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井上 慧悟(いのうえ けいご)/ベネディクト・ケイゴ・フォン・ローゼンヴァルト
ID:5445229
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井上 慧悟(いのうえ けいご)/ベネディクト・ケイゴ・フォン・ローゼンヴァルト
タグ:
亜月式NPC
振斗
ローゼンヴァルト探偵事務所
最終列車は天啓のまま
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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初期
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アイ
デア
幸運
知識
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SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
表示
初期値の技能を隠す
複数回成長モード
非表示
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通常表示
<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
非表示
簡易表示
通常表示
<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
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通常表示
<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
非表示
簡易表示
通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
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簡易表示
通常表示
<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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通常表示
所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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通常表示
パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
~某日、ローゼンヴァルト探偵事務所にて~ ピンポーン……ガチャリ すいません、依頼をしに来たんですけ 「問おう!!貴殿は気付いて居る者か、否かを!!!」 !?!? 「彼の空を見よ!全くの平常を騙って居るが其れも其の筈。彼等は未だ自らが有する安寧の永続を疑わず───」 「キョーちゃん!!!君は勝手に応対しちゃダメっていつも言ってるよねぇ!?!?ごめんマサくん、キョーちゃんしまって!!」 「はいっ。榊さん、貴方の話は僕達が聞きますから……!」 「待ち給え正真!我々は何時でも新たなる同胞を歓迎せねばゲホッゴホッ」 「せめて自分の体の弱さを思いやってあげてください貴方は……行きますよ……!」 「ガハッ…わ、我々は只対話を、ゴホッ」 ガシャン! 「あ」 「柊子、大丈夫か。……お茶請けを出そうとしたのか?」 「うん……高いかなぁ、これ」 「シューコちゃんなんか割っちゃった!?無理に触んなくていいから!ミッチーくん、悪いけど掃除お願い。怪我しないように!」 「ごめんねぇ……」 「分かった。……知ってるか、柊子。陶器などの破片は、極々小さい物であれば消化管を傷付けずそのまま排出されるらしい。」 「……畑は、2倍のビュッフェということ?」 「そうだ。」 「全然分かんないんだけど絶対食べないでよ??そんな風に胃に穴を空けるのはどんな労災保険でもカバーし切れないからね???」 あ、あの…… 「慧悟。お客様をお待たせしていますよ。」 「所長が手伝ってくれたらもっと楽になるんですけどねぇ!?俺はいつ保育士に就職したんですか!?……ハァーーー、ごめんなさいお待たせしました!」 「御来訪いただき感謝いたします。ローゼンヴァルト探偵事務所の所長を務める、シャルロッテ・フォン・ローゼンヴァルトと申します。そしてこちらが……」 「副所長の井上慧悟です、っと……あっちの子達は気にしないでもらって大丈夫です!本当に!