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クトゥルフ PC作成ツール
背理 聖零
ID:4668964
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背理 聖零
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#し宅
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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SIZ
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初期
SAN
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デア
幸運
知識
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SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
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初期値の技能を隠す
複数回成長モード
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通常表示
<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
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通常表示
<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
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<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
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通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
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<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
. ——人生は後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない。 Søren Aabye Kierkegaard 本名:氷洞 惺零(ひどう せえれ) →事件後、母方の旧姓 九鬼 惺零(くき せえれ) 従姉妹には「せーくん」「せえれくん」って呼ばれていた。病室のママからはいまだに「惺零さん」と呼ばれている。 現在:背理 聖零(けるけ せいれん) ※蹴る→背く、みたいなかんじ。完全な当て字。まあ……偽名といえば偽名なので……完全にセーレン・キェルケゴールのオマージュ。 *** セーレン・キェルケゴール(Søren Aabye Kierkegaard)……実存主義の創始者とも言われるデンマークの哲学者。 父親の犯した罪と、それに対する宗教的な罰と父親自信が考えていたものへの恐れが彼の思想には大きく影響している。 死に至る病の作者。デンマーク語での発音ではセーアン・オービュ・キアゲゴー。 また、出版において、彼は多くの仮名を用いている。 不条理;実存主義でもたびたび挙げられる概念。 不条理主義者の哲学の中では、不条理は人による世界の意味の追究と世界の明らかな意味のなさの基本的な不調和によって生じるとされる。意味を持たない世界で意味を探す。人はこのジレンマを解決する3つの方法を持っている。キルケゴールとカミュはその解決法を著書の中で書いている。『死に至る病』と『シーシュポスの神話』である。 自殺:まずシンプルな1つの方法として人生を終わらすということ。キルケゴールとカミュはこの方法が非現実的であるとして退けている。 盲信:不条理を超えた何か、触れられず実験的に存在が証明されていないものを信じること。しかしそれをするには理性を失くす必要がある(すなわち盲信)、とキルケゴールは言っている。