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キアラ・エレイス (Chiara Elaith)
ID:5303401
MD:e0936c7e9a67b4f8470efda6c3b97b9e
キアラ・エレイス (Chiara Elaith)
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ν
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能力値・HP
肉体
感覚
精神
社会
HP
侵蝕
行動
移動
シンドローム:
エンジェルハィロゥ
バロール
ブラックドッグ
ブラム=ストーカー
キュマイラ
エグザイル
ハヌマーン
モルフェウス
ノイマン
オルクス
サラマンダー
ソラリス
ウロボロス
アザトース
シンドローム2:
エンジェルハィロゥ
バロール
ブラックドッグ
ブラム=ストーカー
キュマイラ
エグザイル
ハヌマーン
モルフェウス
ノイマン
オルクス
サラマンダー
ソラリス
ウロボロス
アザトース
オプショナル:
エンジェルハィロゥ
バロール
ブラックドッグ
ブラム=ストーカー
キュマイラ
エグザイル
ハヌマーン
モルフェウス
ノイマン
オルクス
サラマンダー
ソラリス
ウロボロス
アザトース
ワークス分→
←ワークス分
作成時ボーナス / 初期能力値:
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3
成長での修正
その他修正
能力値
肉体
感覚
精神
社会
HP
侵蝕
行動
移動
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ライフパス
ライフパス
名称
効果、解説
ワークス:
小学生
中学生
高校生
不良高校生
大学生
フリーター
教師
主婦・主夫
UGNチルドレンA
UGNチルドレンB
UGNチルドレンC
UGNエージェントA
UGNエージェントB
UGNエージェントC
UGNエージェントD
UGN支部長A
UGN支部長B
UGN支部長C
UGN支部長D
刑事
鑑識
弁護士
防衛隊員
傭兵
研究者
教授
看護師
医者
政治家
ビジネスマン
エグゼクティブ
水商売
商店主
宗教家
探偵
ボディガード
ドライバー
ヤクザ
マフィア
泥棒
ネゴシエーター
暗殺者
占い師
アーティスト
歌手
俳優
奇術師
アスリート
格闘家
記者
アナウンサー
プログラマー
ハッカー
何でも屋
情報屋
工作員
レネゲイドビーイングA
レネゲイドビーイングB
レネゲイドビーイングC
レネゲイドビーイングD
イヌ
ネコ
ネズミ
ウサギ
トリ
サル
ヘビ
シカ
ゾウ
イノシシ
カエル
トカゲ
その他A
その他B
その他C
その他D
幻想動物A
幻想動物B
幻想動物C
幻想動物D
オカルティスト
作家
探検家
動画配信者
超心理学者
考古学者
古物研究家
ディレッタント
詐欺師
古書店主
技術者
船乗り
ハンター
農家
地主
ホームレス
放浪者
入院患者
自営武装団
カヴァー:
覚醒:
死
憤怒
素体
感染
渇望
無知
犠牲
命令
忘却
探求
償い
生誕
衝動:
解放
吸血
飢餓
殺戮
破壊
加虐
嫌悪
闘争
妄想
自傷
恐怖
憎悪
出自:
経験:
邂逅:
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エフェクト
エフェクト
SL
タイミング
判定
対象
射程
コスト
制限
効果など
クラスなど
ワーディング
★
オート
自動
シーン
視界
-
-
非オーヴァードのエキストラ化
初期
リザレクト
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3
気絶時
自動
自身
-
[SL]d
100↓
コスト分のHPで復活
初期
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イージーエフェクト
イージーエフェクト
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技能
初期習得
技能名
SL
修正
判定値
参考
能力
技能
白兵
回避
運転
射撃
知覚
芸術
RC
意志
知識
交渉
調達
情報
運転
芸術
知識
情報
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戦闘・武器・防具
武器・コンボ名
値段
命中値
G値
攻撃
力
射程
その他
技能
能力置換
補正
計
白兵
射撃
RC
運転
交渉
置換なし
肉体
感覚
精神
社会
最大能力
2番目の能力
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合計
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防具
価格
装甲
回避
行動
その他
能力値/修正値
合計
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所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
所持品合計
pt
武器・防具・装飾品の価格合計
pt
初期財産ポイント:
現在の財産ポイント:
価格総計
pt