僕達、事務所はこんなんだけど実績だけはあるんでね……!」 「何よりも能力の高さを優先した人員で構成されているのが当事務所です。さて、本日はどのようなご用件でしょうか?」 特徴:君は風邪をひかない、暗黒の祖先(12)(増加P20) 職業:用心棒 職業技能ポイント:EDU×10+STR×10またはEDU×10+DEX×10 職業特記:人間や自然界の動物の死体などを見ても正気度ポイントを失わない。ただし、超自然的な原因で死に至ったことがわかれば通常通り正気度ポイントを失う。 井上 慧悟(いのうえ けいご) 28歳 男性 ローゼンヴァルト探偵事務所副所長、兼所長のボディガード、兼所長の身の回りの家事担当、兼所長の使いっ走り……要は誰よりも長く事務所の一員として色々やらされている男。最近は所員が増えたせいで業務に"子守り"が追加された。 洒落た着こなしをしてのらりくらりとした態度を見せる、明るくも掴みどころがない性格……なのだが、その実かなり感性がまともなので、周りにヤバい奴がいると途端にツッコミ役をさせられるタイプ。そして彼の周りには大体ヤバい奴がいるので、常にツッコミ役をやらされてると言っても過言ではない。可哀想。 副所長という立場に反してあまり職務へのやる気はないようで、隙を見ては所員を誘ってサボろうとしがち。或いは問題児が過半数(というか全員)のこの事務所では、これくらいの気楽な心構えでないと副所長は務まらないのかもしれない。 とはいえ口では文句を言いつつも、なんだかんだでやるべき仕事はキッチリ果たすし、探偵としての依頼そのものを完遂させようという気もある。加えて生来の性分により面倒見が良く、そのせいで結局面倒事を押し付けられる人でもある。 ドイツ出身の日独ハーフで、普段使っている"井上慧悟"の名は日本国内で名乗るための便宜上のもの。戸籍上の本名は「ベネディクト・ケイゴ・フォン・ローゼンヴァルト(Benedikt Keigo von Rosenwald)」である(ベネディクトはドイツ人としての名前)。 苗字を見て分かる通り所長のシャルロッテとは家族関係に当たる……が、血は繋がっていない。とある理由により、10代の頃にまだ20歳程度のシャルロッテの元へ引き取られた義家族なのである。 普段はお互いを「慧悟」「所長」と呼びながらも、プライベートでは「ベネ」「ロッテ」と愛称で呼び合い、今でもひとつ屋根の下で共に暮らしている仲である。しかし相手への遠慮のなさや距離の近さに反して、"家族"という認識は双方あまり抱いていないらしい。いわく「書類上での公的な関係を家族としているだけ」とのこと。 しかし実態としては、互いにそういった認識がないだけで、両者の扱いは完全に気の知れた家族相手のそれである。なおごく稀に誤解されることだが、恋人関係という事実もこの二人の間には一切ない。 ─────── 少年は震える手で口を塞いだ。己のものではなく、すぐ隣にいる姉の口を。 隙間から僅かに見える光景は地獄絵図と形容する他ない。血の海に一人佇む男性は、少年のよく知る人物であった。 汗が頬を伝い、顎から滴り落ちる。彼が手にしたナイフから垂れる血液が、そのリズムに同期する。 男は血塗れのそれを、見た目以上の重量があるかのようにゆっくりと持ち上げた。 そして己の首に当てたかと思えば、何の躊躇いもなく頸動脈を切り裂く。ほんの一瞬の出来事であった。 噴き出す血潮に染まりながら彼が崩れゆくと同時に、力を失った掌からナイフが溢れ落ちる。二つの存在が重力に従うその光景が、少年の視界には何倍も遅く再生したストップモーションのように見えた。 カシャン!という金属音が少年の意識を取り戻す。それとほぼ同時に、どさりと成人男性が倒れこむ音。 いくつもの血だまりを作った張本人である男は、どうやら完全に絶命したようだった。 その確信と共に気が付いたのは、異様なほどの静寂である。初めから何もなかったように、沈黙さえ沈黙しているような空気が、肺胞の一つ一つに染み渡り心身を支配する。 ほんの隙間しか覗けない場所に逃げ込んだからこそ、この姉弟は居所を悟られることなく、狂乱状態で周囲の人々を滅多刺しにする男から逃れることができた。それは言い換えると、ほんの隙間しか覗けない場所に逃げ込んだせいで、姉弟もまた外の様子の全貌を計り知れなくなったと言える。つまりは、二人は見えない敵の不在を証明することができなくなった。 細く差し込む光を頼りに、少年は─まだ齢十四の井上慧悟は部屋の向こうへ目を凝らす。正常な思考がいくら大丈夫だと叫んでも、扉の真横に誰も待ち構えていないと保証してくれる存在は、どこにもいない。新たな恐怖の出現をあらゆる最悪の形で想像しながら、呼んでもいない救世主を待ち続ける。 自分の心臓の音さえも、うるさくて仕方がない。 ナイフの落ちる音は少年の正常な時間感覚さえ呼び覚ましていた。