タグ： Quirinus 群像流転

茅踏村で生まれ育った。 村の外に出たことが無く、小学校でも教えてくれる教師はいるが教室にいる生徒は一人きりだ。 物覚えの良さも相まって、学校の授業では好成績を収めていたが…… 困ったのは体育の時間だ。 生徒が一人しかいない学校……学校？に満足な遊具があるわけもなく、 できる運動といえばかけっこや、先生との鬼ごっこ、かくれんぼ、キャッチボールくらいであり、 彼女は身長のわりに大人と比較しても足が早く逃げ隠れするのが上手かったため、 先生の調子が良くない時や、勉強が順調すぎて空いた時間は外を駆け回っている。 山や川で遊んだり、家まで大きめの石の上以外はマグマ！という仮定をして跳んで帰ったり。 体の動かし方というものを彼女はよく理解していた。 休みの日には山や川へ遊びに行く以外では、村の人たちから昔ながらの手毬歌を教わって歌ったり、 山で採れる山菜を教えてもらったり、簡単なお手伝いをして過ごしている。 晴れの日は外に行くのもいいのだが、当然雨の日もあるものだ。 そういう時は小さな木片を使った木組み細工にハンコを作ったり、 山で見つけた動物を思い出せる限りで版画にしている。 彼女の自由研究は６年通して村の動植物や虫の観察だ。 水場に隠れて飲みに来る動物を見てみたり、うんちを木の枝で突いてみたり、何を食べるのかこっそりとついて行ってみたり。 毎年毎年見ていると、子供だった動物がすごく大きくなっていたり、見かけていた子が消えてしまったり…… 感動することもあれば、物悲しくなることもあるが、村も山も変化が絶えない。 この村の中だけでこれほど楽しいのであれば、外にはもっと楽しいことがあるのかもしれないと、 たまに村に外から来た人に話しかけてみるが、どうもみんな急いでいるのかあまりお話をしてくれない。 良い村なのに、そうした人たちはここに住まずにまた外に出て行ってしまうのが不思議でならない。 彼女と話をしてくれて、彼女と同じように村を好きになってくれる人を、彼女は待っている。

※歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
↑ページ上部へ