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礼儀を重んじる紳士的な初老の精神科医。脚が不自由な為か杖を愛用するその姿は、どこか貴族のような気品を漂わせながらも人を見る目は一流であり、警察も幾度の重度犯罪事件の精神鑑定や交渉役として彼を抜擢している。あまりにも鋭い洞察眼とプロファイリング能力に警察の中でも薄気味悪いと敬遠するものも居るのだとか。 初老の精神科医という彼の姿にはふたつの嘘がある。ひとつは彼は老人に変装した麗しい青年であること。もうひとつは彼は猟奇的な連続殺人事件を起こした張本人であることだ。連続殺人犯である彼の犯行は常軌を逸脱したそれであった。いかに人の存在を芸術作品に仕立てるか。その芸術的な作品はあまりにもグロテスクかつ倫理を破壊させる奇抜なものであったが、製作するまでのプロセスさえもそれは芸術だった。緻密に人の心理を操り、支配する。そして死の間際に泣き叫ぶ姿が彼にとっては一番美しい姿だと語る。そんな彼は度重なる犯行を行なった末についに警察に捕まり、当然の如く終身刑を迎える身であった。だが彼の天才的過ぎる頭脳や人身掌握の才能を活かせるのではないかと考えた警察の上層部は終身刑の代わりに人生を警察の狗として捧げよと交渉し、彼は第二の人生…小さな病院に勤める精神科医として産声を挙げた。未だにその裏には狂気を抱えながら、彼は柔和な笑みを受け今日も白衣に袖を通すのだった。

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