それでもなお、未だ震える姉を引き摺りこの部屋の外へ出ようという気にはなれない。 再度、汗が滴り落ちる。永い永い時が経ったように感じた。 永遠にも感じられる静寂を打ち破ったのは、コツコツとした軽い足音である。 慧悟は再び、とうに憔悴し切っていた姉の口を乱暴な手つきで塞いだ。しかしすぐに過剰な恐怖と警戒は、困惑と疑問に塗り替えられる。 まるで不思議の国のアリスのようなふわふわとした装い。明るい銀髪を靡かせる小さな体躯。 覗き見えたのは一人の少女であった。 凄惨な光景を目にしているにも関わらず、少女は驚きの声の一つも上げない。それどころか、靴が血に汚れるのも気にせず部屋を歩き回る。と思えば、倒れ付す人々の顔をしゃがんで覗き込む。そして明らかに死体であるそれを、なんの躊躇もなく頬をつついて観察している。 それから静かに立ち上がったかと思うと、赤くなったスカートを揺らしながら、小さな口を開き、一言。 「どなたか、生きている方はいますか?シャルロッテは生存者を捜しています。」 迷い込んだ小さな子供とは思えない透き通った声色。無音のコンサートホールに響く、ピアノの最初の一音のような支配力。 慧悟はそれを聴いて、初めて自分の肩の力が抜けるのを感じた。不思議と、助かった、と思ったのである。 ─────── 井上慧悟、戸籍上の本名をBenedikt Keigo von Rosenwald。凄惨な殺人事件に両親を殺された生き残りであり、その際に己を救出したCharlotte von Rosenwaldに自ら志願して引き取られ、10代の頃から共に暮らしている。 シャルロッテに引き取られる前の旧名は「ベネディクト・ケイゴ・ノイマン=イノウエ(Benedikt Keigo Neumann-Inoue)」。ノイマンはドイツ人の父親の姓、イノウエは日本人の母親の姓であり、現在名乗っている井上慧悟という名も当時の苗字に由来している。 慧悟には歳の近い姉がいた。姉はとある家庭の事情により両親に酷く甘やかされており、それゆえ人間性には控えめに言ってもかなりの問題があったようだ。姉の世話役のような扱いだった慧悟は彼女を疎みながらも、肉親としての情も持っていたため、事件による一家壊滅後はシャルロッテに必死に頼み込み、書類上は姉も共に引き取られている。 事件の動機を推理するシャルロッテを目の前で見ていた慧悟は、「この人に着いていけば自分はあんな死に様をしないで済む」と感じ取る。そして彼女が成人と知るや否や、ほぼ衝動的に自分達を引き取ってもらえないか申し出たのだ。直感や焦燥感に背中を押されての行動だった。 シャルロッテは当初、己が二人を引き取る理由はないということを、二人の無事は確保されたことを添えて淡々と説明していた。しかしとある人物との出会いをきっかけに日本移住を視野に入れていたシャルロッテは、その後何往復かの問答を重ねた末、慧悟がハーフであるため日本語が人並みに堪能だったことに目を付ける。当時のシャルロッテは日本語を学習中であったので、翻訳などの雑用の役割を期待する旨を説明したうえで、姉弟の引き取りを承諾。 突然に日本移住計画を聞かされた慧悟は大いに驚愕したものの、家事を担当していたという慧悟の能力をチェックするお試し期間としてまずは国内で同居を始めてはどうか、というシャルロッテからの提案に頷く。こうした経緯の上で、雇用関係に近しい奇妙な義家族の生活がスタートした。 しかし慧悟の姉については、これまで甘やかされてきた反動でシャルロッテの穏やかな横暴に耐えられず、早々に"面倒を見てもらうために雑用をこなす生活"をリタイア。以降は家を出てほっつき歩き、時折生活費の目途が立たなくなれば弟にねだるというパターンを繰り返す。 慧悟は心底呆れつつも、半分は情のため、もう半分は追い払うためにシャルロッテからのお小遣いを分けていたようだ。これについてシャルロッテは、慧悟のために渡した金銭を彼が自由に使う分には不問、姉についても自分の趣味を邪魔しないのであれば家の外でどう生きても不干渉としていた。姉のあまりに程度が過ぎた臑齧りは慧悟がキッパリ断っていたため、その線引きを信用しての判断でもあった。 ─────── 「……と、これが所長との馴れ初め兼、俺の超!!おっも~~~い身の上話。大体わかった?」 「………………その………………はい。」 英景正真は絶句していた。 事の始まりは、所長のシャルロッテに命じられ、副所長の慧悟と調査のために山中を歩んでいたときである。 雇われてから少しばかりの月日が経ち、探偵助手の仕事に慣れてきた頃。正真はある疑問を抱いていた。それは井上慧悟の素性についてである。 サボり癖を加味しても頼れる上司であり、シャルロッテと比較すれば何倍も常識的な人だという認識の一方で、どこか考えの読めないところのある男だとも思っていた。