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幼い頃から音を色として視ることができる共感覚を持っており、その才能を活かして画家になった。 絵のアイデアを得るためにさまざまなジャンルの音楽を聴いているなかでジャックの音楽に出会い、ファンになった。 彼の音楽は今まで出会ったどんな音よりも、目が覚めるように鮮やかな原色のような音色をしていた。ライブのたびにその音を聴くのが、視るのが大好きだった。 (多分かつてライブ後のジャックをとっ捕まえていかに俺が君の音楽が大好きかって話を長々とした後、「特にラストのあの曲！こんな色でさあ！」みたいな感じで絵に描いてみせて、それを気に入ってもらえたのがきっかけで友人になったんだと思う。全部幻覚です。) ミュージシャンと画家、ジャンルは全く違えど同じアーティストとして、友人として、互いの「作品」の感想を伝えあったりしながら切磋琢磨していた。 彼と話をするのは楽しかったし、毎日が幸せで、まるで世界が色鮮やかに輝いているように見えていた。 ──それが、2年前、ジャックが消息不明になり、才戸玲がオーヴァードに覚醒するまでの話。 ウロボロスというシンドロームらしい。 発見されたばかりのシンドロームで、詳しいことはよくわかっていないらしいが、 その特徴は、影を操る、能力の模倣、それから… ──突然変異。 オーヴァードになってから、今まで当然のように持っていた共感覚が、消えた。 頭の中に、突然真っ黒な影の獣が現れて、全ての色を喰らっていった。 全部、黒一色(モノクロ)に塗りつぶされてしまった。 色を認識することはできる。 だが、それを出力しようとした瞬間、 頭の中で、狼のような姿をした影の獣が色を喰らってしまって、うまく出力できなくなる。 いつのまにか、彼はモノクロの絵しか描けなくなってしまった。 しかし、皮肉なことに、 描きたいものが描けなくなって、もがき苦しんで生み出されたそのモノクロの絵は…よく売れた。 世間は過去の絵など見向きもしなくなり、モノクロの絵ばかりを求めるようになった。 違う。 俺が本当に描きたいのはこんな絵じゃない。 あの獣のせいで、こんな絵しか描けなくなってしまったんだ。 だから、この評価は、賞賛は、 俺のものじゃ、ない。 まるで、自分自身すらも真っ黒に塗り潰されるような感覚に陥り… 当然のように、彼は、精神を病んだ。 何もかも失ったように思えて、無気力に生きる日々。 そんな折に…彼の元に、一通の招待状が届いた。 それは…消息不明になったはずの友人、ジャック・スケアーからの、ライブの招待状だった。 なぜ急に、とか、今まで何を、とか。 そんなことよりも、ただ、彼の音が聴きたいと思った。 …そうしたら、自分はまた、失った色を取り戻すことが出来るかもしれないと、そう思ったから。 ----- ◯補足 一人称：俺 二人称：君 鬱病気味の情緒不安定男。全てを諦めたような無気力な目をしている。 彼はオーヴァードに覚醒したせいで頭の中に影の獣が現れて色を喰らっていった、と言っているが、実際のところ、本当にそうであるのか、それとも、精神を病んだことにより幻覚を見ており、描きたい絵が描けなくなってしまったのかは微妙なところ。だがどちらにせよ、彼がエフェクトを行使する際にはその「影の獣」が形となって現れる。 一応覚醒した際にUGNに世話になったのでイリーガルとして形だけは名前を登録しているが、ウロボロスというシンドロームであることに加え、精神的に不安定であることにより侵蝕率が上がりやすく、ジャーム化の危険が高いと判断されたため、積極的に力を使わないよう釘を刺されている。 なので定期的な検査とカウンセリングの時以外ほとんどUGNと関わることはない。UGNのこと半分メンタルクリニックみたいに思ってる節はある。

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