カミュはこれを哲学的自殺として考えている。 不条理を受け入れる:不条理を受け入れて生きる。カミュはこの方法を推奨しているが、キルケゴールはこれを「悪魔に取り付かれた狂気」として、自殺を引き起こす可能性を論じて批判している(Wikipedia) *** 別にキリスト教徒でもないし、実存主義者とまでもいかないし、哲学者でもないが。名の響きと、また父の罪によって左右された精神性からシンパシーを抱いているのは間違いない。探偵になってからの仮名は彼から取っている。 何をしても意味がない、そんな不条理への無力感と恐れはまだ消えていないから、仮名でも、なんとなく零の字をなくすことができない。 ▼2015 探偵ベース(EDU*10+STR*10) ★職業特記により<隠れる>+10 ・心理学→説得 アームチェア・ディテクティブはフィクションの世界でのみ輝くものだ。重要なのは100の推察よりも確固たる状況把握と情報収集である。人の行動パターンとかいうけど、そんな不確実なものを参考にするよりも地道な努力が実を結ぶって、思わないのかい? というか、謎を解くのが探偵の仕事だと思ってる? 探偵は調査が専門だ、現実的にはね。 知識技能よりも探索技能に全振りしています 考えるより動いて考えるほうが得意だってことだ ▼2015特徴表 3-4 戦士 2-6 アウトドア派 氷洞 徹(ひどう とおる)は父だ。 20人以上を傷つけ、自分は責任も放り出して自死を選んだ男が父親だ。 有能で真面目でかっこいい、そんな刑事だと思っていたのに世の中すべてを裏切った男が父親だ。 決して許されないことをした、そしてまともに裁かれもしなかった、そんな男の血を引いている。 ▼幼少期 刑事、しかも捜査一課の刑事と言えば華々しい職だと思う。 実際、この職の人間に仕事が回ってくると言うことは社会秩序的にはあまり褒められたことはないとはいえ、やはり捜査一課と言えば凶悪犯に対抗する正義の組織という印象が強いだろう。 犯罪がこの世に絶えないとはいえ、警察という組織が存在していることで抑えられていることもきっと多い。 だからそんな刑事に、捜査一課の刑事という存在に憧れていた。 ドラマや映画やアニメ、小説や漫画、そして何より一番身近な、自分の家族に、そのカッコいい姿を見ていたからだ。 自分もああなりたいと思った。スーツを着て、煙草をふかして、難事件や凶悪事件に立ち向かい、犯人を捕まえて、解決をする。 それがずっと憧れていた刑事の、父親の姿だった。 本当にそれくらい、いい父親だったのだ。息子から見ていると。 家庭の状態も悪くなかった。父と母の中は決して悪くなかったし、仲睦まじい夫婦であったと幼心でも感じていたと思う。 息子に対してもへんに厳しすぎるとか、そういったこともなかった。 テストで上手くいかなくても運動会のかけっこでころんでも、次に取り返してやれ!と頭に手を置いてくれるような、そんな親だった。 だから、父親があるとき、いつものように帰宅しなくて。 母親がどうしてだか、いつもまとめている髪もそのままに、放心していて。 テレビの中でセンセーショナルに騒ぎ立てられて、あらゆる人が怒りと罵声を向ける先の名前が、自分の父親と同じであることに、全く実感がなかった。 大人たちが、父親の同僚で顔も見たことある人や見たことない人たちが、怒ったような悲しいような顔をして、自分に声をかけてきたり。 母親がひどく震えながら自分を抱きしめて、明日から小学校に行かない方がいいと何度も呟いたり。 家によくわからない人たちがいっぱい来て、ドアから外に出れなくなったり。 今まで過ごした思い出のいっぱいある家を捨てるようにして、深夜逃げるようにして引っ越しをしたり。 そんなことのすべてが身の回りで慌ただしく起きていくのを、どこか他人事のように見ていた。 ▼氷洞徹逮捕~自殺後 まあ小学生だったし、仕方のないことだったとも思う。 憧れていた家族が、父親が、犯罪者で、許されないことをして、それから、死んだなんて、聞かされてどうして理解ができるだろう? そういう意味でも、小学校の残り二年の記憶は他人の記憶を見ているような感覚なのだ。 ただ、じわじわと気付いて行った。 時間は理解する時間を与えてくれたが、決して残された氷洞親子に救済はもたらさなかった。 この名前で生きていくのはさすがに難しいだろうと、母の旧姓を名乗っていても、どこからか漏れるものらしい。そういう情報は。 芦原さんは当時から本当に気を使ってくれたしよくしてくれたけれども、とはいえ彼や少人数で不特定多数の悪意は止められない。 