日頃の飄々とした態度もそうだし、シャルロッテの横暴を心底面倒そうにしている彼がどうして副所長として仕えているのかも、正真には分からなかったのだ。 それについて以前慧悟に直接尋ねた際の返答は、「あの人の傍にいれば、少なくとも迷宮入り殺人事件の被害者にはならずに済みそうじゃない?」である。これでは彼がそう思うに至った経緯がより気になるばかりだ。 そんなわけで、目的地まで時間のかかる道中のほんの雑談として、正真が上司二人の出会いについて聞いたのは自然なことだった。質問を受けた慧悟が、嬉々として昔話のための休憩を名目に木陰でサボり始めたのもまた、彼の性格の上では自然なことだった。 その際に、「超重い話」と極めて軽い口調で前置きした慧悟が語ったのが、彼の家庭環境についてと、一つの家を壊滅に至らせた殺人事件のあらましである。 「いや~あのときは参ったよねぇ、おかげですっかり人の死体にも慣れちゃってさ。まあ結局、あの人が事件に首突っ込むのに着いていくんだから、慣れておいて損はなかったんだけど。最初に複数人分見ちゃったから、あとはもうどれだけ見ても同じっていうか?」 極めて自然に語る慧悟を、正真は歪んだ形に口を閉じて眺めていた。 正真は、慧悟が話すような凄惨な事情について耐性があるほうだと自認していたし、事実その認識は正しい。家督争いの激しい一族の末っ子として生まれ、両親や兄に守られながら育ったことを自覚している正真にとって、自分でさえ深部を知らない世界の暗黒面の存在は認識せざるを得ないものだったからだ。 だからこそ、自然と己の事情を上限として認識していたことを、正真はこのとき初めて自覚した。陰湿な性質だと感じる実家は、それゆえに目に見える形でたくさんの血が流れたことはない。しかし、目の前の男はそんな境遇をあっけらかんと話している。 「…………すみませんでした、軽率に踏み込んだことを聞いてしまって。井上さんは気にしてないかもしれませんが……。」 「あぁ、僕もごめんね?お察しの通り僕はこうやってピンピンしてるけど、どうしても昔話をすると雰囲気終わっちゃうんだよね~」 そろそろ行こっかぁ、と間延びした口調で立ち上がる慧悟の隣を歩きながら、正真は考え込まずにはいられなかった。いくら当事者本人が明るく語ろうとも、それに至るまでの度重なる苦労は想像に難くない。 と同時に、その想像の過程で一つの疑問に思い至った。過ぎた詮索を謝罪した舌の根も乾かぬ内のこと、正真は慧悟の横顔を何度か盗み見る。それから少しの間を置いて、欠伸をする慧悟の呑気さに甘えるように、結局ゆっくりと口を開いた。踏みとどまり切れない性格ゆえである。 「……あの、お姉さんは今もドイツに?」 「…いや?一緒に日本に来たよ。いざ所長と日本移住ってなったときに、私を置いていくのかってうるさくてさ~、仕方なくね。それがどうかした?」 「あぁ、えぇと。僕が働き始めてから少し経ったのに、お姉さんのお話を今まで聞いたことがなかったので。てっきり遠くの方で暮らしているのかなと、ふと気になって。」 慧悟の話を聞くに、彼の姉は定期的に生活費をねだりに来ていた。とすると、仕事とプライベートの境界があまりハッキリしていないこの上司二人なら、これまでに一回くらいは自分の前で彼女の話題を出しているような気がする……というのが、探偵になったばかりの正真の推理である。 「…ん~~、まあ大体正解だよねぇ。日本に来てからもあの人わがまま放題でさぁ、ずっとどっかで遊んでたみたいで。僕もほっとんどどこにいるのか知らなかったし、遠くの方で暮らしてはいたな~」 「そうなんですね、今はどちらに?……あ、いえ、今もそう、ですかね。」 正真はハッと自身の口に手を添える。やはり自分には詮索癖があるのでは、と半ば反省しながら。 そこで違和感に気づく。慧悟からの返事がない。今度こそ踏み込みすぎてしまっただろうかと、正真は顔を横に向けた。 「……井上さん?」 見上げた目線の先、慧悟は何かを深く考えているような、もしくは無心でただ遠くを見つめているような表情で黙っていた。 名前を呼ばれて一拍置いてから、慧悟は正真の方を見る。ふっと笑うその顔は、やはりいつもとあまり変わらないように思えた。 「気になる?それ聞いたら、また暗い話が続いちゃうよ。気力足りる?」 「……、ごめんなさい、えっと、」 「っていうか聞いてくんない?こんな暗い話、誰かに話したくてもなかなか言える相手がいないんだよねぇ~」 「えっ??あ、はい……?」 なんてことない申し出かのように手をヒラヒラと振る上司に釣られ、正真は頷く。 ん~と首を傾げた慧悟は、あまり重く捉えないでいいんだけど、と前置きしてからこう言った。 「殺されたんだよね、俺の姉貴」 「……殺され、た?」 「そ。ヤバいよね?僕は死神ですかって」 笑いながら慧悟は語った。正真が事務所に入るより少し前に、警察から連絡が届いたことを。 