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簡易表示
通常表示
ロイス
カテゴリ
対象/名称
好意
悪意
効果・備考など
-
D
S
ロイス
←自由選択
傾倒
好奇心
憧憬
尊敬
連帯感
慈愛
感服
純愛
友情
慕情
同情
遺志
庇護
幸福感
信頼
執着
親近感
誠意
好意
有為
尽力
懐旧
←自由選択
侮蔑
食傷
脅威
嫉妬
悔悟
恐怖
不安
劣等感
疎外感
恥辱
憐憫
偏愛
憎悪
隔意
嫌悪
猜疑心
嫌気
不信感
不快感
憤懣
敵愾心
無関心
-
D
S
ロイス
←自由選択
傾倒
好奇心
憧憬
尊敬
連帯感
慈愛
感服
純愛
友情
慕情
同情
遺志
庇護
幸福感
信頼
執着
親近感
誠意
好意
有為
尽力
懐旧
←自由選択
侮蔑
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嫉妬
悔悟
恐怖
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疎外感
恥辱
憐憫
偏愛
憎悪
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不快感
憤懣
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無関心
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好奇心
憧憬
尊敬
連帯感
慈愛
感服
純愛
友情
慕情
同情
遺志
庇護
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偏愛
憎悪
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嫌悪
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憧憬
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慈愛
感服
純愛
友情
慕情
同情
遺志
庇護
幸福感
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慈愛
感服
純愛
友情
慕情
同情
遺志
庇護
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好意
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偏愛
憎悪
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純愛
友情
慕情
同情
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執着
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隔意
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嫌気
不信感
不快感
憤懣
敵愾心
無関心
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成長履歴
回
経験点 / 獲得総計
点
メモ(セッションの内容など)
達成経験
侵蝕ボーナス
ボーナス
獲得計
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点
2
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点
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点
3
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点
点
初期作成時の経験点は手入力可能。基本値より少ない場合は必ず入力すること
能力値
エフェクト
技能
合計
使用
点
点
点
点
初期作成時経験点
点
合計
点
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パーソナルデータ
キャラクター名
コードネーム
タグ
種族
年齢
性別
身長
体重
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
PC5: シナリオロイス:???(リバースHOに記載) あなたは世界大戦にフランス軍の外人部隊として従軍し重傷を負った旧友、ランドルフ・カーターを見舞うべく、アーカムにある彼の屋敷を訪れていた。寝台に横臥した彼は熱に浮かされたように呻きながら、大陸中央に発生した嵐の中で邪神の遠大な陰謀が結実しつつあり、事態を放置すれば世界の大半の人々が悲惨な結末を迎えることになるだろうと述べる。あなたは傷付いた彼に代わり、邪神の企みを阻止することを約束した。最後に彼は、邪神の力を打ち砕く鍵となる人物の名をあなたに告げたのだった___。 ◯役割 単体アタッカー、クライマックスではダメージバッファーも兼任 ◯補足 ※ダメージバフは時間凍結した後に起動なのでちょい遅い(低速以外のイニシアチブ範囲攻撃や、高速単体アタッカーには間に合わない場面あり) ・ミドル戦闘は控えめ(低行動値微火力の単体攻撃のみ) ・最低限の移動距離(11m)と命中(4dx+21@10~)、情報収集能力(情報系全般3d+3、一度でも判定失敗で+2消失) ・防御性能皆無どころか最終戦闘時に一度自害してロイス1つ飛びます ◯あったら嬉しいこと ※時の棺等の先手攻撃対策(行動値4の時間凍結までの時間稼ぎ) ◯あったら経験点が若干浮くこと ・移動力(or行動値)を恒常的に1でも上昇させる効果 【容姿等】 修道女服を着た女性。基本的に困った相手を助けようと動く、献身的な性格。タイミングに依って、その修道女帽の下に獣の耳が現れ、それが動くのを見て取れるかもしれない。 ・能力ルーツ:モルディギアン 【取得予定の変なデータ】 ・Aオーヴァード、リタイアード&アフターライフ、ゼノスネットワーク、特異体、濃縮体、適合体、モデルチルドレン、オーヴァードダッシュ 【略歴】彼:アライグマ、彼女:食屍鬼狩りの修道女 食糧不足で飢え死にしかけていたアライグマが食屍鬼の死体食べてその特性獲得(同族喰い、人間喰い、屍肉食、食べたものの特性を取り込む特性)。それらを食わなければ飢えが満たせなくなった。 初めに共喰い(番や我が子なども)するも、やがて満たされなくなり、人間の屍肉を食い荒らす→人間の心、倫理観、道徳、知性を獲得。自分の悪食に嫌悪感と罪悪感で断食→飢えに支配されて人肉漁りを繰り返す→濃縮体獲得。また肉体も通常の種とは異なる様に変貌していった(オーヴァードダッシュ) 食屍鬼狩りの修道女と出会い、生活を共にする。彼女の清らかさに心奪われるも、屍肉漁りが見つかり脱走。その後食屍鬼の地下帝国に棲む。そこではモルディギアンンが奉られ、宥めるために死者が献上されていた。そこである程度の地位につく。 ある日、彼女が食屍鬼に殺され、その死体をモルディギアンに奉納する役を彼は担う。邪神の前で彼は、彼女だけは渡せないと懇願し、その怒りに触れる行いをするが、モルディギアンは地下の食屍鬼と彼の身体を食い尽くしただけで、彼の魂と彼女の魂を彼女の肉体に返す。この時、同時に彼女の胃袋と自分の口を異次元の回廊を通じて繋げ、死者を喰らえば邪神への贄として送られるように弄った。そのついでに、無数の食屍鬼の肉体を媒介として邪神の力の一端も授けた(適合体、特異体)。そして彼女の意識の覚醒が強烈な飢餓感のトリガーとなり、彼は彼女の心身を生かし続けるために、彼女の意識と共に彼女の体を以て、屍肉を漁る。 ※補足 ◯彼女 食屍鬼狩りの修道女。親を食屍鬼に殺された。復讐というより不幸を繰り返さないために生きる、聖女のような善人。職業柄ランドルフ・カーターと交流があった。 ◯現状 肉体は彼女(シェイプチェンジ:ヒューマン)だが、邪神の催促による飢餓状態では獣の姿。邪神の催促がない限り人肉食はせず、ひたすら飢えを耐えている。意識は基本的にアライグマの方で、彼女は邪神の催促が来た時だけ飢餓感と共に目覚めさせられる。 彼女と交流のあったランドルフ・カーターに真っ先に何か手立てはないかと頼るも、進展はない。ただ、手がかりを探し続けて、また彼女が生前願い続けた人々の平穏のために、狂気の世界で戦い続ける(その使命感からモデルチルドレン) ◯何故アライグマ? データ的に欲しかった。後付理由として、グールの体型が犬と表現されるが、クマイヌと言われるアンフィキオン科の方が近いと感じ、CEに挙げられたワークスの中で、その種に最も生物学的に近いのがアライグマ(クマ下目)だったため。 【経歴】長過ぎるので上述の略歴参照推奨。略歴に細かい心情描写がくどく追記されているだけなので読まなくて良いもの(1万2000字弱) それは、異常に冷えた夏の年のことであった。植物はろくに育たず、森は衰え、次々と野生動物が餓死していった。ごく普通のアライグマであった彼も飢えて生死を彷徨っていた中、奇妙な屍を発見する。猿のように胴に比べ手足が長く、犬の様な顔つき、自分より何回りも大きいが熊と呼べるほどの大きさではない、初めて見る生物の死体であった。野生動物である彼にさえも、その屍の臭いには不快さを覚えざるを得ないほどで、ただの腐臭だけではない異臭が漂っていた。それでも飢え乾いたその身にとっては代え難い馳走であり、彼は一心不乱に屍肉を貪った。吐き気の催す臭いの血肉が肉体へと染み渡り、新たな境地へと至る様な快感が身を包んだ。 そうして自分の身体よりも何回りも大きな肉を数日かけて平らげて、餓死を免れた彼は、また痩せさらばえた森を彷徨っていく。ただ一頭の屍肉、されどその恵みは大きく、血は喉を潤し、肉により熱量を取り戻し、また体の底から不思議と奇妙な力が湧き上がり、小さな体に全能感さえ覚えるほどであったという。こうして一時的な危機を乗り越え、それからも彼は飢えた森を彷徨い、何とかして食いつないでいく。しかし、数ヶ月して彼は異変に気が付く。食えども食えども腹が満たされず、飢餓感が増していくのだ。身体は動けども異様な苦しみ、焦燥感が腹の中で暴れ回る。それでも食物を求めて彷徨い続け、彼は飢え死んだ同族の遺体を見つける。飢えに取り憑かれた彼はそれを見るやいなや飛びつき、口にする。腐臭纏うその肉を噛みちぎり、血と共に呑み込んだ瞬間、何を食べても満たされなかったあの飢餓感が、猛烈に悦びの叫びを上げた。乾きが潤い、空腹が満たされる、久方ぶりのあの感覚が、途方もない快楽と共に脳を迸る。 彼は見つけたのだ。自身の飢えを満たす食物を。食えども食えども身体を支配する飢餓感を満足させるものを。同族だ。同族を食うのだ。それからの彼はひたすらに同胞を探しては喰らいを繰り返した。