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バルバトス=ヴァン・ライオット。私掠船(しりゃくせん)の船長。本名バルバトス=ヴァン。敵国の船を数多く沈めており、敵国から「暴動」の意味を持つ「ライオット」の異名で恐れられている。船と砲の扱いに非常に長けていて、剣の腕も一流。さらに人望もあることから、クルーの中には彼を慕い英雄視する者もいる。 自他ともに厳しいが、仕事以外では気さくな人物である。よく言えば分け隔てなく、悪く言えば身分を弁えない態度で接するため、貴族や王族の反感を買う。 クルーにとっては、仕事でヘマしたら恐ろしいが、逆に個々人の働きを見てくれるいい船長。使える人間、もとい有能な人間だと判断すれば、敵船のクルーであろうがなんだろうが引き抜く。そうやって彼の船のクルーになった者も多い。 宴会などの賑やかな席が好きで、よくクルーたちに混ざって飲んで騒いで盛り上がる。酒には強く、毎回のように宴会が終わって酔い潰れたクルーを世話している。翌日目覚めたクルーたちが必死に謝りに来て、それを笑って流してから仕事に戻らせるまでがいつもの流れである。 煙草は好きなわけでも、嫌いなわけでもない。一番古参のクルーが言うには、彼が使っている煙管はずっと同じものだという。以前そのクルーが新調することを勧めた時、「今のが気に入ってんだよ」と一蹴された。 元貴族の三男坊。代々騎士を輩出する家系で、家督相続権がない彼は幼い頃からひたすら剣術を学ばされていた。航海記などの書物を通して異国へ興味を持ち、船乗りになりたいと父親に訴えたが、兄達の下で一生家を支えろと言われ、却下された。一生家に縛られることに耐えられなかった彼は15歳の時、政略結婚が決まった際に父親と激しく衝突、その結果家と縁を切り外の世界へと飛び出して行った。 行き当たりばったりで計画も何もないまま出てきたので、港町に辿り着くことはできたものの、持ち出してきた路銀代わりの宝石類も尽き、野垂れ死ぬばかりだったところを、丁度停泊していた民間商船の船長であった師匠に拾われ、船の操縦、海上での心得、航海についてを学んだ。師匠は彼を息子のように可愛がり、彼も師匠を慕っていた。クルーたちも実力をつけるにつれ彼を認め、「世界の全てを制覇する」という彼の夢を応援してくれる仲になった。 私掠船行為が認められ始めた頃、彼は25歳になっていた。航海の腕も師匠と並ぶまでになり、彼はある日の甲板で師匠に聞いた。 「一つ聞いていいか？」 「うん？」 「俺とあんただったら、どっちの方が船長に相応しい？」 「俺に決まってんだろ。まだ弟子に負けるわけにはいかねえよ。」 「…そうかよ」 「そうへそを曲げんな。俺はお前が一人前になるまでずっと待っててやるから」 そう言って師匠は笑ってガシガシと彼の頭を撫でた。豪快な人だった。器が大きく、沢山の仲間に慕われる、素晴らしく眩しい太陽のような人だった。 だから、 「親父っっ！！」 親父が俺に落とした影も、離れることはなくずっと俺に付き纏い続けている。 師匠と話した数日後、船は敵国船の襲撃を受けた。戦いに慣れていない彼らは次々殺されていき、残ったのは師匠と彼と数人のクルーのみ。敵に囲まれ傷を負った彼は決死の覚悟で前に出ようとしたその時、肩をグイと引かれ食料と水が載ったボートに放り込まれる。彼をボートに放り込んだ師匠は、一人のクルーに何やら合図をすると、そのクルーは泣く泣く自分もボートに乗り、勢いよく漕ぎ出した。 何度叫んでも振り返ることはなく、傾いた夕日が彼に影を落とす。顔の傷口に塩水が染み、痛みが熱をもってきた頃、小さくなった影は見えなくなった。 生き延びた彼はその後有志を集め、王に認可を得て私掠船の船長となった。敵国船に容赦がなく、苛烈な戦い方から「ライオット」の名がついた。 「俺はずっと、あの人の背中を追っている。太陽のように眩しかった親父のことも、今では知ってるのも俺だけだ。俺はそんな風にはならねえ。後世にこのバルバトス=ヴァン・ライオットの名を刻みつけることで、勝ち逃げした親父に俺の勝利を見せつけてやる」

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