ち込む。 そんな中、高校の修学旅行中に立ち寄ったお土産屋で美しい彫刻が施された根付けを見つけ、自己防衛の為に動くことのなかった心が強烈に惹かれた。 高校卒業後、それを忘れることが出来ず大学在学中に根付けの製作者である木彫り師を探し出し弟子入りをする。 彫刻刀を持つ事を許されてからは、手や腕に生傷が絶えず自然と応急手当を身につけた。 大学卒業後(22歳)は師の元に身を寄せていたが、29歳の時に独り立ちし都内で小さな工房を持つ。 一年後、工房立ち上げ頃に知り合い友人となった女性が、販売スペースを作るべきだと説得しさらに売り子にもなってくれた。 家族と関係が拗れてから彫刻の師とこの友人だけが唯一信頼できる相手となっていた。 だが半年前、師(67歳)が病に倒れそのまま帰らぬ人となる。 師の工房は師の友人である事業家が買い取り管理することになった。 渚が譲られたのは、師が使っていた彫刻刀セット(基本の７本)のみだ。 尊敬していた師を亡くしたことの喪失感に打ちひしがれ、葬儀や工房の今後の話し合いなどを終わらし自身の工房に帰った渚を待ち受けていたのは、自身の工房の焼失だった。 夜に帰宅した渚の目の前で、自宅兼用である工房が近隣の家屋と一緒に轟々と燃えることに呆然とするが、シェアハウスをしていた友人の姿が集まる人々の中に見つけられないことに気づく。 信じられない気持ちの中、消火が終われば工房の住居部、友人の寝室から死体が見つかる。 火元は、近隣のアパートゴミ捨て場への放火。 短期間で唯一信頼していた師と友人を喪い、その日から渚は生きる気力を失い、二人の元へ逝く方法を探し試し今日も生き残ってしまっている。 友人の私物は全てあの火災で燃えてしまったため、渚が持ち歩くものは師の彫刻刀セットのみである。 この彫刻刀は、尊敬する師の唯一の遺品なため、何があっても自身の自殺道具には使う気はない。 また、他人を傷つけることに使う気も一切ない。 自傷行為の痕として、首元には切り傷痕が残っており、左胸には刺し傷痕が残っている。 「海も枯れるまで」22.3.20通過 END3 不定の狂気：心因性視覚障害 4ヶ月 ふくよかな子供、海藻や苔、魚(切り身は可)が見え難かったり見えなかったりする。

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