タグ： 刻の牢獄

　中学生の頃、いじめでクラスメイトを殺したことがある。 　いじめる側の中心にいたわけではないが、中心人物とは仲が良く、死んだ子と私はほとんど接点がなかった。 　いけないこととはわかっていたけど、仲の良い友達に嫌われるのが怖くて、間違ってると言えず、逆に同調するような態度をとったことがあった。 　私が殺したのも同然と、そう苛む気持ちもあるけど、どこか頭の片隅であの子ほど積極的にいじめてたわけでもないと、言い逃れをする自分がいる。 　醜い醜い醜い。自分が嫌いだ。 　あれから10年以上経ち、社会人になって人並みに生きてはいるけど、罪悪感すらもちゃんと抱くことのできない社会不適合者であることが知られたらと、ひどく不安になる時がある。 　仲の良かったその友人は、事件後に転校してしまってから会ってない。まだ携帯を持っていなくて当たり前の時代だったから、連絡先も知らない。向こうは私の住所を知っているはずだけど、きっと連絡してくることもないと思う。と言うか、連絡してこないことに正直ほっとしている。 　亡くなった子のお墓参りには、行けていない。そもそも場所を知らない。当時の担任に聞けばわかるんだろうけど、先生から送られてきた年賀状の住所に、今も住んでいるとは限らない。教師は異動の多い職業だし、きっともう引っ越してるに違いない。先生の住所はアパートだったから、ある程度お金が貯まって引っ越したって可能性も高いはずだから。 　私だって、十年もしたら、今のマンションを離れると思う。離れるのかな……結婚とか恋人と同棲とか、そういう理由だったら引っ越すとは思うけど、そこまで話が進んだ相手はいない。 　恋愛はうまくいかない。「いつまでも遠慮がみえる」とか「心を開いてくれない」って感じのことを言われて、別れを告げられる。きっと私が私を恐れてるからだろうなぁ 　まあ、別にいいかなって思う。恋人がいなくても日常は楽しいから。アニメという共通の趣味を持つ同僚と毎週のようにいろんなところに出かけてる。込み入った話をしなくていい関係が一番安心できる。 　踏み込まれたら後悔を思い出してしまうから、忘れたままでいるために、誰にも踏み込んでほしくない。

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