過去の記憶を頼りに親の縄張りを探して喰らい、かつて番となった雌の下へ向かい子ごと喰らい、無遠慮に侵入した他の雄の縄張りの主を喰らい、交尾をして産ませた子と一緒に雌を喰らい。その飢餓感に押し動かされるままに同胞を喰らい続けた。 やがて彼の身体は通常の個体から外れた姿形へと変貌していた。顔は犬の様に突き出たものになり、四肢は猿のようにやや細長くなり、身体は一回り大きくなっていた。その頃になると、どうしてか彼の飢餓感は同胞を喰っても中々満たされなくなった。彼は焦った。またあの地獄のような飢えを味合うのは、何としてでも避けたかったのだ。だから、飢えがまだ満たせている内に再び貪欲に多種多様なものを、それらが自身の飢えを満たさないと悟った上で、食べ始めた。 それはある夏の日であった。直立の二足歩行で細い手足を持つ、やたらと縄張り意識が強く、奇妙で頑丈なねぐらを持ち、恐ろしいほどに大量の食物を蓄える習性のある、異様な動物——大量の人間が、恐ろしい轟音を響かせ、その手に持った長い"爪"で互いを殺し合っていた。その野蛮な争いは季節が幾度も変わる程の間続き、周囲の森さえも切り刻まれるのではないかと戦慄するほどであった。そんな中、幾つもの屍が野晒しになっていた。常であれば奴らは同胞の死体を火に焚べるため骨しか残さず、この機を逃せば奴らの屍肉にありつける日は来ないだろう。ならばと彼は、あの奇妙な猿擬きがいなくなった深夜、ひっそりとその屍の山に近付き、蛆が湧き腐った肉に喰らいついた。そうして彼は三度目の、あの飢えが満たされる快感に呑まれる。しかも今回は飢えに飢えた果てではない。まだ同胞を食べたばかりの時期なのにだ。その満たされる快感は何物にも代えられない報酬系への暴力であり、もはや我慢することなど出来ず、物理的に腹に入る限界まで一心不乱に喰らい続けた。一口、また一口と、肉を、臓物を、血を、脳髄を喰らう度にこれまでの自分が破壊され、頭が冴え渡っていく。世界が広がっていく。その情報の濁流に、彼は呑み込まれていった。 翌日も、翌月も彼は人間の屍肉を喰らった。幸い人間達の争いは未だ続いており、屍は幾らでも転がっている。それらを、人間には見つからないように喰らい続けた。一人喰らう度に、知覚が鋭くなる。脳の靄が晴れ渡っていくように消えていく。これまでの自分はなんと愚かだったのだろう。これを一口喰らう前の自分はなんと愚かだったのだろう。自分の頭の構造が変わっていくのを実感する。その感覚はどんどんと加速する。より賢く、より教養を持って、人を喰らう度に、飢えを満たす度に、彼は人の言葉すら理解していく。 やがて遂に、彼は人の心を創り上げる頭まで、手に入れる。そうして、彼は気付いてしまう。過去の行いの悍ましさを。同胞喰らいの過ちを。親殺し、子喰らいの大罪を。愛した番を殺した無慈悲さを。無数の屍を喰らう冒涜を。その瞬間、彼は大粒の涙を流しながら絶叫した。無知蒙昧であった過去の自分の愚かさを嘆き恥じた。自分の命を、欲望を優先して蹂躙し続けた過去、親を信じて無抵抗に噛み殺した我が子達の瞳、それらを守ろうと必死に牙を向いた我が妻達。自らの凄惨な行いの数々が蘇り、全てが自分を倫理的に攻撃する。何故過去の自分はあんな大罪を犯したのか。それどころではない。今なお眼の前の死者を辱め、浅ましく屍肉を喰らう姿。ああ、何故こんな醜いものが生きているのだ。そう思い至り、吐き気が込み上げる。自らの喉を掻きむしって死んでしまいたい衝動にすら駆られ、その夜は穴蔵に頭を突っ込み延々と泣き喚いた。 そうして数日、数週間と時間が経ち、それでも彼は死ねなかった。何か超自然的な力は既に彼の身体に宿っており、それが彼に死を許さなかったのだ。それでも飢餓感が刻々と募っていく。駄目だ、これ以上罪を重ねてはいけない。お願いだ、贖罪をさせてくれ。そんな罪人の願いなど嘲笑するように飢えは積り、朦朧とした意識下では理性など粉砕され、気が付いたときには再び月の下で人間の遺体を平らげていた。中毒的な快感に満たされると同時に、罪悪感が吐き気を催す。けれども一片たりとも無駄にはしないとでも言うように人肉は喉の奥から顔を出さず、ただ不快な涎だけを撒き散らすだけであった。 そこからの彼の生活は、それまでのそれとは異なった地獄と化した。罪の意識に苛まれひたすらに引き籠もり、飢えて死のうとしてはその飢餓感に支配されて人間の屍肉を喰らい罪を犯す。その度に人間としての心は育ち、罪の意識は肥大化し、拷問的な飢餓感で己を虐めるも、屍肉喰らいは抑えられず、悪循環へと陥っていく。 悪食に囚われ続けた日々の果て、彼はある人間の女と出会う。その日は死ぬのに手頃な崖を求めて歩き回っていた。すると、丁度つい先程崖崩れが起きたような跡があり、下を覗き込むと人間の女が倒れていた。初めそれを屍と思い近付いたが、どうやら気を失っているだけの様であった。あれでは飢えは満たせぬと、去ろうとした所で、考えが過る。今ここで彼女を一人で置いていけばどうなる?すぐには死なないかもしれないが、野生動物がやってくれば?そうなれば、自分の行いは命を見捨てることで、それはお前が殺したことと何が違う?と。だから彼は、修道女服と呼ばれるものを来たその女から離れることも出来ず、喰らうことも出来ず、ただ隠れて見守った。幸い死臭を纏う彼に好んで近付く動物もおらず、争いは発生しなかった。 暫くすると彼女が目を覚ました。ただ様子がおかしい。どうやら足を酷く痛めたようで、立ち上がることすら難しそうだ。森で動けなくなった動物の末路は悲惨だ。死は直ぐ側にある。仮に襲われなかったとしても飢え死ぬだろう。ありありと目の前の女の末路が脳裏を過ぎり、気が付くと彼は駆け出していた。