タグ： 植木鉢たかはし

「2人の時はいいですが、仕事中本名呼ばないでくださいよ？」 「全く、仕方ない人ですね」 「5分あれば、余裕でしょう？」 「感謝は、していますよ。……分かってるでしょう、聞かないでください」 　遺書屋の片割れ、『届人』 　基本的には誰に対しても塩対応。淡々と物事をこなし、表情もほとんど変わることがない……が、その実、中身は結構人懐っこく、大切な相手のことは軽んじることが出来ず、寄り添ってしまいがち。とはいっても、今現在の大切な相手、は相方の殺人に限られるのだが。 　家族は一応父親がいるが絶縁状態で現在どうしているかは知らないし、知ろうともしない。 　遺書というものに惹かれている。それは幼少期、父親が仕事で全く家に帰らずにいた頃、母親がパートの掛け持ちで精神を病み首を吊った時、それを遺していたからだ。 　死んでもなお残り続ける『愛してる』という言葉に縋り、執着した。残されたという孤独感より、愛されていたという事実に寄りかかったのかもしれない。 　殺人に対して書きたい遺書の内容は決めている。 ・パソコンのIDとパスワード ・仕事に必要なもの以外は処分するか、自由に使って構わない ・全ての貯蓄、資金の場所と取り出し方 ・骨は拾えたら拾うくらいでいい。その後は好きにして構わない ・最後に「あなたと過ごした日々は、とても満ち足りたものでしたよ、ありがとう」と 　この辺を書きたい。が、書き起こせない。全く、困ったものですね。明日死ぬとも分からないのに。 誕生日 10/9

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