タグ： 海も枯れるまで

君砂希々(ｷﾐｻｺﾞ ﾈﾈ)/メイクセラピスト/22歳 「素敵なあなたを、より素敵に見せるお手伝いを」 心理カウンセリングの手法を用いた技術でメイクを施すメイクセラピスト。高校時代、友達にせがまれてメイクをしてあげた時の表情が忘れられず、メイクで人を笑顔にできる仕事に就きたい、という思いでこの職を志した。 自分に自信がない、などの悩みを持つ女性達を笑顔にできるこの仕事が好き。 恋人に食べてもらうために練習した料理の腕はかなり良い。中でも恋人の好物であるりんごの皮剥きが特に上手。 「いっそ、誰かが殺してくれればいいんだけど」 彼女には婚約者がいた。今の時代には珍しく、親から持ちかけられた縁談によるものだったが彼女は彼を愛していた。彼も彼女を愛していたように思えた。2人の仲は睦まじく、結婚式の予定まで決まっていた。 しかしある日、彼は失踪する。失踪届を出し、警察の力を借りても彼を見つけ出すことはできなかった。 未だに彼の行方や失踪の理由は不明である。 彼が失踪して以来、当然彼女の精神は落ち込んだ。見てわかる程にやつれ、上司からは休職するように言われた。しかし、仕事をすることで普段のペースを取り戻そうとした彼女はその提案を飲まなかった。 眠れない日が増え、本調子でない状態で過ごすことが日常になった。依頼を完璧にこなしてくれる、悩みにも親身に対応してくれる、と上がっていく彼女の評判に反比例するように彼女の精神は悪化した。 彼女は自身を傷つけることで精神を保とうと思い立つ。一つ、傷をつけるたび、一つ、鬱々とした気持ちが消えたような気がした。つい考えてしまい眠れなかった様々なことも、痛みに意識を向けることで考えずにいられた。 しかし、最近はその痛みですらも思考を止めるに至らなくなってしまった。 彼が見つからない焦り、自分が何かしてしまったのだろうかという不安、この世への絶望。 様々な負の感情から、自殺への望みが生まれた。 昼間は様々な客の笑顔を生み出す一方、夜には自殺の場所や方法を探している。 また、自傷行為は未だ止められていない。以前のように思考を止められるのではないかという微かな希望に縋り、今でも自身に刃を向ける日々が続いている。

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