綺麗に洗われた女性の爪5枚、それが民間人の発見により通報に至った。DNA鑑定をしたところ、以前別件の事件でDNA情報を採取された女性のものが、その爪と一致したらしい。 その他いくつもの地道極まりない捜査の末、犯人の特定に必要な痕跡は一切見つからなかったが、行方不明と思しき女性……慧悟の姉については身元が確定した。そうしてたった一人のまともな身寄りである弟に連絡が来たというのだ。 警察って優秀だよねぇ、と呑気な声色で言ってから、慧悟はさらに付け足す。 「それでさ……あぁ、これは俺がその通報があった場所の辺りで、聞き込み調査をして知ったんだけど。周りからとんでもなく恨みを買ってる人がそうなる、ってウワサがその地域にちょっとあるみたいで。まあ正直否定はできないよねぇ、弟の僕からしてもクソカスだったし」 「…で、も、行方不明なんですよね?公的には……。」 「そ~だね。と言っても、どっちにしろ死んでるみたいなもんだと思うけどね、マジで連絡取れないし」 カツン、と慧悟が蹴り飛ばした小石の音がやけに響く。正真は視線を落とした。 「……お姉さんのこと、本当に、残念に思います。やっぱりお二人でも……分からないものなんですね、犯人。警察の捜査も難航していることだし……。」 「あー……まあ僕らだって、分かることしか分からないけど。そもそもこのことは、所長にはあんまり話してないのもあってさぁ、僕も調べちゃいるけど迷宮入りかもね~。あの人でも難しいとは思うけど」 「え、そうなんですか?どうして、お二人が揃っていたら手掛かりももしかしたら見つかりやすく……いや、そんなに簡単な話ではないか……。」 「アハハ。どうしてかぁ、なんでだろうねぇ?でもま、しいて言うなら~……」 歩き続ける。もうとっくに雑談の範疇は通り過ぎてしまったのに、二人ともそれを指摘することはない。 「…僕の姉、殺されるほどのことをしてたのかなって、気になるんだよね。そりゃあそれくらいの恨みを買ってるのは想像ついちゃうけどさ?我が姉ながら。でも、本当に死ななきゃいけなかったのかって」 「それは……どんな人だとしても、誰かの勝手で殺されていい人なんていません。法治国家なんですから、法以外に裁いていい存在なんていないはずです。」 「…ふふっ、その通り!そう言ってもらえると嬉しいな~。別にさ、怒ってるとか恨んでるとかじゃないと思うんだよね。ただ、どうしてあの人が殺されたのか、知りたくて」 木に留まる鳥達が一斉に飛び立つのを、音と影で感じ取る。慧悟の言葉を聞き逃してしまわないよう、正真は耳を澄ませた。 「な~んて僕のナイーブな気持ち、あの所長に理解できるわけないじゃない?だから事件のこともぜ~んぜん話してない。戸籍上はあの人も家族なんだけど、俺のほうで全部処理してんの。幸いあんまり踏み込まずに任せてくれてるしね」 「……どうして、僕には話してくださったんですか。やっぱり、無理に話させてしまったのなら……」 「あー大丈夫大丈夫、俺はやりたいことしかやらないし言いたいことしか言わないって。ただ、そうだなぁ」 慧悟は数歩ほど前に踊り出てから、ターンのように振り返る。 思わず立ち止まった正真の前に、慧悟は足で地面に線を引いた。 「これからさ、マサくんは僕らの仕事を手伝って、どんどん色んな事件に触れていくことになると思うんだよね。それってさぁ、普通の人とは一線を引いてるっていうか、何かのラインを越えちゃう生活なわけじゃん?」 「……そうですね。でも、僕はそれを望んでます。」 「うーんやる気があってよろしい!でもいくらやる気に満ちてても、心構えは必要でしょ?これから自分が何と向き合うか知っておいて損はないってね」 話しながら描いたラインをなぞる慧悟の足を、正真はじっと見つめる。山中を歩き潰して汚れた靴は、元より使い込まれて少し黒ずんでいた。 「人間って、ちょっとの閃きとか少しの欲で、どんどん転げ落ちれるワケ。僕はマサくんにそうなってほしくないからね。この森にだって何が潜んでるか分からない、殺人鬼も死体もすぐ傍にいるかもしれない。そのことを覚えておいてほしい」 ズシャッと音を立てて、慧悟は線をかき消す。正真が顔を上げれば、やはりいつも通り笑っているその顔と目が合った。 正真は彼の言葉をぐるぐると反芻しながら、心の片隅で、もしかしたらこの人は思ったことをそのまま言っているだけなのかもしれない、と思った。 「マサくんは、誰かを殺す怪物にも、誰かに殺されてしまう化け物にもならないでね。そうなったら俺、悲しいから」 ─────── 心地よい喧騒に包まれた喫茶店。禁煙席にて、二人の男性が向かい合い談笑している。 「こうして会員の人と直接話す機会って、俺にもそんなにあるわけじゃないのよね~。ほら、普通にチャットで連絡すれば済む話じゃん?だから正直これも断られるかなぁって思ってた」 ホットコーヒーにグラニュー糖を流し入れ、上機嫌にかき混ぜながらそう言ったのは井上慧悟。