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物心ついた頃には既に戦災孤児だった。 特に何かができたわけではなく、荷物運びや戦場跡での味方の埋葬などをただただ行っていた。 そのまま兵士となり、様々な戦場へと赴いた。ニューヘヴン島やクロドヴァの内乱にも忠夫は存在していた。 そのクロドヴァで師とも言える隊長と出会い、今の戦い方を教わった。 そして日々を過ごしていく中で一つの出来事が起きた。 大規模な飢饉に陥っていた年。村の警邏中、一人の村娘から一杯のスープを恵まれる。 生まれて初めて受けた自分よりも苦しいはずの相手から差し出されたもの。 ただただ涙が溢れ、理由は忠夫には自覚できなかった。 苦しい時でも支え合える誰かがいるという、至極当たり前のことを、生まれて初めて感じたのだ。 あくる日、何かお返しができないかと考えているとアレはその村にやってきた。 そして運悪く、その日は隊長たちが別任務でいなかった。 おとぎ話の存在であろうそれは言った。 「貢物を我が巣へと持って来るがよい。それが貴様らに許される唯一無二の生存への道だ」 貢物には娘が選ばれた。 それに待ったを掛けたのが忠夫だった。 「自分がアレと話してくる」 ただの少年兵に一体何ができるというのか。むやみにアレを怒らせるだけだと村の者は反対した。 だが忠夫は一人で巣へと赴いた。 そんな馬鹿な行為にソレは笑い、称え――咆哮を上げた。 「ただの小僧に何ができるか」 その小僧はソレに挑み、大怪我を負いながらも見事に帰還を果たした。 その時に何があったのかは忠夫もあまり覚えていない。 だがアレが向けた眼光と最後の言葉は覚えている。 「我が理において汝に呪いあれ。我が巣より生還せし者に■■■■の名において、死すら生温き、試練を課さん」 以降忠夫はオーヴァードへと覚醒した。 オーヴァードとなってもその怪我は酷く、半年の療養帰還を必要にした。その間切っ掛けとなった村娘は必死に世話を焼いた。 忠夫が巣に挑んだ狂った理由を聞きだした隊長はそれを決して村人に言うなと口止めした。しかし彼女だけは察していた。 村にそれ以降ソレが来ることはなかったが、忠夫がいればまたいつ来るかわからない。 こっそりと村を旅立つ忠夫は感づいた隊長にだけ見送られ旅立った。 その際に隊長の紹介でUGN日本支部支部長の霧谷への推薦状を渡され、UGNに籍を置くこととなった。 苗字を持っていなかったが、日本へ行く際に必要だと隊長が付けてくれた。

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