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27歳/臨床心理士 両親がいる。弟がいる。祖父母がいる。 両親は厳しかった。しかしテストでいい点を取ればおこづかいがもらえたりする普通の親。ただ成績が悪い時に殴ることがなければ本当に普通の親だった。 弟は将来有望だった。自分よりも4歳下のサッカー部、人当たりがよくって運動神経がいい、モテる典型的な少年。ただ兄よりも優秀だった。 祖父母は穏やかだった。両親の家事を手伝ったりのんびりとお菓子を作ったりしていた。ただ家の事に無関心だった。 空嗣は凡才だった。ただぼんやりと授業を受けて、仲のいい友人と寄り道をして、帰宅したら勉強する特徴のない人間。ただ弟より劣っていた。 成績は弟の方が良いので弟よりも待遇が悪かった。テストで9割正当してなければ教育という名の制裁が下った。 おこづかいがなくなるのはまだいいほう。時にはビンタ、殴る蹴るなんてざらにあったし、食事が用意されないこともあれば存在を無視されることもある。これ見よがしに弟をかわいがる両親を見ると虫唾が走った。 自分が殴られても止めようとしない祖父母の事が不思議だった。「暴力は人間としてよくない」と子供に説いていたのに、空嗣が殴られても「大変だな」と愚痴も聞いてくれない無関心な祖父母が苦手だった。 空嗣のおこづかいがなくて食事も用意されていないときに弟が自分のご飯やお金を分けてくれていた。「馬鹿にかかわるな」と両親に注意されてからは見つからないように兄の部屋に来てはこっそり握った大きすぎるおにぎりと焦げたウインナーをくれた。そんな弟が大好きで、大嫌いだった。 優しくはあったが「兄は頭が悪い」という親に刷り込まれた認識が弟にあったから。「自分が助けないとこの家に兄の味方はいない」「守ってあげないと」といった上から目線の慈悲。しかしそれに甘んじないといけない場合もあることが空嗣にとって針の筵だった。 空嗣の話を真摯に聞いてくれる存在はこの家にはなかった。 だから自分は誰かの話をしっかりと聞いたうえで反応したいと、偏見の目で決めつけたりしたくないと、そういうふうな職業に就きたいと考えた。 その人の価値観、立場、将来、希望、絶望を理解して少しでも患者が過ごしやすくなるための手伝いをするというスタンスで仕事をしている。空嗣の根底にある劣等感や家族にある歪んだ境遇の子供、そんな親を少なくしていてたらいいなと小さなクリニックで日々を過ごす。 「君が自分を殺したくなっても、俺はそれを止める権利はない。でも話を聞く権利はあるんだ」 「少しだけ、先生とお話してくれないか？」 「君の手伝いが出来ればなって。あ、麩菓子食べる？」 【好きな食べ物】麩菓子 【嫌いな食べ物】らっきょ 【趣味】休日にジャンク品をいじる、アコギを触る 【嫌いなこと、もの】家族 【END：依存】

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