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キド マモル 視える人。 特に寺生まれでもないのにその場にいる『全て』のものが視える。 いつからなのかはもう覚えていないが、物心がつく前からそれは既に始まっていた。 ある日大人数で遊んでいると、日の暮れてきた頃に近所の人から1人でいたら危ないよ、と声をかけられた。 「友達と一緒だよ！」と言いながら振り返ると今まで遊んでいた大勢の子供達は霞のように消え、そこには誰ひとりとして存在していなかった。 不思議に思いながらも帰ろうとした時、入口近くの砂場には子供達と一緒に作った砂の城が崩れており、まるで叩きのめされたように無数の手形で埋め尽くされていた。 足早に施設へと帰り、着替えている最中にふと鏡を見る。 鏡の中の自身の首には あの砂場で見たような手形が何個も何個も何個もくっきりと残っていた。 その日を境に、城兎は生者とソレの違いが分かるになっていった。 そうとなれば今までの視界は一変し、普通の人間のように過ごしていると思っていたソレ達が藁にもすがる思いで助けを乞い自分の下へと寄って来ていた事に気付く。 特に近所のアキオさんは生前と全く変わらぬ素振りで毎朝おはようさん～！と挨拶してくる。 「悩み事があったら聞くよ」と言うが、ならばせめてその口からゴボゴボと流れている血をどうにかしてほしい。 城兎はただ視えるだけであり、霊媒の力も無ければ成仏させる手立てもない。 しかし、現世に縛られ死の瞬間の恐怖や痛みに苦しみ続ける死霊達は救いを求めて城兎の眼前へとやってくる。 そして訪ねてくる者は死者だけではなかった。生きている人間、即ち心霊現象に悩まされている側も風の噂を聞きつけてお祓いを依頼しに来るようになった。 何の力にもなれないと伝えても助けを乞う人が後を絶たない為、見様見真似でそれっぽいグッズを作りそれっぽい事をしてそれっぽい満足をして帰ってもらう事にしている。 毎晩窓もドアも叩かれるしテレビがついたり消えたりするし蛍光灯は落ちてくるし霊道を通るナニカに足を踏まれたりするのでとてもまともに眠れない為クマがすごい。 視力もかなり悪いが、これは中学生の頃にこの目さえ潰してしまえばもう何も見なくて済むと思い立ち、自身で潰してしまった後遺症によるもの。 それでも、見る事から逃れる事は出来なかった。今は全てを諦めている。 その頃から精神状態が著しく悪くなるといつの間にか足元に兎のぬいぐるみが寄り添うようになった。 一度本職の方に自分自身を視てもらい祓ってもらおうかと考えた事があるが、突然部屋の中に勝手にすり抜けてきたアキオさんが鬼の形相で止めてきたので行けずじまいでいる。 ♪新堂さんのテーマ

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