何か食えるものはないか。果物、木の実、虫。人間は腹が弱いし顎も弱い。だからうんと食べやすいもので、水も必要だ。なるべく急いで、彼女が襲われぬ内に戻らねば。そう、同胞よりも何回りも大きくなった身体を必死に走らせ回った。それ程までに彼を突き動かしたのは、きっと罪の意識だったのだろう。加えて、飢えという生き地獄への実体験を伴った恐怖も、それに拍車をかけた。 数時間ほどして、一食分は賄える程度の果実を集められた。水は器が無く集められなかったが、その分食物がたっぷりと水気を含んでいる。これなら一晩くらいは持つだろう量だ。それを、ひっそりと彼女が見える位置まで持ってきて、ふと思った。どんな顔をして行くというのだ。自分の姿を見よ。同胞を、人間を喰らい、醜く膨れ上がったその姿。熊とも猿とも人間とも犬ともつかない唾棄すべき身体。こんなものが持ってきた食料など口にできようか。信用できようか。徒に彼女を脅かして終わりなのではないか。それでも放っておけば彼女は野垂れ死んでしまう。どうする。どうすれば。そう思い悩み、やがて彼は決心した。 体中に大きな葉を貼り付け蔦で結い、全身を覆い隠したなんとも奇妙な出で立ちで、日も落ち月も射さぬ暗闇の中、彼女を脅かさないようにゆったりと近付いた。当然、その胡乱な影に彼女は警戒するが、彼は頭を低くし、まるで捧げ物をするかのように集めた果物を1枚の葉で包んだ風呂敷を掲げ、彼女の近く、這えば何とか手が届くくらいの位置に、それを置いた。そして中から一際青く、固くて不味そうなものを一つ取って、それが安全であることを示すように彼女の前で平らげて見せて、再び頭を低くして離れて、やがて暗闇に姿を隠した。怪しげな獣の奇行に戸惑いながらも、彼女はそれでも彼の去り際に反射的に声をかけた。少し口ごもり、言葉を選びながらも、それでもはっきりと、彼女は「ありがとう」と、彼に感謝を告げたのだった。その言葉を聞いた時、彼の目から自然と涙が流れた。悍ましき怪物に成り果て、飢えの苦しみに藻掻き、悪行非道を重ね、死に損ないの生き地獄に孤独であり続け、喰らった同胞と人間に懺悔する日々に、彼はとうとう初めて感謝の言葉を貰った。罪が洗い流されるような心地であった。その一言で、お前は生きていて良いのだと、全てを許されるような気持ちであった。獣は、初めて触れた暖かさに、走りながらおんおんと泣いた。 その日、彼は夜通しで道具作りに明け暮れた。獣の身なれども人の賢しさを持つ彼は、器用に四肢を使って、蔦を撚り、木の実の殻をくり抜き、枯れ木を加工し、器と添え木を作り上げた。次に、僅かな眠りを取った後は、日が明けてすぐに森を歩き回り、目ぼしい物を集めていく。それらを必要ならば加工し、彼女に役立つものを準備していく。支度が終わると、彼女のいる場所の周囲を徘徊し、危ない獣が近付かないように歩き回り続けた。自分も、決して彼女の近くには行かないように注意しながら。やがて日が沈み、人の目では自分の姿を満足に見れない時間になると、やはり身体を葉で隠しながら、準備したものを持って彼女の下へ向かった。 真っ暗闇の中揺れる葉音に最初は身構えたものの、やってきた客人に警戒心を解く彼女の姿を見るに、どうやら一日中現状改善をしようとして結果にならなかった藻掻きがいたるところに見えた。彼は、早速捧げ物のプレゼンを始める。まずは食料と水。次に傷によく効く薬草。痛めた脚を支える添え木に結わう紐、身体を支える杖と、自らの身体で毒見をし、傷を作っては使い方を見せた。それらが終わると、再び頭を低くして下がり、暗闇に身体を隠した。去り際、やはりはっきりと、彼女の「ありがとう」の言葉が聞こえ、涙しながらそれを噛み締めた。 2日もすると、彼の捧げ物のおかげか、彼女は歩けるようになり、この森を去ることを彼に告げた。寂しさを感じつつも、それでも悍ましきこの身が命を助けられたことを実感して、思わず天に祈りを捧げた。そして彼女が去って森を出るまで、隠れながら付かず離れず、彼女の行方を見守り続けた。やがて森の終わりが目の前まで来た頃、彼女はふと立ち止まり、独りで何か声をかけた。「そこにいるのでしょう。優しい獣さん」その言葉に、びくりと驚き、姿を見られていないか不安になりながら、返答しなければと隠れていた木の葉を揺すった。彼女は恥ずかしがり屋な恩人に苦笑いすると、「どうか、姿をお見せになって」と続けた。彼は当然躊躇する。自分の醜き姿を、罪の結果に成り果てた身体を見せる恥、それを見た彼女がどんな表情をし、どう思うのか、想像しただけで震えてくる。それを察したのだろうか、彼女は「どんな姿でも、恩人を恐れることなどありません。私はそれ程薄情な人間に見えますか?」と。それでも心の大部分を占めるのは不安であった。ただ、そんな彼女の暖かさに触れ、彼は光に吸い寄せられてしまった。急いで見繕った葉で顔だけでも隠しながら、ゆっくりと、少しずつ姿を表した。彼女は、同じくゆったりと近付き、優しげな手付きで彼の頭を撫でながら、その葉をどかしてこう言った。「あら、とてもかっこいい顔つきじゃないですか。どうしてそんなに隠してしまうの?」慈母めいた笑顔と言葉の光で、彼はまたしても浄化されるような心地であり、涙を流して思わず彼女に祈りを捧げた。大それた行いに若干戸惑いつつも、彼女はこれまでの彼の過酷な境遇を予想し、温かく抱擁し、彼を受け入れた。「そんなに卑屈にならなくていいのよ。あなたはこんなに立派なことをしたのですもの。本当にありがとう」光が眩しかった。怖いくらいの暖かさで、年甲斐もなく彼は彼女の胸の中でおんおんと泣いた。 