家には張り紙が貼られ(「犯罪者の責任は家族がとれ!」「ここが凶悪犯罪者のそうくつです」「死んで責任が取れるなら家族も死ね」「悲しんでる人がいるのに、この家では氷洞の家族がのうのうと生きています」、エトセトラ)、転校した小学校でも、進学した中学校でも、馴染むことはできなかった。 朝のさわがしい教室に入れば皆が一瞬黙り、そしてあからさまに声のトーンを落として話を再開する。 席替えで隣になった女子が泣く。その女子を慰める女子に、憎しみのこもった目で睨まれる。 教室の机の中に置いておいたはずの教科書は破られ、牛乳や雑巾を絞った後のバケツの水をかけられ、翌朝机の上に置いてある。大きく描かれた油性の「帰れ」の化粧をして。 教師も見てみぬふりだ。いやむしろ、この場では悪いのは自分なのだった。世間を騒がした凶悪犯罪者の息子なのに、平気な顔して学校に来ている方が悪いのだった。 これを誰に相談すればいいのだろう?したところで何が変わるだろう?芦原さんにも迷惑をかけるだけだろう。 だから甘んじて耐えていた。下手な抵抗をしても意味がないことをわかっていたから。 このころになると、父親に対して抱いていた憧れの思いも反転してきていた。 どうして自分たちは今こんな目に遭っているのか。別に共犯だったわけではないではないか。 確かに被害者やその遺族の人たちには頭が上がらないが、このクラスメイトや近隣住民たちは全くの他人ではないか。 何をもって自分と母親はこんな仕打ちを甘んじているのか。父親が責任も取らずに死んで逃げたりなんかするからだ。 犯罪者のくせに、悪いやつの癖に……。 とはいえ、そんな中学校生活も思ったより早く終わりを告げた。 母親が耐えられなくなったのだ。 息子が息子でそんな毎日を送っている中で、母親も母親で理不尽な扱いを日々受けていたのだろう。 瞼も手もぶるぶる震えるようになっていた母親は次第にふさぎこんでいった。 無理して息子を励ますように浮かべていた硬い笑顔も張り付いたように変わらなくなった。 前よりやつれて頬骨の浮いてきた顔に、虚ろな瞳でスーパーのパートに向かっていた母親は、ある日無断欠勤をしたという。 という、というのはそのころ中学二年生になった息子は中学校にいたからだ。いつも通り孤立して。 家を出て、そのままスーパーも通り過ぎた母親は、丸一日帰ってこなかった。 さすがに心配した息子は芦原さんに相談したし、彼も捜索を手伝ってくれた。 さて、そんな一晩使った必死の捜索も成果を得られず終わったのだが、翌日母親はひょっこり帰ってきた。 息子が学校から帰ってきたら、いつもどおりぺたりとした笑顔を張り付けてそこにいたのだ。 安心したのもつかの間、さて、母親の様子がおかしい……のはその当時ではいつものことだったが、その日は比ではないくらいにおかしかった。 本当に楽しそうなのだ。表情は張り付いたまま変わらないのに、そう感じたのである。 理由は……理解はできなかったが、目の当たりにはした。 母親はずぶ濡れだった。水ではない。油の……灯油の独特の臭いが部屋には充満していた。 ぺたぺたと油の足跡をつけて息子の方に歩いてきた彼女は、呆然とする息子を抱きしめて、そのまま持っていたライターで火をつけようとした。 死ぬのは嫌だった。 酷い毎日だったけれども、それでも死ぬのは嫌だった。 だから、暴れて抵抗したのだ。そのとき手に持っていたのは美術の授業で作った木彫りの筆立てで、それは見事に母親の頭にクリーンヒットした。 (この筆立てはロケットを模したもので、自分でも頑張って作ってそれなりに気に入ったものだったのだが、美術室でニスを乾かしている間、誰かに蹴り飛ばされ、ゴミと間違えて捨てられそうになり、果ては後者の脇の排水溝で発見され、と、見るも無残な状態で課題提出となってしまったものだったのだが、それでもそれなりに愛着があったものだから、持って帰ってきていたのだ) 鈍い打撲音と共に母親の身体は倒れ、ライターは終ぞその身に炎を灯すことはなかったものの、息子は自分のしでかしてしまったことをじわじわと理解した。 まさか、殺してしまったのではないか。あんなにも同じになるものかと思った、父親みたいに……。 震えた声で芦原さんに電話口で助けを求め、駆け付けた彼によりそのおそれは杞憂だったことが分かった。 母親は意識を失っているだけだったのだ。とはいえ、頭部に強い衝撃を受けたものだから、もしかしたら後遺症が残るかもしれないとのことだった。 病院に運ばれた母親は、しばらくしたら目を覚ました。概ね彼女は問題なかった、むしろあの張り付いたような笑顔がなくなって表情が戻ってきたぶん、前よりマシと言えなくもなかった。 