タグ： せんば あい 金髪先輩coc

千波家の末娘。 幼いころから身体が弱く入退院を繰り返す。学校もろくに通えないまま14歳の時に病室で死亡。 精神的なものか原因はわからないが、独特な思考を持っている。 人間の心理に敏感であり、人の動かし方がよくわかる。誰に教えられたでもない天性の感覚だった。 絵画の才能も天才的なもので、幼い頃から蝶の絵をひたすら描き続けた。 4歳の頃に蝶の標本を見て話を聞いて以来、周りの人間にピンが刺さっているのが見える。 一度病院で検査を受けたが、視覚的な問題の原因は不明だった。 ピンが刺さっていないように見えるのは、ひとつ上の兄である累だけ。 「みんな何かに捕まって、縛られて、痛みにもがいたり、疲れて死んでしまっている。美術館の絵画と同じ。標本の蝶と同じ。」 「でも累だけはそうじゃない。累は何にも縛られてない。累だけが孤独に見える。」 「じゃあ私は？鏡越しに自分の顔を見ようとするとぐちゃぐちゃになってる。どうしてだろう。自分の顔がわからない。」 「ねぇ累。累はいつかここから逃げていくの？生きてる蝶と同じで、どこかに飛んで行ってしまうの？」 「…じゃあ私が貴方を捕まえないと。追いかけないと。」 「でも捕まえたら、貴方も他の奴と同じになってしまうの？それは嫌。貴方は他の誰よりも美しいから。誰よりも自由だから。」 「私が追いかけたら、綺麗な羽根を動かして逃げ回るのかしら。私の世界で、貴方だけが懸命に生きようと羽根を動かしている。」 「だから私から逃げてね。沢山、沢山逃げて、遠くの空まで、綺麗に飛んで行って。」 「そして私は、その姿を絵にするの。世界一美しい蝶の絵を描くの。」 長男である雨のことを「雨お兄ちゃん」と呼ぶが、次男の累のことは「累」と呼ぶ。 累に恋愛感情のような執着をもつ。 累の関心を自分に向ける為、自分の振る舞いを含む周りの環境を作り上げ、自分の死を引き金に累の心に傷を残す。 幼い累に標本用のピンを刺そうとし、累が慕っている兄の関心を自分に偏らせ、誰もが憐れむ優しい少女を演じ、累の嫉妬心を自分に向けさせた。 兄のいないところで自分が死ねば兄が狂うと理解しながら、自分の容体が悪くなる頃を見計らって兄に遠出をさせた。 自分をきっかけにして兄が狂えば、弟である累もきっとおかしくなるとわかって状況を用意した。累が必死でもがいて生きていくようにさせた。 「お兄ちゃん、きっと間に合わないね。わかってるの。だってわざとそうさせたから。」 「累、覚えてる？昔私が、転んで貴方の目に標本のピンを刺しかけたの。」 「あれは事故じゃないの。私転んでなんかないもの。累だってわかってるでしょ？お兄ちゃんは知らないけれど…貴方の体に本気でピンを刺したかったの。」 「あの時の累、まるで籠の中の蝶みたいだった…怖がって、逃げようとして、追いつめられて…本当に可愛かった。」 「…ねぇ、累。私、貴方のことが大好き。他の誰より貴方が一番可愛くて、美しくて…生きているから好き…」 「お兄ちゃんが来たら伝えて…お兄ちゃんは悪くない、って…」 「ふふ…言いたくないでしょう…？だって私の遺言でお兄ちゃんが報われちゃったら、本当に貴方の居場所がなくなるものね…ふふ…」 「…でも、累の言葉じゃお兄ちゃんは助けられない…何年もかけてそうさせたの…全部用意したの…貴方の為に沢山考えたの…」 「累…だいすき…私ずっと…貴方を捕まえたかった…でも、ピンを刺したら…生きている貴方が…死んでしまうから…」 「…私、貴方を…ずっと…追いかけたいの…必死になって逃げる累が、大好きなの…だから、貴方の大事なもの…沢山傷つけて逝くの…」 「どうしてそんなことするのかって？…今までずっと考えてたんだもの…貴方の中で、私が一番になる方法…」 「累、私から逃げ続けてね…私に…捕まらないで…必死で逃げてる累が、すきなの…だいすき…」 「…ずっとそばにいるから…お兄ちゃんの中にも…お父さんとお母さんの中にも…累の中にも…ずっと…」 それまで妹に嫉妬していた累が心から「死なないでほしい」と思うことさえ、藍はわかっている。 勿論その感情は藍の為ではなく、死なれたら困るから。死んでしまったら兄が耐えられなくなることを知っているから。 そうして死後に羽ばたく蝶の夢を見ながら、藍は笑顔で息を引き取った。

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