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幼少期、父親が母と妹そして自分を残して何処かへと消えてしまう。 それが原因で自分と親しい人間がいなくなる事に強い恐怖を感じるようになる。 以来、アキラは家族以外とのコミュニケーションを避けるようになってしまう。 おかげでクラスでは少し浮いた存在になっている。 しかしアキラは「それでいい家族さえいればそれだけで」と考えていた。 そんな折、高校２年の春にひょんな事から、クラスメイトである綾瀬真花と仲良くなる。 と言っても困っていた所に手を貸しただけ。それだけで終わる関係のはずだった。 だが綾瀬は、その後も事ある毎に話しかけてくるようになった。 初めこそ少し鬱陶しく思うアキラだったが、いつも間にか物怖じしないその姿に心が惹かれていった。 夜、学校帰りの道を歩きながらアキラは考えていた。 親しい人間がいなくなる事への恐怖は薄れていない。 だけど綾瀬が話しかけてくれる度に、嬉しいと感じてしまう自分がいる。 この感情に向き合えば、きっとまた辛い思いをする。それが怖いのだ。 その時、ふと公園の方に目をやると２つの影があった。 いつもなら気にしない様な事だ。しかし今日は違った。 アキラは自分の好奇心を止める事が出来なかった。 何故だかは分からない。きっと運命だったのだろう。 その影に近づく。暗闇に目が慣れてくる。 そこには化け物が人間を喰らっている姿があった。 アキラには目の前で起きていることをすぐには理解できなかった。 化け物と目が合う。ここから逃げなければ。化け物に背を向けて走り出す。 だが、背中に衝撃が走り足が止まる。 視線を下ろすと、自分の腹から化け物の腕が突き出していた。 気が付くとアキラは公園に倒れていた。 周りにあの化け物の姿は無い。 咄嗟に自分の腹を確認するが、特に異常は見当たらない。 あの光景は一体なんだったのだろう。夢でも見ていたのだろうか。 家路につくアキラの腕は、鮮血で彩られていた。

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