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幼いころから体格が大きく、なのに運動はからきしで、同級生からいじめ半分のからかいを受け続けていた。 学校の先生も、最初こそ樹を庇ってくれていたが、鈍くさい彼の言動に次第と愛想を尽かしていき、やがては無視するようになった。 顔にあるアザは給食当番を押し付けられ、熱いスープを運ぶ途中に階段で転倒したことによるもの。 だが、一人の新任教師だけは樹に対して親身に寄り添い、話し相手になってくれた。 樹は新任教師を「せんせい」と呼び、唯一無二の存在として慕った。 しばらくして、いつものように待ち合わせ場所である放課後の空き教室を訪れた樹。 そこで目にしたのは、首を吊った「せんせい」の姿だった。 呆然と彼の姿を眺めることしかできない樹だが、やがて彼の足元に一枚のカードが置かれているのに気が付く。 「僕たちにとって、死は死ではない」 メッセージの意味も分からないまま、樹はそのカードをポケットに仕舞い、叫びながら教室から駆け出した。 あれから十数年。樹は人との関わりを拒みながら生きてきた。 幸か不幸か体格はますます大柄に育ったため、威圧的な容姿を盾に他人を遠ざけ、最低限しか接しない。 また、動物相手なら自分のコンプレックスを気にする必要がないという理由から、動物園の飼育員として働く。 人と話すのは苦手だが動物の扱いは上手で、その点では園からの信頼も厚い。 趣味はソロキャンプ。海でも山でも、広々とした自然の中で過ごすのが好き。 あの時拾ったカードは未だに持て余しつつ、財布の奥に潜ませている。

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