タグ： あたご きさ

愛宕 癸咲/あたご きさ 古い古いお家で蝶よ花よと育てられてきたおかげでとっても元気な22歳！ 愛宕の家の始まりは反物、染物の卸。何代も進むにつれて多角的に成長し、政治家や実業家なども出ている。不動産業もかじっているとか。 周りの大人はみんな癸咲に優しかった。 ずっと昔から、それこそ生まれたその時から、癸咲が白だといえば烏も白くなる。そんな環境で育ってきた。 それに疑問を覚えたのは7つか8つの頃に廊下から見える広い庭の手入れをしていた青年と話したのがきっかけ。 その時暇をしていた癸咲は青年の持っていた高枝切り鋏が魅力的に見えたので使わせてほしいと普段と変わらずお願いした。 けれど青年は応えなかった。「この鋏は大きくて危ないから別のものにしましょう」と言われた。癸咲はそれもそうかと納得した。 大きな鋏を振るう彼の隣で、大きさの合っていない手袋と小さな鋏を借りて低木の形を整えた。楽しかった。翌日も話がしたくてわざと手袋を返さなかった。 青年は翌日から姿を見なくなった。部屋に持ち帰った手袋は他の使用人に見つかったのか所在不明になっていた。 聞けば青年はもう来なくなったらしい。「危険な作業をさせるなんて」と心配そうな顔で傷ひとつない癸咲の手を撫でる女中の顔がぼやけて見えなかった。 周りの大人はみんな癸咲に優しかった。優しさは言い換えれば甘さになる。甘いだけの家のなかは、酷く退屈だった。 大人の言っていることを否定するわけではない。確かに愛されて、大事にされている。けれども酷く退屈なのだ！ しかし癸咲の周りにいたのは大人だけではない。妖や幽霊もまた、癸咲と共にいてくれた。 人の形をしていたりしていなかったり大きかったり小さかったり、様々な姿形をもつ彼らは癸咲の良き友であってくれた。 時には腹を抱えて笑えてしまうような冗談をし合ったり、時には慰めるようにそばにいたり。言葉が通じるも通じないもあったが、それでも十分なほどの愛をくれた。 癸咲は彼らを愛している。彼らとの縁を結んでくれた己に流れる血を愛している。 そんな家で何不自由なく育てられて22年。お国から召集がかかったとのことでこれ幸いと家を飛び出してきた。 知らないことばかりであろう家の外の生活！楽しみで仕方ない！そんな感じ。 知らないことばかりでは大変だろうと幼い頃から妖や幽霊の類に護身のため稽古をつけてもらった結果、センスが爆発したのかとっても強くなった。 きっと元々先祖の橋姫の血が濃いのだろう。きっと。

※歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
↑ページ上部へ