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▋野狗子と薬師│HO2 薬師 ──────────────────── 「酒は百薬の長、これまた正しく病は気からだねぇ」 酒豪というわけではないのだが、一度馬鹿の飲み方を覚えてからは酔うまで飲むようになった。 何とも言えない酒癖以外は、博識で明るく面倒見が良いお兄さん。 知識と教養を持つ者として善悪を教え、知らないことを教える野狗子の「先生」でもある。 が、本人の知識欲が強すぎるのがたまに傷。 また、外見的特徴として右手の小指にアンとのカゾクの傷があり、背中には鬼の刺青が彫られている。 趣味という程ではないが、神仏の類や遺跡といったセカイが壊れる前のものなどに興味がある。 ✦モチーフ：酒呑童子、角大師、神農 ▋酒己甘という人物 ──────────────────── セカイには昔、各地域に神がいて、それらを祀る社というものがあったらしい。 実際にこの土地にも何体もの神仏像が眠っていることだろう。 それだけの神がいながら、何故このようにセカイは壊れていったのか。 ヒトが淘汰されていく事こそが思し召しだというのなら、随分な手のひら返しだ。 それでも、ヒトは願うしかない。明日を迎えられますように、と。 発見を得るのが好きだ。知識を得るのが好きだ。人の役に立つことが好きだ。 薬学や医学に関しても残されたものは少なく、手探りでやっていくしかなかった。 食べられる草、毒のある草、それらを口に入れ少しずつ知っていくうちにいつの間にか耐性がついたらしい。 それからというもの、扱える薬草の幅は格段に増え、こと薬学の調合においては「鬼才」だと称賛された。 安心した。これで病に苦しむ人たちを救えるのだと。 早速同じ病の症状が出ている患者を集めて薬を投与させた。 結果、半数は症状が治まり、半数は命を落とした。 毒と薬は紙一重、つまるところ強すぎる薬に耐えられなかったんだ。 浅はかさが、慢心が、薬が、ヒトを喰っちまった。 研究としてではなく、ヒトのために医学を学び始めたのはそれからだった。 学んでいる間にも、その大きな失敗が仇になったのか「苦しまずに済む薬」を要望された。 一人でも多く明日を迎えられるようにと願っているのにも関わらず、要望通りの安らかな死を与える薬を渡した。 どうすれば耐えうる状態まで回復させられるのか、学び途中も途中、その場ではそうするしかなかった。 同様に、痛みを極限まで減らす薬は後遺症が酷かった。毒の手前まで近づけるのだから当然と言えばそうなのかもしれない。 死なせたいわけでも苦しませたいわけでもない。ただ目の前の人を救いたいのに、救うことが叶わない。 その歯がゆさと命の重みはヒト一人の精神を狂わせるには十分だった。 アンと出会ったのはそんな時だ。 一人なのかと聞けば、同年代の友達も他に話せるような大人もいないのだと答えられた。 もう何年と物言わぬ薬にばかり向き合ってきたのだから、人との接し方を忘れてしまった。 その時は人好きのする笑顔を作ることもできなかったし、随分淡々とした物言いになっていたような気がする。 「お前さんのカゾクになろう。そうすれば話し相手にも頼れる相手にもなれる」 誰でもいい、ただ目の前の少女を救うことで自分を救いたかった。 半ば自暴自棄のような思考すらも、アンの笑顔を見た途端に吹き飛んでしまった。 とても嬉しそうにはにかむものだから、ウジウジと悩んでいる自分が馬鹿らしくなって、釣られて笑った。 おかしな話だが、この子に希望を、望んだ明日を見たんだ。 アンが胸を張れるカゾクでいよう、医者とはいかずとも近いものになれるように。 それから、約束を守るという願掛けと共に、右手の小指にカゾクの傷をつけている。 指切り、という大昔の風習になぞらえたものだが、この傷を見るたびに前向きな気持ちになれた。 一人でも多くの命を救えるように、アンのように笑って明日を迎えられるように。 病の蔓延るこのセカイを、真っ直ぐに視なければ。 そのために、踏み出すのだ。 「俺は薬師だ。お前さんは？」 人を喰らうは鬼の所業、人を救うは神か、或いは──。 ▋特徴表 ──────────────────── 【3-8：信頼のおける人】 探索者は自分の家族や友人などの仲間を見捨てたり粗末にしたりせず、可能な限り助けようとする人間だ。 その評判が今後も続くかぎり、任意のコミュニケーション技能3つに、それぞれ+10% 【5-6：異物への耐性】 体内の免疫力が発達している。毒(POT)を抵抗表で競う際に、成功の範囲に+20％。 ▋HO2 薬師│秘匿 ──────────────────── あなたは、オオマガドキ教団のニホン支部に務める研究員兼医者だ。 といっても、患者を診るというよりはひたすらに薬の研究、開発を行っていた。 このセカイは慢性的な医者不足であり、そのために教団では薬の開発に最も力を入れている。 あなたはそんな教団のチームリーダーだった。 あなたには薬師として天賦の才があり、材料さえ揃っていればあなたに作れない薬は無かった。 ■特記事項 ・あなたにはアンという妹がいる。 ・あなたは以前、上司であるヒノモトから薬の開発の依頼を受けたことがある。 　どういう効果があるのか、何に使うのかは一切明かされず、ただ調合してほしいとだけ頼まれた。 　気にはなったが、教団に貢献することは教団員として当然であるため、深く追求はしなかった。 むしろあなたには他のことが気にかかった。 薬の材料の中に、「あなたの血液」が含まれていることだ。 ヒノモトから受け取ったレシピには「動物の血液（今回は、【HO2】の物を使用すること）」と書かれていた。 未だかつて血液から生成される薬を作ったことは無い。 調合が成功したのかは分からないが、出来上がったものをヒノモトに渡せば、「よくやった」と、珍しく褒められたことを記憶している。 ▋HO2 薬師│追加HO ──────────────────── ────── 【フランス在住の医者】 貴方はフランスに住む医師である。 その多くは独学であり、若いながらに両親の営んでいた診療所を継ぐことが出来ているのは貴方の類まれなき努力と才能のおかげだろう。 両親が遺してくれたものは、大きな屋敷ともいえる家と、立派な器具の揃った診療所、そして宝物のように愛しい妹だ。 貴方には、年の離れた病弱がちな愛しい妹、アリッサがいる。 両親は貴方が学生だった頃に二人で旅行に行った際、事故に遭って他界してしまった。 妹にとっての親であり兄であるために、貴方は懸命に働いている。 そんなアリッサは先週から二週間程度のウィンタースクールに出かけている、 ウィンタースクールは英語を学ぶための学校による有料課外学習であるが、半分は旅行のようなものだ。両行先は合衆国らしい。 　 そしてアリッサが旅立ってから四日後─── つまり三日前、訪れた聖堂で彼を拾い、三日間の懸命な治療の末、彼は目を覚ました。 しかしどうやら彼は記憶がないようだ。 【目的】 ─── 医師として患者を健康な状態で退院させる。 【秘密】 貴方は怪我をしている彼を運び出す際、彼が黒々とした拳銃を所持しているのを目撃してしまった。 大きな怪我といい、彼には何か特別な事情があるようだ。 拳銃を所持している、という事実を知っていることを、彼にはまだ話していない。 話さないままでも、思い切って話し出してみるのもそれは貴方の自由だ。

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