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花、特に心臓周辺に咲いた赤色の花を人に見られたくない。《隠す》 シャツを着てケープを付けてる。胸に咲いた大輪の薔薇がケープを持ち上げて胸があるように見える。 髪がとても長いがこれは生まれつき髪の伸びが早い体質なだけ。 女性に間違われることが嫌い。 「綺麗だね」と言われることも、嘲りや好奇の色が含まれている場合が殆どであるため好きではない。 故にこそ本心から言われた（と、少なくとも彼はそう感じた）「綺麗だ」という言葉に救われている。 発症して間もない頃、花を疎ましく思い除草剤を飲んだことがある。 シンプルに失敗し、命に別状はなかったものの今も多少の後遺症が残っている。 自分の病状を改善あるいは抑制する術はないかと、医学・薬学・植物学関連の本を読み漁っている。《図書館》《医学》《生物学》《薬学》 また、自身の精神状態をいくらかコントロールするための術を習得しようとしている。《精神分析》 Nero Fiorenzi （金曜日までは、その日あったこと、感じたこと、思ったことを書き留めている） 土曜日　天気；晴れ 　ケイトとネロが死んだ。昨日まで普通に話してた奴がいとも簡単に死んでしまうというのは、やっぱり受け入れがたいと感じる。でも、きっと幸せだったのだろうと思う。それに、二人で死ねたことが、羨ましいと、思ってしまった。 　兎を1匹殺した。 　ケイトとネロを弔った後、俺は倒れてしまったらしい。気付いたら診察室のソファーに座っていて、近くに白衣の先生がいた。先生が言うには、このままじゃ明日過ごせるくらいの命しかないらしい。それでも生きたいなら、人間の命を奪えばいいって。 （土曜日の出来事が綴られている） 　明日を終えたら、死ぬことにした。 　やっぱり俺は殺せない。なら、俺の知るシオンに看取られて死にたい。明日が過ぎても長らえてるかもしれないけど。それなら明日が終わったら一緒に死のうって言った。 　シオンの死に場所も、時間も、方法も、シオン自身が決めるべきだったのに。やっぱり俺は、あいつに甘えている。 父さんと母さんへ 　先に死んでごめんなさい。俺のせいで辛い思いさせたのに、何も返せなくてごめんなさい。 　それでも振り返ってみれば、案外悪くない人生だったのかもしれない。少なくとも、ふたりの子供として生まれてきてよかったって思ってる。 　ありがとう。 リィとペネロペたちへ 　昨日の今日で悪いな。特にリィは嫌だって思うんだろうな。でも、俺はそれを嬉しく感じてしまうんだ。 　俺に関しては儀式はいらない。何かしたいなら、温室かどこかから適当に花を摘んで手向けでもしてくれたらいい。 　言うまでもないことだろうが、仲良くやれよ。肉とお菓子ばっか食べんなよ。（以下、ふたりとの思い出とふたりへのコメントが綴られている） 　あなたの信じるものが、あなたに微笑んでくれますように。 ・ ・ ・ シオンへ 　遠い昔のお前に、今ここにいるお前に、感謝を。 　どうか覚えていて。ネロ・フィオレンツィという人間が、確かにこの世界で生きていたことを。シオンという掛け替えのない友人が隣にいたことを。ときどきでいいから、思い出して。 日曜日　天気：晴れ 　やっぱり今日死ぬみたいだ。思うように体が動かせない。字は得意なほうだったのに、まるで子供の落書きみたいだ。 　今日はテラスで朝飯を食べた。シオンが先生に診てもらってる間、ペネロペたちと一緒に花冠を作った。本当はレタスはいたずら心で沢山ちぎった。みんなでもみくちゃになって、この時間をこれからも過ごせたらよかったのにって思った。 　俺はもっと生きていたいみたいだ。もう、シオンやリィやペネロペたちと、同じ景色を見られないことは、同じ匂いを嗅げないことは、同じ音を聴けないことが、残念で、悔しい。 　でも、俺は おれは、この人生が、しあわせな物語だったと、思う あなたが私をきれいと言ってくれたから。このせかいで生きるのも幸福だとおもえたのです

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