タグ： 初恋性ストックホルム症候群KPC

一人称「僕」二人称「君」PCに対して「～ちゃん」 何処にでもいるような平凡でおとなしい男性。 夢や目標もこれといったものがなく、親や社会の常識という線路の上をボンヤリと歩き続けるのだろうと流れに身を任せて生きていた。 友達も家族もそれなりで、自分の生活に不便さはあまり感じたことはなかった。 ただ、毎日同じように生活のルーティーンをこなして生きていることに不満はないが歳を重ねて大人が近づくたびに疑問は感じ始めていた。 そんな時、一人の少女と出会う。 学校の図書室、熱心に天体の本を借りていく明るい女の子だ。 彼女はとても明るく周囲にいつも誰かがいた。クラスも違うから話したことなんてなかったけど、彼女が読みたい本がないかと尋ねてきたのだ。 生憎その本は学校の図書館にはなく、調べてみると街の大きな図書館にならありそうだとわかり、成り行きで案内のつもりで後日二人で図書館に行くこととなった。 星や月、生きていて手の届かない、ましてや日々の暮らしに直接的に関わらないそれらに興味はなかったが、彼女の熱心な夢と純粋な願いと祈りの美しさに惹かれていつしか自分も虜になっていく。 その虜になった理由が、彼女の語る言葉だけでなく彼女自身の存在を好きになったからだと気が付いたのはいつだったか。 自分の気持ちに気が付いてからのその後は、余談になるので詳細は省くがとても苦労した。 彼女の夢が自分の夢になり、彼女の存在がいつしかこの世界でもっとも愛おしく大切なものであるかを知った。 決められた歩きやすい道を外れて歩くことがどれだけ大変なのか、そしてその苦悩の先で得るものがどれだけ喜ばしいことかを知った。 たくさんの初めてと幸せと、そして自分の抱えていた疑問に答えをくれたのは彼女だ。 誰にも譲りたくないものが出来たのは、人生でこれが初めてで最後だ。 指輪を用意し、愛を伝える言葉をひたすらに準備し、念入りに彼女に想いを伝える練習を重ねたが、実際は練習通りにプロポーズなんて出来ていない。 それでも彼女は、自分と共にいてくれることを嬉しいと言ってくれた。 幸せだった。二人の指についたお揃いの指輪がまるで星みたいに毎日キラキラ輝いていることが嬉しかった。 …しかし、幸せは長くは続かなかった。 彼女の夢はあっけなくなくなった。 彼女の夢は、自分の夢は、彼女がいるから叶うものだ。自分だけでは意味がない。 だから、もう一度。 君という月を目指して旅をする。 君が行きたかった月には一人じゃいけないから、 君という月を迎えにいく。

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