ただ、全てのことを忘れてしまったこと以外は。 彼女は記憶と引き換えに、すべてのしがらみから解放されたのだろう。知能レベルが低下していることもなく、本当に記憶やアイデンティティだけが抜け落ちた、真っ白な状態の母親が病室にいた。 そして彼女は幾分か幼くなっていた、精神年齢の話だ。彼女の認識の中では彼女はまだ学生だった。 「こんにちは、はじめまして、どこかでお会いしましたか?」 実の母親から笑顔と共に向けられた言葉は、結構堪えた。 とはいえ母親がこうなってしまったのは自分のせいだという罪悪感があったから、無下にするわけにもいかなかった。 そして自認が学生である母親に「あなたの息子です」と言っても混乱させるだけだった(実際混乱させてしまった)。 だから実の親子でありながら、他人のふりをして母親と親しくすることを選んだ。 芦原さんは心配もしてくれたが、こればかりは自分の責任だった。 住居としては叔父叔母夫婦のもとに引き取られることになったが、それでも母の病室は通い続けた。 叔父夫婦の家は遠方の田舎だったので、学生生活は一度リセットされることになる。それは少し、ありがたかった。 母親も療養として田舎の病院に移動になった。足を運びやすいところだったので、週に一度とは言わず学校帰りに通っていたのだ。 それは母親の見舞いに行く健気な息子であったが——皮肉なことに、今の彼女にとっては甲斐甲斐しい同年代の男子に映っていたことに、気づくことができなかった。 自分を産んだ女に、純粋な目で、女としての好意を寄せられていると気づいたとき、病院の廊下で吐いた。 高校二年生の夏だった。 性根は真面目で責任感のある人間であるから、頻度は落ちたとはいえ成人した今も未だに母の病室に通い続けている。 実の親子だという倫理観は崩れないのでもちろん過ちを犯したことはないが、まだ母の記憶も、彼女の中の時間も戻らない。 ▼叔父夫婦同居時代 前に住んでいたところから一新、少し寂れた穏やかな田舎への移動。 田舎は閉鎖的なコミュニティであり、情報の伝達も早いという印象と、氷洞徹は全国的な凶悪犯罪者として有名なのでここでも変わらないのではないかと思っていたが、思っていたよりもマシだったというのが引っ越した後の印象だった。 引き続き芦原さんが気にかけてくれたのもあるだろうが、とはいえ、転校先でも初日から陰口をたたかれるということはなかった。 中学二年生にして数年ぶりに、普通の学校生活を手に入れることができたのである。 と、学校生活はそこまで酷いものではなかったのだが、凶悪犯罪者の身内の息子を引き取るということは叔父夫婦にとってはそこそこの重荷であったようだ。 はじめこそ優しく、いたわる様に接してくれていたのだが、だんだんと持て余すような態度が目に見えてきた。 特に叔母の方と上手くいかなかった。 引き取られた側としても失礼のないようにしたいのはやまやまであったのだが、これまでの環境と人付き合いの経験から言ってしまえば素直ではない態度が癖になってしまっていたのだ。 叔母にしてみても嫌だっただろう。 凶悪犯罪者の血を引いている少年と同じ屋根の下で過ごさないといけないのだから、相手に少しでも不信感を抱いてしまえばもう、えくぼもあばた、嫌な部分だけが目についていく。 それに加えて、叔父夫婦には引き取った少年と同じ年の娘もいたのだ。 変なことをするのではないかと、監視されるような目で見られるのも当然だろう。 当然の反応だと理解もしていた。していたけれども、だからといって、それを受け入れて愛想よく笑っていられるほど大人でもなかったし、余裕もなかったのだ。 早いうちから叔母との関係は悪くなっていった。 あからさまに顔をしかめられたり、自室に外からの鍵をかけることを提案されたり(さすがにこれは叔父が反対したし、様子を見にきていた芦原さんが一番反対してくれた)、これ見よがしに溜息をつかれたり、引き取ったことを後悔するような態度を取られるようになった。 仕方がないことだとは思った。自分だって、ここに世話にならずに済むなら双方にとってそれが一番いいとも思っていたのだ。 しかしぎくしゃくし始めたころは義務教育も終えていないような年だったし、独り立ちはあまりに難しい話だった。 対して自分に興味関心をプラス方向で向けていたのがその娘だった。従姉妹にあたる同い年の少女。 叔母がたらい回しを提案しかけたときも、大きく反対したのが彼女だった。 正直そこまで好意的に接される理由もないと思っていたからむしろ驚いた。とはいえ、悪い気はしなかった。 