タグ： 片鱗

兄がいたころはまだ家でも笑えていたが、そんなことはなくなった。最悪な家庭環境の中でただ一人自分に温かさをくれる存在であった兄だけが尊敬できる人。自分より体の弱い兄にバレーをする姿を初めて褒めてもらったときのことを昨日のことのように思い出す。兄の自分にみせるあの笑顔が恋しい。でもそんな兄だからこそ、こんな家早く離れて楽しく何も不自由なく過ごしてほしいと思っていた。兄ちゃん、俺、頑張ってるよ。 高校の途中まで選手として活躍していたが、クラスメイトからのいじめや家庭内でのごたごたに巻き込まれ傷やケガが絶えないのと精神的な疲れによりマネージャーとなる。唯一の生きがいだった部活でのバレーさえ奪われ、もうどうとでもなれと思っている。疲れた。でもバレーは嫌いになれず、部員の姿を見ていると一緒にやりたくてうずうずする。そんな思いをかき消すように今没頭しているのは朝のランニング。どうせうるさくて早く起きるし、体力落ちたら嫌だしという理由で始めたが、走りながら見る景色や誰にも邪魔されない感じが好きで現在の趣味となっている。けがの手当ては自分がよく必要なのとマネージャーの仕事として嫌でもうまくなった。 小さいころからうすうす感じていたほかの家との差。両親と手をつないで楽しそうに歩く子供がうらやましかった。 こいつらが家族？ばかばかしい。俺には兄ちゃんだけで十分だ。依存症だの病気だの知ったこっちゃねえ。いつも自分のことで精一杯なお前らにされてきた仕打ち、俺は一生忘れない。 クラスメイトのいじめについては何が原因でいじめられているのかなんて、とっくの昔に考えるのをやめた。だってあの顔、楽しんでる顔だろ。理由なんてきっとそんな大したことじゃない。面白いからやってる。ただそれだけ。俺は玩具じゃねえのにな。 名前は副腎とストレスホルモンのコルチゾールから… ロスト。お姉さん…ありがとう。すきだよこれからも。覚えてないんだけどね。うわあああああああああ

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