此度の"オフ会"を提案した男である。 「私は暇な時間の多くをRätselで慰めてもらった身だからね。寧ろ、数多いる会員の中から私を選んでくれたことに感謝しているのだよ。今日私がした幾つかの提案が今後のRätselに役立てばいいのだが。」 対面、ホイップクリーム乗せココアの前に座るのが一人。 デジタルで着彩したような濃い青髪が目立つ、薄い隅が下瞼をなぞる青年。二人が知り合った場である謎解き同好会「Rätsel」において、小鳥遊(タカナシ)の名を名乗る会員である。 「いやもうお役立ちまくりだって!タカナシくんももう何年も顔出してくれてるからさぁ、直接話せて楽しかったし誘って正解だったよ。……まさか、こんなに居住地が近いとは思ってもみなかったけどね?ほんとに」 「世間というものは印象よりもずっと狭いようだ。母数に対して東京在住が多いのは当然だけれど、私としても……ケイゴ氏があの教会のことを知っているのは驚かされたのだよ。」 「いやそれはこっちのセリフね???僕の穴場スポット~って思ってたのに、まさか会員に知ってる子がいるとか思ってもなかったもん」 ケイゴとは当然井上慧悟のことであるが、小鳥遊が彼の本名を知っているわけではない。慧悟の上司であり義家族であるシャルロッテがインターネット上に謎解き同好会を開設した折、それの大まかな管理を任された慧悟は、適当に名付けた「K5」というハンドルネームを今日までズルズルと使い続けているのである。 そして教会というのは、小鳥遊の友人である二万円満銘が"エリーゼ"の名を用いて携わっている教会のことだ。同じ東京都内というだけに留まらず、予想外に互いの居住地が近いと両者が気付いた際に、慧悟が「よく行くお気に入りスポット」として小鳥遊に紹介したのが件の教会だった。 「…穴場と言うには、周辺住民にはよく知られているんじゃないかい?私は直接赴く事はあまりないけれど、人々の憩いの場になっているとは耳にするよ。」 「それはそうだけどさぁ、あそこはサボり…じゃなかった、リラックスするのに最適だから、これ以上人が集まりすぎてほしくないんだよ~。俺の都合だけどね?そういう風に思うことあるでしょ?」 「……どうだろうね、私はすぐに思い当たる節はあまりないけれど。とはいえ、元来あれ…エリーゼは厳格とは言えない性格だろう?それ故に、君の様な非宗教的目的の来訪者は増え続けるかもしれないね。」 「うわ~~~、そうなったら俺はいったいどこで休んだらいいんですかって」 大げさな身振りで嘆く慧悟を観察しつつ、小鳥遊は切り分けたガトーショコラを口に放り込む。それを咀嚼しながら、これまでのSNSを介した彼とのやり取りを思い出していた。 親交のある人物について深く知りたいと思うのは当然の欲求であり、謎解き同好会に精力的なほど知的好奇心の強い小鳥遊なら、それは尚更のこと。 今までの経験上、踏み込んだ質問をしても目の前の男はおおよそ目くじらを立てる人物ではないだろう、そう判断してから甘味を飲み込んで口を開く。たった数秒程度の間であった。 「純粋な興味なのだけど、プライベートなことを尋ねてもいいかい?無論、答えるかどうかの判断はケイゴ氏に一任するよ。」 「お?なんでもどうぞ~。僕に答えられそうなことならね」 「ありがとう。先程の話を聞いて思い出したのだが、君は以前にドイツからの帰国子女だと話していたね。」 「そーそー、親が日本人とドイツ人で、ハーフでさ。色々あってこっちに越してきてって感じかな~」 「生まれはドイツだったのだろう。私の記憶が正しければ、確かドイツ国民の大半はキリスト教徒か無宗教者に分けられた筈だ。そしてケイゴ氏はミサ等を目的とせずただ憩いの場としてのみ教会に赴いているのなら、少なくともキリスト教徒ではない、そうだね?確率論でいえば無宗教、或いはルーツを考慮するなら神道や仏教徒の可能性もあるけれど、普段の書き込みを見る限りでは幼少期から日本で育った人ほどのアミニズムも見受けられない気がする。まあ重要なのは君の信仰を当てる事ではなくてね、ともかく私はあまり外国の内部事情に詳しくないから、ケイゴ氏の目から見たドイツの宗教観やそれが君に与えた影響について……」 「待って待って待っていつの間にそこまで観察されてたの僕???」 慧悟は今まさに食べようとしていたトーストから手を放し、自らの両腕で身を守るように己を抱きしめた。ふざけたように身をくねらせるが、声には心からの動揺が滲む。久方ぶりの純粋な恐怖である。 「……?…あぁ、すまない。職業病でつい踏み込みすぎてしまった、不愉快な邪推だったろうか。」 「何その職業病???探偵か何か???いや、いいんだけどさ。単純に知りたいだけなのは分かるし……急に言われるとビビるねってだけでぇ。