タグ： 追悼にはららく花

恵まれない家庭の出自だった。 父親は金遣いがわるく、母親はそんな父を捨てて家を出ていった。 父親と二人で暮らす生活はまだ幼い彼女に心の壁を築かせてしまうほど、ひどいものだった。 思春期になるとそんな家庭に嫌気がさし、家出を繰り返していくようになる。 夜道を行き場もなくふらふらしていたとき偶然あきらと出会い、以降自身と境遇の近い彼女は心の拠り所となった。 「憎いのなら殺してしまえばいい」 それは冗談なのかもしれない、それでもあきらが何気なく放ったひとことは彼女の中の何かを変える。 父親からの暴力に耐えられなくなったある日、彼女は突如オーヴァードに覚醒。 父親と自身の家を含めた、周囲のあらゆるものを燃やしてしまう。 その時彼女は悪魔になった、だれも助けてくれないし誰にも許されないことをした。 そんな彼女の手を引いて一緒に遠くに逃げてくれたのがあきらだった。 彼女はもう1人の家族みたいな存在であり、親友になろうが恋人になろうが昔と関係性が変わることは無い。 2人でひとつのような存在。どちらかといえば姉妹に近い。 そんな人物が殺された。 『渇望のフロス』という人物によって。 正直彼のことはよくわからない、生い立ちも、戦った事情も何も分からない。 話し合えば何かわかりあえることがあるのかもしれない。もしかしたらあきらが悪かったのかもしれない。 復讐だとかかたき討ちは何の意味もないと豪語する人物がいるのかもしれない。 それでも殺しはよくないときれいごとを押し付ける人もいるだろう。 それでも憎いから殺すのだ、もうそれしか生きる理由が残ってない。 それほどあきらは自分の中の全てだったということ。 生きていれば心の穴を埋めてくれるようなそれ以上のものが見つかるのかもしれないが、彼女はそれ以外のものを見つける気もないし、空いた心を塞ぐ気もない。 何も無いから、どんなことでもできる気がする。 「誰かを助けるのに喜びを感じる人がいるように誰かを殺して喜びを感じるような人がいる。 お前が私を異常だと思うのなら、私は私を否定するお前を異常だと思ってしまうんだよ。 そもそも私を止める権利がお前にあるのかどうか…」 基本的に特定の誰かが嫌いと言うよりかは、人間が嫌い。 すべての物事を自分の都合のいい方向にしか解釈できない人間らしい部分みたいなものが嫌いなだけであって。 表向き誰かを恨むようなことはしない。 復讐にすべてをささげる自分が、一番それに当てはまってるわけなんだけど。

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