これまで味方と言えるのは芦原さんくらいだったから、年の近い彼女がそうであってくれるのは人並み扱いをされているふうに感じられて嬉しかった。 一戸建ての二階は自分と従姉妹の部屋、そして物置と化している空き部屋、トイレ。親の寝室は下階。 一応年頃の男女にはなるので、空き部屋を挟むかたちで部屋を使っていたのだが、彼女の方はあまり抵抗はなかったらしい。 むしろ彼女の方から自室にやってくるような始末で、部屋の中からかけられる鍵が欲しいと思ったものだった。 「お父さんがやったことなんだから、その子供が責任感じるのはおかしいじゃん。別に、楽しく生きてもいいんじゃない?」 芦原さん以外でこんなふうに言ってくれる人も初めてで、少しずつだが従姉妹には心を開くようになっていった。 久しぶりの人並みの生活だった。 さて、心が少女に戻った母親から好意を打ち明けられるよりも少し前、高校二年生の春、それまで穏やかだった日常は突如終わりを告げた。 どこから漏れ出したのか、自分があの氷洞徹の息子だと言う情報が流れたのだ。 それまでの学園生活は一転、さすがに全員が全員手のひらを返したわけではないが、前よりは確実に付き合いが悪くなったりだとか、腫物のように扱われることが増えた。 昨日まで登校時に朗らかに挨拶してくれた近所の人が、あからさまに目を逸らすようになった。 軽口まで叩いて接してくれていた商店街のおじさんが、そそくさと話を切り上げるようになった。 異物。望まれざる来訪者。自分の立場はほんの短い間に変わってしまった。 どこかばつが悪そうに、目を合わせない叔母。 それで、なんとなく、ぴんと来てしまった。叔母が誰かに、話したのだろう。 叔母は早く、自分を追い出そうとしていたから。 悲しかった。悔しかった。自分は悪いことをした覚えはないのに、親のしたことでここまで人生を台無しにされるのか。 親が凶悪犯罪者だから、その息子は幸せに、人並みに、普通に生きることも許されないのか。 そして何より、昨日まで親しかった人々がここまで簡単に変わってしまうことがおそろしかった。 そんな中でも変わらず接してくれたのは従姉妹だった。 元から知っていた、というのはあると思うが、それでも初めから彼女は嫌な顔一つすることはなかった。 「お父さんが悪い人だからって、それだけのことで、友達やめちゃうなんてひどいよね。 友達って、そういうものなのかな?わたしだったらそんなこと、絶対ないんだけどなあ」 そう言って笑ってくれた彼女の言うことだけは、ほんとうだと思った。 彼女も彼女で、こんな自分を受け入れた家の人間だから何か言われているだろうに、そう言って自分を庇えるなんてすごいとすら思った。 唯一の(芦原さんはさすがにいつも自分に構っているわけにはいかない)味方が身内に、ひとつ屋根の下に居るのはとても心強かった。 それだけではなく、自分に好意すら向けてくれる彼女に惹かれるようになるのは時間の問題だった。 そこからはもう、なし崩しだ。 若気の至りというか、傷のなめ合いというか、受け入れてくれる彼女に甘えるような、そんな勢いで、彼女と一線を超えた。 恥ずかしい話、彼女が受け入れてくれている間は何も気にしないでいることができるような、そんな気がした。 そして、肉体関係を持ってさえも、嫌な顔をしない彼女の存在が本当に救いになっていた。 とはいえ、ずっとこの家にいることもできないとは感じていた。 せめて高校を卒業したら独り立ちをする。その思いは揺るがなかった。これ以上迷惑をかけるわけにもいかない。 大学に進学するつもりもなかった。金銭面の余裕がなかった。だから、就職しようと思っていた。 とはいえ、こんな経歴の自分を受け入れてくれる企業や職場はそうそうないだろう。 アルバイトでなんとか食いつなぎながら、自営業でもしよう。刑事にはもう、なることはできないから。 それでもあんな、ドラマや漫画の中のような職業への憧れの炎は消すことができなかったのだ。 だから、……だから、そのころからだ。探偵の道を選ぼうと考え始めたのは。 それくらいなら、自分で責任がとれるだろうと思った。 時は過ぎる。実の母親に告白をされて傷ついたりもしたが、従姉妹と関係を持ってからも、それでも見舞いには相変わらず通っていた。 自分はそんな資格はないから、好意を受け取ることはできないが、それでもこうして会いに来ることはすると、そうごまかして。 病室からシンプルな施設に移動していた母は、白い部屋でいつも穏やかに微笑んでいた。 その表情は、自分が知っている母の顔寄りは幾分か幼いものであったけれど、一時期追い詰められていた彼女を知っている息子の身からしてみればあまりにも幸せそうで、それもあって、母親の記憶は戻らないでいる方がいいのではないかと思ってしまった。 