我が会員ながら怖ぁ……」 小鳥遊……ひいては人数の多すぎる大家族に雇われた、観察眼と適度な干渉を求められるお悩み相談所は、こちらもこちらで完全に距離感を見誤っていた。久方ぶりの外部の人間との交流であったのだ。 「……でも……そうだなぁ。タカナシくんの聞きたいことは、俺多分、上手く話せないや。言いたくない訳じゃないけど」 「そうなのかい。やはり、その土地で暮らしていても言葉で説明するのは難しいだろうか?」 「あーいや、そうじゃなくて」 皿に避難させていたトーストを手に取り、それを口につけないまま慧悟は喃語のように唸る。 小鳥遊は黙ってその様子を見ていた。相手が自ら話し出すまではいつまでも待ち続けられるのも、また一種の職業病かもしれなかった。 「…僕の家、結構珍しい宗教の教えで育てられたんだよねぇ。だから国全体の宗教観とか、僕目線だとバイアスかかってる気がしてさ」 慧悟はようやくトーストにかぶりつく。反対に小鳥遊は、ガトーショコラに近づけていたフォークの手を止めた。 「なるほど……どうやら私の推測は全く当てが外れていたようだ。改めてすまないね、データから憶測するあまりケイゴ氏のような環境を見落としてしまっていた。視野狭窄による無礼を詫びよう。」 「いふぁふぁひへひふぃいひへはいふぁはふぁいふぉうふ」 「飲み込んでからで構わないのだよ。」 忠告通りにトーストを飲み込んだ慧悟は、喉につっかえている分を流し込むようにコーヒーに口をつける。 「……あーうま。いや、マジで気にしてないから大丈夫。僕の周りさ~?タカナシくんみたいな人ばっっっかりだから。別に俺も、自分の話をしたくないタイプでもないしねぇ」 「へぇ、私みたいな人……そうなのかい。……それにしても、ドイツの珍しい宗教か。私は宗教学は専門じゃなかったから、あまり想像がつかないのが正直なところだね。」 「んまあ、ねえ。あれなのよ、ぶっちゃけ新興宗教?ってやつだったし、マジでドマイナーだったから、日本人で知ってる人どんだけいるのって感じかも」 「……ふむ。その宗教、差し支えなければ名前を聞いてもいいだろうか?詳細を調べてみたくてね。」 「いいけど、今僕が教えても……いや、やっぱダメか?オフ会に誘ってきた相手が喫茶店でよく分かんないカルトの話してくるのって、普通に考えたらヤバいよね??ちょっと宗教勧誘過ぎる???」 「興味を持って聞き出しているのは私の方だから、ケイゴ氏が構わない分にはぜひお願いしたいね。それに私は、宗教勧誘者との会話を好むタイプなのだよ。」 「それはそれで心配だなぁ!?」 半分笑いながら慧悟は勢いよく机に突っ伏して、それからすぐに顔を上げた。 果たしてどこまで話すものかと悩んだが、小鳥遊のこの様子なら、どこかで信憑性の薄い情報を手に入れるよりも、当事者の自分が誤解なきよう丁寧に教えるべきだと判断できる。相手がフラットに関心を持ってくれているなら、こちらも共有して損はないだろう。 ……少なくとも、初めて顔を合わせた相手に話しても支障ない事柄については、だが。 「じゃあ、僕は決して!決して勧誘する気なんてないけど!というか、僕は全然熱心な信者じゃないけど!……価値観として染み付いてはいるからね、その目線で紹介してみよっか」 「私の我儘に応えてくれてありがとう。とても興味深い、よろしくお願いするのだよ。」 「まあ…、自分のルーツを誰にも共有できないのも寂しいからなぁ。むしろグイグイ聞いてくれてよかったかもねぇ?……それじゃあ、俺達が一体何を信仰していたのか、ってところから始めよう」 慧悟は右手の人差し指を立てる。それを直線的に、対面の小鳥遊の顔まで動かした。 「…………?」 「さてタカナシくん、問題です。果たして、僕が信仰させられていたものとはなんでしょう?……あ、これは謎解きじゃなくてただのクイズね」 小鳥遊はほんの少し瞠目してから、顔を動かさないで目線だけを上に向けた。人間が思考するときの癖……ではなく、近づいてきたそのままに自分の額に当てられた、慧悟の人差し指を見上げているのである。 「……いくつか候補はあるけれど、そうだね。では、"脳"はどうだろう。」 「うわマジ??すぐ分かるかな~とは思ってたけど、一発で当てるのはさすがの僕もびっくり」 「新興宗教と言っていたね。脳を信仰対象にしているという事は、人体の未解明に対する神秘か、或いは解剖済の事象への一種の科学信仰か……。」 「んー、どっちも当たらずとも遠からず?脳を信仰してるって言ったけど、厳密にはもっと正しい言い方があってね」 小鳥遊の額から指が離れていく。それはそのまま、拳銃をこめかみに当てるように、慧悟自身の頭に向けられた。 「この教団が……俺達が崇拝していたものは、"閃き"だよ」 ─────── ○Gehirnerleuchtung/ゲヒルンエアロイヒトゥング教団(和訳:脳の覚醒教団)について 井上慧悟の両親が設立した新興宗教……とは名ばかりの、マルチ商法により情報教材を売りつけるために作られた似非宗教、及びそれを信仰していた教団のこと。 