タグ： ロトカ・ヴォルテラの愛堕討ち

両親は物心ついた頃には借金で首が回らなくなって他界しており、女系が続く親戚の呉服屋に引き取られて育つ。 物腰柔らかでいつも笑顔だが言葉には毒が強く、プライドが高く負けん気が非常に強い。 実の親のことは誰に聞いても教えてくれず、親の顔が見てみたいと言われ続けて育った。自分の生まれ、ルーツが分からないことがコンプレックス。「親の顔が見てみたいわぁ」が口癖なのはコンプレックスの裏返し。 親戚が死んだ親のことでものすごく馬鹿にしてきたため、親戚が嫌いで両親も嫌い。血の繋がりなんてクソだと思っている。 厳しく躾けられたために育ちは良く外面も良いが周りの大人に歪められて育ったため性格は心底最悪で、愛というものは良く分からないしどうでも良い。 ただ、尊敬できる人にはきちんと敬意を払う。完全に対等な友人は極僅かで、接し方も不器用。 元々左利きだったのを右に直されたが、親元から離れていたときに左に戻した。反発心。今は左9:右1。改札や右利き用の器具などを使う程度。 自分が養子であることや実の両親のことは世間には公開していない。 基本的に実家が死ぬ程嫌いで実家の仕事を手伝わされるのも本当に嫌だったが偶に良い縁を貰うこともあり、そこだけは感謝している。 現在の師匠と出会ったのも、呉服屋の客として来ていた縁。彼が初めて出会った尊敬できる大人だった。 周囲の人間皆口が達者だったため自身も幼い頃から非常に口が達者で、おまけに顔も良いのでいつもクラスの中心人物だった。頭も良く、自分から手を挙げて意見を発表したりクラスを取り纏めたり、ディベートやスピーチコンテストに出たり、委員長や生徒会長などの人の上に立つ仕事を積極的に買って出たりなどしていた。そのため周囲からはリーダーシップのある品行方正な人物として評価されているが、その実多くの人間が自分を称賛し賛同する様を上から眺めていることに喜びを感じる気質。 関東某所にて大学生活を過ごしながら地元の狭い世界を出ても顔と口が通用することを確信し、自分はこれで生きていけるな、と思った19の頃に師匠のことを思い出し、手紙を出して会いに行く。返事には「親御さんに大学に通わせて貰っている間は弟子に取ることはできません」と書いてあり、ますますこの人の元で学びたいという気持ちを強くする。大学卒業後、家業を継がせたいがために自分を引き取った親戚ににこやかに猛反発し、家系に男の子が生まれたタイミングで家を出て弟子入りをし落語家の道に進む。 実家とは現在も非常に険悪な仲だが、「恩を大事にしなさい」との師匠の教えを大事にし、「育ててやった恩も忘れて」「名を売るより着物の一枚でも売りなはれ」と嫌味を言う実家の呉服屋で和服を買っている。「うちが売れれば着物も売れるやんなあ」とのことらしい。最近落語家として人気になってきたので嫌味も止んできた。気持ち良い。 今や天才と呼ばれ世間にも知られるようになったが、未だに親子やら夫婦の情やらを描いた人情噺が苦手。 商売人の家に育てられたので金銭感覚はしっかりしており、金にはシビア。 ただし落語家という職についてはプライドを持って携わっているため、「所詮は商売だろう」と言われると笑顔のまま額に青筋が浮く。 人心を掌握したがる気質は大人になるに連れてどんどん歪んでいき、他人の人生を狂わせてその様を楽しむ魔性に育つ。 基本的に行為ではトップでもボトムでも主導権を握っている側。不感症。セックスは性欲を満たすためではなく人を狂わせるための手段に過ぎない。 ……はずが、若頭と流れで寝た際の、自分が自分でなくなっていくような感覚を恐ろしく感じてしまい、行為の後に思わず平手で打って逃げてしまった。 人を容姿で惹き付け口車に乗せ洗脳し支配することが常なので、自分の思い通りにならなかった経験がなく、若頭が思い通りにならないことが気に入らない。と思いつつ、自分の生きてきた文化の外の知識を持つ彼の話を興味深く聞いている自分も居る。 首のタトゥーやどことなく危うい雰囲気を察しながらも彼を選んで寝たのは、彼と彼のルーツを知りたいと思ってしまった好奇心のため。 言葉の解釈を捻じ曲げ自分の言葉すら都合良く二転三転させてくる若頭に対して無性に腹立たしい気持ちになる。 そうやって揚げ足を取ったつもりになっているのだとしたら我慢ならない。 話芸を生業とする自分の前で言葉に対して軽薄な扱いをする若頭は、結局のところ自分を落語家として認めている訳ではないのだと思うと純粋にむかつく。 そんなこんなで会話をしていると何故かいつも食って掛かる側になるのが腑に落ちない。 若頭に対して、あんたが間違っているのだと理解させたい。説き伏せたい。 若頭相手に何もかも上手く行かなくて心底苛立たしかったが、最近女性と路地裏でキスをしたところを若頭に見られたときに、腸が煮えくり返って堪らないと言わんばかりの表情をしているの見てしまい、初めて胸が空く思いがした。堪らなくぞくぞくする。またその顔を見せてほしい。 彼と寝たのと同時期に公演に花が届くようになった。何度目かの花が贈られてきた日の夜、偶然にも若頭と会い流れで飲むに至ったが、その際に贈られてきた花と同じ香りがしてそこでまずおや……？と思っていたところ、あのキス以降ぴたりと花が来なくなって、確信に近いものを得る。 今まではこちらのやることなすことに動揺どころか可愛がりすらしてきた男が。ふうん。と思い、楽しくなってくる。今まで散々合わないと思っていたことがどうでも良くなる。が、最近は仕事が忙しく会えていない。

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