「あのね、最近……髪の毛が伸びてきたから、少し切ろうと思うの、どんな長さが良いと思う?」 内緒話をするように、小さな声で耳打ちして、少し照れたようにくすくす笑う少女のような実の母親の姿。 それは歪なものではあったけれども、犯しがたい硝子の宝物のように眩しく遠いもののようにも見えた。 ▼卒業~出立 すっかり居場所のなくなった高校からの卒業を終えて、皆が残り青春の最後の輝きを謳歌する中、そそくさと家に戻る。 今日こそ家を出ることを叔父夫婦に伝えるつもりだった。従姉妹には既に相談していた。 彼らが帰宅するまでの間に荷物をまとめようと入った自室、カーテンが降りる薄暗い中には従姉妹が一人で立っていた。薄い笑みを口元に浮かべて。 ——ねえ、ほんとうに出ていっちゃうんだ。 そうだ、と答えた。彼女にはついてきてくれるなと頼んでいた。これ以上彼女の人生を自分のせいで狂わせたくなかったから。 ——寂しくなるな……。わたし、結構本気で好きだったんだけどな。 ごめん、と謝った。それでもやっぱり、一から自分一人でやり直したかった。 少し唇を尖らせた従姉妹はベッドの上に座って足を揺らし、荷物をトランクケースに詰める自分を眺めていた。 ひた、と足音がして、背中に重み。従姉妹が後ろから抱きしめてきたのだと気づくのに、少しだけいつもより時間がかかった。 「あのね、せえれくんが徹叔父さんの息子だって皆に教えたの、わたしだよ」 ……吐息と共に耳に吹き込まれた音を、文章として理解するのに、ひどく、時間がかかった。 声の方を振り返ることもできなかった。どんな表情で発した言葉なのか、識ることが怖かった。 返事をできないで固まっている姿にくすりと笑いをこぼし、従姉妹はその柔らかい身体を擦り付けながら、いつも通りの声音で続けていた。 まるで今日の夕飯でも話題にするかのように。 その手が服の中に滑り込んできて腹筋を撫で上げた時、やっと身体を動かして振り払い、その顔を見ることができた。 彼女はなんてことないことのように笑っていた。 ——好きなの。どこにも行けないのを、わたしが抱きしめてあげるの。 ——みんな嘘ばっかりって、わかったでしょ? 噂一つで、みんなみーんな変わっちゃったよね。 ——だから、わたしだけが抱き留めてあげるの。 ——わたしがいて、良かったでしょ? 「じゃあね。だから、また会おうね」 そう笑顔と共に手に握りこまされた、連絡先を入れられた携帯と詰めたばかりの荷物を抱えて、弾かれるように家を出ていた。 夕暮れの近い町並みにはまだちらほらと人が残っていて、何かから逃げるようにして走る自分を遠巻きに眺めていた。 悪夢を見ているようだった。 赤い赤い陽の色も、長く伸びた黒い黒い影も。カラスの声も、こどもの笑い声も、陰口も、全てが歪にぐるぐると回っては異国の言語のように脳内をめぐる。 息を切らして電車に乗り込んで、ドアを背にずるずると座り込んだ時、二度とこの町には戻らない、と決めたのだった。 ▼出立後~現在 ほとんど手持ちもない中で、一人暮らしと自営業の確立をするのはかなり大変だった。芦原さんの協力には感謝してもしきれないくらいだ。 始めの頃は新聞配達のアルバイトをしながら(顔をあまり合わせずに済むからこれにした)、ローカルな広報誌に広告を出してみたり。 まったく無名の新設の探偵事務所だ、近隣から白い目で見られたり、仕事が一切入ってこなかったりという時間も短くはなかったが、今となってはもうそんな扱いを受けることなど気にすることもなくなっていた。 また築こうとしている新しい生活が崩されることの方が、よっぽど怖かった。 フィクションで見るような仕事はほとんど飛び込んでくることはなかった。それも当然だろう。探偵は推理をするものではなく、調査をする職業だ。 聞き込み、尾行、張り込み、そういったことをして、依頼者に情報を提供する。少ないながらも飛び込んできた依頼は浮気調査が多かった。 とはいえ、知り合いに刑事がいるのだ。さすがに機密情報は聞かせてもらえないとはいえ、芦原さんから近頃起きた事件のことなどを聞いていた。 もちろん、手創傷事件当時のことも。 犯人は確定している。もう終わっている事件だ、とは思う。それでも、その事件のことをもっと知りたいと思った。 氷洞徹が、実の父親が、どうしてあんな凶悪な犯罪を一度のみならず幾度も犯したのか。何を思ってしたのか。なぜ家族を、周囲を裏切ったのか。 理解したいと思った。許せないから、知りたいと思った。 