幾分落ち着いて、我を振り返ると少しずつ恥ずかしくなり、身動ぎして彼女の抱擁から逃れると、何を言えば良いのかわからずにいた所、彼女が口を開く。「今更だけれども、あなた、言葉がわかりますのね」頷くと、彼女は更に続ける。「じゃあ私と一緒に来ないかしら。あなた、ずっと独りぼっちだったのでしょう?何かお礼をさせて。そして、もしよければ森の外で、私と旅をしないかしら。私にとっても、連れ合いが出来ると嬉しいわ」その誘いは、あまりにも魅惑的だった。お礼だなんていらなかった。彼女という光そのものが彼にとって幸せであり、光と共にあれるならば、むしろ何かを尽くさなければいけないのは自分のほうだと思った。一も二もなく彼は頷くと、彼女は再び感謝を言った後、抱擁をした。 そして彼は、森を出て、野生の世界から人間の世界へと足を踏み入れる。当然彼女の前で"食事"など出来はしないが、動物の屍肉でも多少は飢えを誤魔化せるし、本来雑食な彼の種としての肉体は、人間の食事でも肉体を動かすエネルギーにはできるのだ。加えて未だ人の世は戦ばかり。また彼女が仕事柄足を運ぶのもそういった危険な地であったため、我慢出来る範囲内で弔われぬ遺体にありつける程度ではあった。むしろ、この飢えは自身への罰であると、彼は感謝した。 ある日、彼女が旅をする理由を彼は教えてもらった。子供の頃、"ショクシキ"という怪物に親を殺されたそうだ。非道で残虐なその怪物は、今なお世界中に潜伏しながら蔓延っており、彼らと共存することは出来ないという。この怪物に齎される悲劇をなくすために彼女は、世界中の神の加護無き地に赴き、修行中の身なれど人々のために祈りを捧げ、時に危険に首を突っ込み、時に怪しげな集団を追い、旅をしているのだという。なんと彼女は、悲しき過去を背負いながらも折れず、同じ悲劇を増やさないために尽力する、まさしく聖女たらんとする存在だったのだ。彼は、彼女と共にあれることを、深く感謝し、一層彼女のために尽力せねばと思った。ただ、彼女は独りではないようで、時折連絡を取り合う存在がいる。その中で最も頻繁にやり取りをしているのが、ランドルフ・カーターという人物であった。その人物も話に聞く限り難儀な人生を送っているようであった。 ただ、彼女との幸せな日々も、長くは続かなかった。その場所では戦があまり起きていなかった。もしくは平和になりつつあった時勢だったのだろう。喜ばしいことであった。彼女も、争いを聞くと悲しそうな顔をする。だから、平和は彼にとっても嬉しいことであった。しかし、飢えは満たされぬ。手頃な遺体は入手できず、動物の死体での誤魔化しには限界がある。彼は目に見えて疲弊していった。それでもこの苦しみが、自分への罰だと、彼は耐えた。受け入れた。感謝さえした。しかしてその衝動は、弱り果てた知性を呑み込んだ。 気が付くと、土の中に顔を突っ込んでいた。眼の前には、棺桶に入った人間の腐りかけの遺体があり、無惨に食い荒らされていた。そして、自身の口はべっとりと粘ついた何かで汚れ、腐臭がこびり付き、あれ程までに己を苛んだ飢えが、随分満たされていた。呆然としていると、背後から複数の足音がやってくる。急いで身を隠さねばと思えども周囲は開けた広場であり、そこに無数の小さな墓石が並んでるばかりであった。もたもたとしていると、すぐにランタンを持った人影が現れ、その光が彼を照らした。そしてその光の持ち主が呆然と、彼の名を呟いた。それは、修道服に身を包み、聖なる印と物々しい武器を携えた彼女であった。戦意に満ち、人々の平和を守る覚悟の宿った瞳。親を殺した討つべき"ショクシキ"の話をしていた時の瞳と同じであったそれは、彼を見た途端に迷いに揺れ、それでも武器を手に取らなければと震えていた。彼は、終わりを悟った。自分は再び己の弱さに負け、欲望に呑まれ、自分の幸せを破壊したのだと、彼女を裏切ってしまったのだと、いや自分の存在そのものが始めから彼女を裏切っていたのだと、悟った。そして、自分で壊してしまったこの幸せを直視できずに、一目散に逃げ出した。迷いに揺れていた彼女は、それに反応できなかったのか、彼を追ってこれるものはいなかった。 彼は暗闇を走った。走って走って逃げて逃げて逃げた。歯を食いしばり、涙を流し、哭きながら駆け続けた。まただ、どうして自分は自分の大切なものを壊してしまうのだ。そして全て終わりきった後に、情けなく泣き喚き、許しを乞う。でも誰がそれを赦そうか。未だ耳に聞こえ続ける同胞の声、人間達の怨嗟、ああどうか、どうか許してくれ、でなければ私を殺してくれと、願えどもこの地獄は終わってはくれない。彼女に触れて、許されたつもりになれていただけだった。彼女の暖かさに甘えていただけであった。人ひとりを助けた所で過去の罪が無くなるか。いやそもそも彼女ならばきっとあの状態でも助けなど必要なく、ただ彼女は優しいから私の無駄な行いにさえも感謝してくれただけで、そうして私に情をかけてくれただけであった。だのに、そんな彼女さえも裏切り、自分は我儘に赦しを乞いながら、童のように泣き、逃げているのだ。 こうして一心不乱に、何日も走り続けた彼は、気付けばかつての森に到着していた。そこは、あのとても冷えた夏の年に彷徨っていた森。ここであの奇怪な屍で腹を満たしたのが全ての始まりであった。そんなことを思い出しながら歩いていると、奇妙な影を見つけた。初めそれは人間かと思ったが、にしては随分背が丸まっており、狼が何かのようでもある。顔も、人間にしてはやや口が突き出たような醜いもので、しかし他の動物にはどれも似つかないような生き物。