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Izzet #cc3812 誕生日8/19 物心ついた時には、親というものはいなかった。 ここまで生きてきたのだからきっと居たのだとは思うが、最初から居ないのならば存在しないのと同じだ。 最初に覚えたのはゴミ漁りだった。残飯にありつけるのはかなり運が良かったが、食べられるものを手にしても、自分のように日陰暮らしの力の強い者に奪われた。腐った食べ物は良い方で、草木や鼠や蜥蜴も齧った。汚水を啜った。他人を騙した。盗みだってした。他にも色んな事を。全ては、ただ生きる為に。 そんな折だっただろうか、今までに見たこともない、おかしな男に会ったのは。 その男は蹴らなければ殴りもせず、物を投げつけず、嫌悪や嘲りの目で見る事も罵声を浴びせる事も無い。ただ笑って、当然のように此方を気に懸けてくる、理解出来ない存在だった。この新しい環境に慣れるまでは。 色々な事を教えられ、学び、自分が獣から人になっていくのを感じた。家族というものは知らないが、きっとこういうものなのだろうと初めて感じた場所だった。 自分もいつか彼と同じ立場に──困っているひとを前にしたなら、自分がしてもらったように手を差し伸べたい。彼のように色んな人を笑顔にしたい。団員達を守りたい。そして彼等の居るこの温かな場所を守りたい。その為なら自分の身を削ったって、命だって懸けて構わない。 だからこそ──これは仕方のない事だったのだ。 このサーカス団が彼にとって全てであり、なくなってしまったらどこへも行けないと思っているが、本人にその自覚はない。その割に団員たちは何処へでもゆけると思っており、彼等にはもっと良い職があるのでは、本当は此処に居たるべきでないのでは、と時折思っては恐れている。あと前団長がいつか帰って来るかもしれないとうっすら希望を抱いている。帰って来たらちょっと成長した姿を見てほしいな～…とか思っている。

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