本人が自殺という言ってしまえば非常に狡い逃げ方をしたのもあり、この事件は完全に解明していない、と思う。 遺された傷はあまりにも大きいものだ。 罪滅ぼしになるとはまったく思っていないが、無知なまま忘れて他人の顔もできないくらいには、父のことは息子に影を落としていた。 やがて探偵業にも慣れてきて、アルバイトと掛け持ちしなくても生活ができるようになってきた頃には、少なくはない数の犯罪の話を知る立場になっていた。 この世の中には、犯罪が絶えない。犯罪者が、悪人がいなくなることがない。 それはとても悲しいことであり、そして許せないことであった。 人が悪意を持たない生物だとは思わない。しかし、生まれつき悪であるとも思わない。性善説も性悪説も納得はできない。 ただ、社会秩序という理想を現実にするための努力は可能だ。 そのための法であり、そのための警察だ。自分がかつて、目指していたものは。 今ではもうその立場に立つことはできないけれど、縁が切れたわけではない。 凶悪犯罪に対して、人並み以上に憤りを覚える。芦原さんに頼まれても頼まれなくても、自分から調査をして渡すようにもなっている。 警察の公の捜査とはまた違った切り口、角度での調査が可能な探偵と言う立場を無駄にはしたくない。 或いは、そうまでしてでも、かつて憧れた職業とのつながりを失いたくないのかもしれない。 自分と、他人の人生を壊した最大の犯人はもうこの世にはいない。それでも犯罪はなくならない。 願うのは根絶だ。実現可能性の話ではない、努力の話だ。 警察が日の元の公の機関なら、自分のような探偵は陰で秩序を守るために努力をしよう。 令状が出ないと動けないような彼らの代わりに、自由に動ける立場を最大限利用する。 これは一種の復讐だ。父親への、そして、この世に巣食う犯罪や悪意に対しての。 それが探偵として働き続けている、理由である。 これまでの経験から、多少の人間不信。それもあって誰彼に対しても(芦原さん以外)疑ってかかる癖があるので、まあまあ調査には向いている(情や泣き落としなどに流されにくい)。 中でも女性不信がとても大きいので、あの高校生時代以来女性と恋仲になったことがない。肉体関係も持っていない。 親しい仲になることに恐怖に近い猜疑心を抱いている。いつどこでまた生活が崩されるかわからない。 誰も信じられない(芦原さん以外)。ただ、そういう姿勢があるからこそ、探偵業なんていう、他人のプライバシーを覗くような、ある種嫌われる職業を平気でできているところがある。 従姉妹に渡された携帯からはあの後即連絡先を消した。まとまった金が手に入ってからは機種も変えた。 行先も告げていない、探偵としては偽名を名乗っているから、そう簡単には見つからないと思っている。 今でもあの声を思い出しては背筋が寒くなる夜もある。同時にあの女性らしい身体つきまで思い出してしまい、自己嫌悪に包まれることも多い。 母親の見舞いには変わらず行っている、施設だけは移動して、あの町からは離れてもらったが。 彼女はまだ少女のままだ。 親しい間柄になるのを避けたいのならば、自分が避けるだけではなく、向こうから避けるようにすればいい。 そう思いついてからは時代錯誤ともとれるファッションに身を包むようになっている。 さすがに隠密行動の際は着替えていることの方が多いが。 ある意味一種の鎧でもある。「他人に好かれない自分」、というのは。 そもそもそうであれば落差も小さい。双方ともに。 ▼生活面 ろくに家事もできないまま、させてもらえないまま(叔母は得体の知れない子供が家の設備を使うことをとても嫌がった)社会に出ることになってしまったので、かなり生活はだらしない。 だらしないといっても、自堕落なわけではなく、できないだけである。 料理もよくわからない。クックパッド等を参考にして作ってみるけれども、あまり上手くいかないうえにコストも大きい。 であれば、外食もしくは今時はウーバーイーツでも頼んだ方がシンプルで楽だ。 身だしなみはさすがに整えておかないと依頼人に逃げられるので、アイロンのかけ方はがんばって覚えた。 ただ、洗濯は主に近所のコインランドリーである。 事務所は綺麗に整えてはいるが、自室は資料や新聞のスクラップなどで散乱している。かろうじて布団を敷くスペースが空いている。 事務所は雑居ビルの二階。コンビニの真上。買い出しが楽で、悪くない。 高確率でマジシャンだと勘違いされている。 ♪DINDON /NEE https://www.youtube.com/watch?v=GL0DOPzTI38 https://lyruca.com/song/53842 ♪月曜日の歌 /NEE https://youtu.be/Cm98DudFyeA https://www.uta-net.com/song/312689/ ♪男は不安定 /ゆらゆら帝国 https://www.youtube.com/watch?v=DYX3hQDm5zw https://j-lyric.net/artist/a01632b/l00abc6.html ♪ゴーゴー幽霊船 /米津玄師 https://www.youtube.com/watch?v=2PqxOytUjz0 ♪匍匐する精神 /IDONO KAWAZU https://www.youtube.com/watch?v=nd0JB1F_USM https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/40313.amp ♪病棟305号室 /ハチ https://utaten.com/lyric/iz17051112/ ▼秘匿 __HO2 貴方は探偵だ。__ しかし貴方は昔、刑事を志していた。 ならなかったのではなく、なれなかったのだ。 何故なら、貴方の身内から凶悪な犯罪者が出てしまったからだ。 以下、「身内」について。 ・名前は「氷洞 徹(ひどう とおる)」。男性。 ・血縁関係は父、歳の離れた兄、叔父、従兄弟、三親等以内の血族であれば何でも可。ともかく血縁者から犯罪者が出たせいで、貴方の刑事(警察官)への道は断たれた。 ・氷洞は捜査一課の刑事であり、貴方は氷洞に憧れて刑事を志していた。 ・氷洞は18年前に逮捕された。この設定から、HO2のキャラシート作成においては年齢を18+7=25歳以上に設定すること。(子供が特定の職業に憧れる年齢は7歳以上程度と考えられるため) ・氷洞の起こした事件については「手創傷(てそうしょう)事件」と呼ばれている。被害者の手のひらに傷がつけられていたことが共通項であったためだ。詳細な事件の内容は(猟奇)殺人、強姦、窃盗、放火等多岐にわたり、非常に悪質であった。被害者は20人以上、殺人事件としての被害者は12人にものぼる。 ・捜査一課の現役刑事が起こした犯罪としては異例の内容で、当時は飛び交う報道によって警察組織大炎上という状態だった。20年近く経った今でも警察の方ではこの事件はタブー視されている。 ・また、氷洞は逮捕された後、拘置所で自殺したと聞いた。 ・上記の経緯から、貴方には犯罪(あるいは悪)を許せない感情があるだろう。 既知NPC 芦原 介(あしはら かい) 55歳 男性 氷洞の逮捕前まで一緒に仕事をしていた氷洞の先輩にあたる現役刑事。手創傷事件の遺族や、貴方がた氷洞の血縁者のことを当時からよくよく気にかけてくれている。二枚目という風貌ではないが、明るさの滲んだ、目じりの笑い皺に親しみを覚えられるだろう容姿。がっしりと鍛えられた体格をくたびれたスーツが多少なり残念に見せている。 貴方が探偵という職に就くにあたって、また就いてからも様々世話になっていることだろう。 <推奨技能> 探索技能、交渉技能など探偵らしい技能。戦闘系が多少あっても良いかもしれない。 *** Freak (久日様作) __ ○概要__ システム:クトゥルフ神話TRPG 舞台:現代日本 シナリオ形式:2PL、秘匿HOあり、新規PC推奨 プレイ時間:テキストセッションで全日2日分ほど。RPによって多少前後する。 推奨技能:探索技能、交渉技能、他HO別推奨技能 __*キャラシート作成にあたって__ ・トレーラーに出ている情報以外は全て秘匿部分です。NPCの情報含めて、シナリオやHOの内容に言及する場合は必ずワンクッション置いてください。 ・当シナリオはHO1・HO2双方について、新規探索者での参加を推奨します。 ・探索者同士はシナリオ開始前に面識があっても無くても構いませんが、あったとしてもあまり親しい間柄ではない方が望ましいです。 ・シナリオを完走するまで、たとえ同じHO同士であっても他の人のFreak探索者のキャラクターシートは見ないでください。 __ ○諸注意__ ・神話生物、呪文に対する独自解釈が多く含まれます。 ・PvPが発生する可能性があります。 ・センシティブな問題を扱っており、後味悪く(胸糞悪く)感じられる可能性があります。 ・このシナリオには暴力行為、残虐表現、犯罪の描写が多々含まれますが、そういった犯罪行為・思想を肯定ないし助長する意図は一切ありません。
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