そこまで観察して、それがかつて自分の喰らったあの屍の同族なのではないかと思い至った。そして彼は、それの跡をつけることとした。もう終わり果てた自分の境遇から目を逸らすようにして。 それはまず、飢えた動物の様に森を徘徊して見つけた屍肉を喰らっていた。腐敗が進みすぎて真っ当な肉食ならまず寄り付かないものを好んでいった。そしてある程度喰らうと、今度はそれを持ってどこかへ運んでいった。森の奥深く、異様に木々が生い茂る場所。反面、動物の声が途絶えた辺り。まるで真っ当に生きるものは近付くことすら躊躇うかのような静けさであった。屍肉を抱えたそれは、鬱蒼とした植物を押しのけると、その下へと姿を消した。少し間をおいて彼もその後に続いて行くと、更に地下へと続く穴蔵があった。その奥へと続いている死臭は、"奴"がこの先へ潜っていったことを示していた。 穴は途方もなく下へと続いていた。曲がりうねりながら、延々と進んでいくと、やがて風の通る音がしてくる。ようやくどこかの出口へと繋がったのかと思い駆け出した先には、広大な地下空間が広がっていた。真っ暗闇の中、どうしてか見据えられる彼の瞳には、ここが"奴"らの生活拠点であり、地下帝国とでも表現すべき場所なのだと分かった。その悍ましい光景に彼が震えていると、いつの間にか奴らの一匹が直ぐ側に来ており、彼を視認していた。彼は、自分はここでそれに襲われて死ぬのだろうと覚悟し、どこか安堵すら覚えていた。だが実際には死など訪れず、何故か固まったままの彼を、それはジロジロと訝しげに見た後、素通りしていった。彼はこの自体に拍子抜けしながら、眼の前を通り過ぎるそれを改めてじっと観察してしまった。猿のように細長い手足、犬のように突き出た顔でありながら、どちらかというと人間に似ているが、丸まった背は四足で歩く熊に通ずる。そこまで観察し、自身の手足が視界に写った。悪食の果てに同胞とは姿が異なっていき、細長くなった手足。水を飲む時に見えた水面に映る自身の顔。ああそうか、自分は彼らとよく似ているのだ。いや、あの屍肉を漁る姿、あれこそ紛うことなき"屍を食らう鬼"なのではないか、と思い至ってしまった。だから、ここに自分が来たのはきっと偶然ではないのだろう。必然的な本能として帰ってきたのだろう。そう、考えついた。 そうして彼はこの食屍鬼の地下帝国に身を置くこととした。怪物に成り果てたその身にとって、そこは居心地が良く、彼は堕落していった。直前まで人の世に身を置いていた彼は、人の社会の動きを把握しており、彼らでは入手するのに苦労する人の屍肉を上手く取ってこれたため、どんどんと受け入れられていった。やがて地位を与えられ、彼らが信奉する神の御前に赴き、生贄を捧げる大任すら任せられた。その神をモルディギアンと言う。目も開けられないほどの不思議な眩しさの暗闇を纏う御身を前に、彼は震えながら捧げ物をし、頭を低くして下がっていった。 そんな生活を続けても、同胞達の声は聞こえ続けた。人間達の恨みが姿を取って瞳に映り続けた。それらは、彼に安易な堕落を許さなかった。永劫に罪の意識に囚われ続けるのだと、彼を罵り続けた。だから、光を忘れることは出来なかった。 幾ばくの時が流れた時か、その日は地下全体がやや騒がしかったが、彼は捧げ物のためにモルディギアンの下へ向かっていた。そうして御身の座す間へ入ろうとした時、数匹の食屍鬼が獲物を携えてやってきた。それは人間のようであった。奴らの様子からして、騒がしさの要因だったのだろう。それは、聖なる印と武器を携えていた。奴らに対抗する手段を持ったものだったのだろう。その人間は、修道女服を着ていた。きっと悪しき奴らを退治する、聖なるお方だったのだろう。その女は、彼女に他ならなかった。食屍鬼の爪で喉を貫かれ、絶命していた。奴らは彼女を彼に渡すと、御身に捧げてくれと言う。彼が、彼女の遺体を受け取って御身の部屋に向かう間、奴らに一切怪しまれなかったのは、きっとあまりの衝撃に何の反応も出来ず、言われるがままに動いていたからだろう。 彼は彼女も含めた数体の遺体を抱え、独り御身の間に入る。その御姿を見ることは誰にも能わず、跪き、遺体を捧げる。我らが死を喰らうことの赦しを請うために、一体一体、捧げ、遂に彼女の番になった時、その亡骸を無意識に抱きしめていた。これは渡せない、彼女は駄目だ。全部自分のせいで壊れたものだけれども、それでも彼女だけは失うことなど出来なかった。この邪神から死を掠め取るその行為は、逆鱗に触れる愚行だ。それでも彼は彼女を離さず、抱きしめながら額を地面に擦り付け、邪神に乞い願う。彼女以外なら幾らでも捧げます。捧げ続けます。私の身体も魂も、死も全部捧げ続けます。だから、どうか彼女だけは。お願いします、と泣き喚きながら懇願した。その願いに邪神が納得したのかは定かではない。もしかしたら、別のもっと悍ましい何かの告げ口があったのかもしれない。何はともあれ、邪神は彼女を奪うことはなかった。代わりに、この地下空間の全ての食屍鬼を集め、死の眠りにつかせ、捏ねて、喰らった。次に、喚き続けている彼を拾い上げると一呑みに平らげた。彼は死んだのだと思ったが、しかし意識は消えない。何かにぐちゃぐちゃと噛み砕かれ、別のものと混ぜ合わされる悍ましき痛苦の果てに、成形され、吐き出され、彼女の身体へと、彼女の魂とともに埋め込まれた。 目覚めた時、彼は彼女の身体を動かしていた。美しき光の彼女になっていたのだ。でもどうして、なぜ、明らかにあの邪神の仕業だが、その姿はここにはもうない。それどころか、この地下帝国を築き上げていた食屍鬼達も完全に消えていた。