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吾妻健春 手の届かない範囲まで救わんとする、愚かな人で彼は無く。 都内屈指の大学病院である吾妻医院 そこに務める者が先ず習い、与えられるものがある 鋏だ どんなに頑丈に縒られた縄でさえ一太刀で断ち切れる優れた鋏 それを院内の全員が所持している それは何故か そう この病院きっての名医、そして院長の息子でもある吾妻健春 この男がその辺で首を吊りまくっているからである まあびっくりする程自殺癖 自殺マニアの御曹司 こんな子何処にも出せないよ！！！ 院長である父は言う しかしどうにも才は有るので、死なない程度に扱き使う 最近もう医者不足だからね 自殺癖さえ除けば彼は有能で、患者に対しても慈悲を持ち、手の届く範囲に来れば必ずと言っていい程に最善を尽くしてくれる 手の届く範囲の者でさえ救えなかったからこそ、彼は人生というものに絶望を抱いて生きている。 海で死んだ母は、今何処にいるのだろうか 彼はよく空に問い掛けていた 彼が研修医を終えた記念の日。 父と、母と、海に出ていたんだ。 そこで……異国の子だろうか。 15歳くらいの男の子が流されてきたんだ。 恐らくは波に流されて来たんだろう。 母は泳ぎが得意だったから、それを。 何も無ければよかったのにな。 彼はね、突然目を見開いて母に噛み付いたんだ。 それはもう狂気に犯されたと言っていい瞳で。 そのまま少年は溺れてしまったんだけれど、僕も父も、すぐ気付いたんだよ。 狂犬病だって。 恐らくは彼、捨てられたんだ。 そしてたまたま流れ着いた。 急ごう。急げば、急げば何とかなる。 何とかなって欲しかったんだ。 神様は残酷だね。 そういう時に限って、人の造りしものを壊していく。 嵐。 モーターも無線も壊れたんだ。 狂犬病は直ぐに対処して、ワクチン接種で様子を見て、発症しなければ何とかなる。 そんな病気なのに。 僕らはずっと、海の上。 日に日に不安に苛まれる母親を、必死に宥めて、宥めて、助けを待ったけれど。 駄目だったんだ。 ある朝、母はもう船の上にはいなかった。 嗚呼。 人間って無力だ。どうしようもない。 どうしようもないね。 医師としては完璧に、人としては最悪に。 僕を僕たらしめる絶望の何たるか。 少年の苦しみも、母の苦しみも、救うことは何も出来ずに。 どうしようもなく、無力で、哀れで、滑稽な。 致し方の無い人間賛歌。 死に切るまでは、生を紡いで。 特徴表 2-1 手先が器用 任意の〈製作〉1つの基本成功率が50%となる(プレイヤーは分野を決めること)。さらに〈機械修理〉および〈電気修理〉に+10%。 2-7 珍しい技能 探索者は[INT×5]%の、日常生活では役に立たないが特定の人を感心させるような技能を1つ、キーパーと相談した上で持つことができる。

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