「人間の閃きとは神により齎されるものであり、それそのものが神の声かつ神と接続する唯一の手段」という、多くの宗教で啓示と呼ばれるそれそのものを信仰対象としたような教義が特徴。大まかにまとめてしまえば、彼らは閃きやインスピレーションといったもの自体を信仰していると言ってもいい。 Gehirnerleuchtungとは教団内で用いられていたドイツ語の複合語・造語で、Gehirn(脳髄)によるErleuchtung(悟り、閃き)、つまりは神に繋がる手段として信者達が崇めていた閃きのことを意味する。 奇妙な教義は、恐らくは教祖として振る舞う両親が信者から金を巻き上げるための施策であった。 サブリミナル効果やら何やらの刷り込みでカモの考えを誘導し、その"閃き"に従ったことで良い結果を得られたと信じ込むようマッチポンプで囲い込む。信者同士の意見の食い違いは、「神の声は一意に定められており、意見が異なることこそ自身の邪念が閃きに混ざり込んでいる証拠」「純粋なる閃き、純粋なる神の声を得るためには、器である自らの脳髄を清らかかつ強靭に保たねばならない」という方便で抑えつける。そして閃きを得るために最も地道かつ手っ取り早い修行として、体のいい言葉で飾り立てたただけの脳トレ(それも洗脳じみたもの)を情報教材として売り捌く。 こういった行いを中心に宗教を作り上げながら、夫婦ともに多言語話者であることを活かしインターネットを介して他国にもじっくりと布教活動を進め、少しずつ信者を増やしていた。 慧悟の姉は、弟と共に普通の子供らしく学校に通う傍らで、いわゆる巫女の立場として教団内で祭り上げられる役目にあった。最も神の声を鮮明に聴く者として、両親を始めとした教団の大人に甘やかされ続け育ったため、自分自身の意向こそ神の考えに等しいと考える傲慢で強欲な性格に至る。 対して慧悟は、そんな姉の世話役や両親に代わっての家事役を務めていた。信者からは教祖の実子として尊重されていたが、肝心の家族に当然のようにこき使われていたため、あまり彼らには入れ込んでいなかったらしい。と同時に手酷い暴言や暴力を受けることもなく、普通の家族らしく気まぐれに優しくされることもあったので、全く情をがないとは言えない心情だったようだ。宗教については、これにより行動を強制されることを疎んではいたものの、教義自体に嫌悪感を抱いたことはなかった。 歪な信仰は歪な形で終焉する。両親が開く教団の定期集会で、特に熱心な信者であることで知られていた男が、突然参加者達を殺害し始めたのである。慧悟は姉とともに他の信者に逃がされる形で隠れ生き延びるが、姉弟以外はほどなく全滅。 その場に訪れたシャルロッテ・フォン・ローゼンヴァルトが(何故か我が物顔で居座り)推察するに、熱心な信者でもあった男は教団に貢ぎ続け生活苦に陥ったことで精神を病み、当人にしか分からない理由で「教団を皆殺しにすべきだ」と"閃いて"しまったのではないかと考えている。その年頃になると両親のあくどい金稼ぎに勘づきつつあった慧悟は、これもまた男にとっては敬虔な奉仕活動であったのだろうという点に同意し、この推理を支持している。 殺されたのは集会に参加した者のみで、その場に居合わせなかった生き残りの信者自体は存在する。しかし凄惨な殺人事件とそれに至る経緯、教祖の死と捜査により明かされた悪徳商法、そして残党にとっての象徴的存在になり得た巫女とその弟が無関係の人間に引き取られたことで、ゲヒルンエアロイヒトゥング教団の活動は終わりを迎える。 しかし信奉者がこの世から消え去ったわけではない。その数は多くはないものの、今でも教義が己の価値観として根付いている慧悟のように、何らかの形で信仰心を抱えている者は世界各地に点在している、かもしれない。 とはいえ、教団という形で彼らが再復活する可能性は限りなく低いだろう。教祖の実子である慧悟は教義の布教に一切乗り気でないので、再始動に向けて先導する者が現状いないからである。 慧悟の姉の方は、かつてのような地位を得るために再始動を望んではいたが、日本移住後も変わらぬ性格の欠点により周囲とのトラブルを積み重ね、願望が実ることはなかった.。その末に、数多買った恨みを聞きつけた─奇しくも、同じくカルト教団に生まれた子である─加無木萌乃に殺害され、公的には行方不明となっている。 ○ゲヒルンエアロイヒトゥング教団 制作レギュレーション ・教団の活動が熱心であった十数年前時点で、この宗教に直接参加している、或いはネット越しに知っていること。またはその後に人伝に教義に触れていること。 ・この教団の教義について、その人物なりに信仰心や利用価値を見出していること。
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