何か取り返しのつかないことをした予感を覚えながら、彼は生きるより他なかった。なにせ今彼が宿っているのは、彼女の身体なのだから。彼女の代わりに、彼女がなそうとしたことをしなければ。そんな使命感があった。 そうして外に出て、人の街を求めて彷徨っていた時、強烈な飢餓感が湧き上がってくると共に、彼女の声が頭の底から響いてきた。それは最早自分自身の考えと区別ができないものであったが、同時に決して自分の魂の声ではない、混じり合ったあの人のものなのだと分かった。しかし、彼女の声を聞いた彼が抱いたのは、決して幸せや温もりなどではなく、懺悔の念であった。なにせ、彼女は目覚めるとともに強烈な、それこそ彼の魂が感じているよりももっと強い飢餓感に苦しみ始めたのだ。時計の針が進む度に狂っていくような、そんな絶叫が脳内に響きわたる。だのに、聞くだけでも苦痛に耳を塞ぎたくなるそんな状態でも彼女は、現状がどうなっているかさえわかっていないだろうに、彼に対して謝り始めたのだ。あの時武器を向けてごめんなさい、追いかけられなくてごめんなさい、あなたを元の姿に戻す手段を見つけられなくてごめんなさい、こんな飢餓感に巻き込んでしまってごめんなさい。自分で手一杯の筈なのに、それでも彼女は彼を想って叫んでいた。彼はもう迷っていられなかった。飢餓感を鎮める手段は知っている。だから、彼女の体を以て走るのだ、喰らうのだと。するといつの間にか彼女の身体は獣のようになっていた。顔は犬のように突き出て、細長くも力強い手足で、醜悪さと美しさと神聖さを纏ったような獣へと変貌していた。その姿で大地を蹴り、墓を荒らし、人の肉に喰らいつく。目覚めた彼女はその行為を止めるよう叫んだ。やめて、私の身体でそんなことしないで。でも彼は止めなかった。じゃなければ彼女は狂ってしまう。そうすればもっと悲惨なことになる。だから人の屍肉を貪る。一口呑み込む度に飢えが満たされる快感と、彼女が拒絶して嘔吐する不快感が暴れ回る。それでも喰らうのだ。彼女を救うのだと。ただ喰えども喰えども呑み込んだ血肉の大部分が胃ではないどこかに消えていく感覚がする。それは人の身では認知すらも出来ない深淵の先、けれども一度繋がった彼にとっては想像がついてしまうもの。そう、恐らくかの邪神への繋がりで、喰らったものが贄として邪神へ捧げられているのだと、だから一向に飢えが満たされないのだと、気が付いた。その間も彼女の嘔吐は止まらない。墓を更に暴き、その音に気が付いてやってきた墓守も喰らい、数人の人間を喰らい尽くしてようやく飢餓感が落ち着く。それと同時に彼女の意識が眠りに落ちる。身体もいつの間にか普段通りの彼女のものに戻っており、静寂が訪れた。 彼に起こったことは、要するに邪神へ継続的に捧げ物をするように胃袋を作り変えられたのだ。彼女の意識が飢餓感のトリガーで、邪神は贄を欲すると彼女を目覚めさせ飢餓感で支配する。そうして彼に屍肉を喰らわせ、満足すると彼女の意識と同時に眠りにつく。代わりに邪神は、願った通り彼に彼女を返した。肉体も、魂も全部。それどころか彼は何でも捧げると言ったのに、彼の魂も返してその身に宿してやり、ついでに屍肉にありつけるように邪神自身の加護すらも、食屍鬼達の屍肉を媒介に彼女の肉体に混ぜ込んで与えたやった。なんと慈悲深いことだろうか。 そんな現状を、彼は直感的に理解する。また、自分が大切なものを壊し尽くしてしまったのだとわかった。でも、今度は大切なものがこの手の中に残っている。今度こそこれは手放してはいけない。たとえ彼女自身が終わりを望み、飢餓に狂うことを望もうとも、それでも守り続けるのだ。そうすればいつか、いつか。彼女が自分を元に戻す手段を探してくれたように、自分も彼女のために動くのだと。 そうして彼は、まず始めにとある人物を頼った。彼女が懇意にしていた中で、最も世界の狂気に足を踏み入れていた人物。その名はランドルフ・カーター。彼と共に歩めば、何か手がかりが見つかるのではないかと希望を持って。そして、狂気の世界から人々を守ろうとした彼女の行いを、彼自身も継ぐことを決意して。 ◯彼女が彼と出会った経緯 食屍鬼の情報を辿る彼女は、その森で屍肉漁りをする彼を目撃した住民の声を聞く。目撃された彼の特徴が食屍鬼に似ていたため独り森に入るも事故で滑落(彼女の対応力なら自力で帰還することは出来ただろうが、危険ではあった)。そこで出会った彼が、目撃された屍肉漁りの動物だと気が付いたが、同時に食屍鬼とは異なる外見であり、またその行動も食屍鬼では決して行わないものであったため、無害と判断した。ただし彼との別れが近い時期では、飢えた彼の異様さから、彼を自分は殺さないといけないのではと疑念を抱いていた。 ◯彼女が単身食屍鬼の巣穴に潜った訳 彼女は、あの時彼を追いかけて受け止めてあげられなかったことをずっと後悔していた。だから、彼が安心して、罪の意識に囚われずに帰ってこれるように、食屍鬼を元に戻す手段を、彼女は探し求めた。そうして彼女は食屍鬼達の地下帝国を見つけたのだ。そこなら、きっと食屍鬼共に関する大きな手がかりがあるはずと。ただ、いくら奴らを狩る専門の彼女と言えども多勢に無勢。潜伏に気が付かれた彼女は瞬く間に食屍鬼達の餌食になり、殺害されたのだ。 彼:バルド (Baldo) └伊:勇敢な (彼女に名付けられた) 彼女:キアラ・エレイス (Chiara Elaith) └アッシジのキアラ(伊:光り輝く), エライス(死体安置所の神)
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