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自身の名前を嫌っている。 伊佐未は「勇」という意味も込められているらしく、今の自分には相応しくないと考えている。 また、無くした記憶の中で付けられた名字に思い入れはなく、育ての親である黒田の姓を名乗りたいと思っている。 黒鉄ってなんか厳ついし…同じ黒なら普通の名字の方がいいし…。 10年前の事件から満足に眠れない夜を過ごしているが、もはや長い時の中で馴染んでしまった。 黒田矢代のことは実の父のように慕っており、呼び名も「義父さん」である。 暗く陰鬱な雰囲気、慢性的な睡眠不足からくる深い隈が特徴。 内向的な性格で、最低限のコミュニケーションは取るが自分のことは余り話さない。 常に目元が陰になるような髪型を好むため人と目を合わせて会話することが少ない。 アンドロイドは恐ろしい、視界に入れればそれだけで吐き気と嫌悪感を催す程に。 しかしだからといって”殺す”という風には考えない。飽くまでも嫌いなものは嫌いなだけであり、憎しみを抱いているわけではないのだ。 ───少なくとも、表面上は。 自分の才能を自覚しており、過去は過去として割り切っている。 それでも嘗ての自分に何があったかを探り続けるのは、偏に興味からである。 あの事件で何があったのかを知ったところで、10年の歳月は揺らぐことなく存在し続ける。 ならばその中で積み上げられた自我もまた、自分自身として誇ることが出来る素晴らしい思い出なのだ。 今更睡眠を妨げる記憶を無くしたところでリズムが崩れるだけであるし、理論的には快適な睡眠は良いものだと知っていても今の生活を変えてまで求めるつもりはないというのが内心である。 職場の同僚がどうやらアンドロイドらしいというのが気掛かりであるが、まぁ致命的な決裂さえ無ければ支障はないはずだ。 上っ面だけ取り繕えば、どう思っていようとバレはしないだろう。ロボットに心なんて分かるはずがないのだ…。

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